侵略


宇宙人「この惑星を侵略しにきた!」


吉川 「なんだって!?」


宇宙人「この家を本拠地にする」


吉川 「ものすごく迷惑だ」


宇宙人「やっぱ迷惑ですか?」


吉川 「う、うん」


宇宙人「すみません。でも他に行く場所なくて……」


吉川 「なんかいい人っぽい」


宇宙人「いやいや、それほどでも。侵略ですし」


吉川 「そうだった。ところでやっぱりUFOに乗って?」


宇宙人「なんですか? ここまでですか?」


吉川 「うん」


宇宙人「えっと。総武線で、代々木まで出て……」


吉川 「え? え? 電車?」


宇宙人「あ、駅からは徒歩で」


吉川 「違う違う。宇宙じゃん? 宇宙人でしょ?」


宇宙人「あぁ、そっちの」


吉川 「どっちだと思ったんだ。どうして総武線のほうなんだ」


宇宙人「宇宙から着ましたよ。普通に」


吉川 「UFOで?」


宇宙人「なんすか? UFOって」


吉川 「えっと、未確認飛行物体かな」


宇宙人「未確認のものなんか乗らないですよ。危ない」


吉川 「いや、空飛ぶ円盤とか」


宇宙人「そんなの乗ってこないですよ。免許もないし」


吉川 「免許制なんだ」


宇宙人「ここまでは普通に着ましたよ。泳いで」


吉川 「泳いで!?」


宇宙人「大変だったよ」


吉川 「大変とかの問題なのか。江田島塾長みたいなヤツだ」


宇宙人「だって200万光年、息継ぎなしだよ!」


吉川 「息継ぎ!」


宇宙人「くるしかったぁ」


吉川 「なんでそんな無茶を……」


宇宙人「空気がないから」


吉川 「いや、そうじゃなくてなんで生身なんだ」


宇宙人「健康には自信があったもんで」


吉川 「自信で乗り切れるにも限度がある。……まぁ、結果的には乗り切っちゃったんだけど」


宇宙人「あ、本拠地からの通信が!」


吉川 「すごい!」


宇宙人「もしもし?」


吉川 「普通の携帯!」


宇宙人「#$%&ΦΣ∈∴⇔≦……」


吉川 「すごい! 宇宙語だ」


宇宙人「なに言ってんだか、全然わかんないや」


吉川 「ズコー!」


宇宙人「なんか電波悪いみたい。一本しか立ってない」


吉川 「さっきの宇宙語は……」


宇宙人「アレは適当っていうか、雰囲気?」


吉川 「適当か。そもそも携帯だし」


宇宙人「AUだよ」


吉川 「AUなんだ。AUつかっちゃってるんだ!」


宇宙人「学割効くからね」


吉川 「学割! が、学生なの!」


宇宙人「まぁ、学生って言うか……。学生ノリっていうか」


吉川 「ノリか」


宇宙人「しまった! エネルギーが……切れてきた」


吉川 「なんだって! 一大事だ」


宇宙人「大丈夫。途中のコンビニでおにぎりとお茶買ってきたから」


吉川 「えー! エネルギーて。おなかペコペコかよ」


宇宙人「しかも玉露入り」


吉川 「ずいぶん地球的な。もっと宇宙っぽい補給のしかたないのかよ」


宇宙人「宇宙っぽいのも一応ありますよ」


吉川 「やっぱあるんだ」


宇宙人「まぁ、これは最後の手段にとって置いたんですが……」


吉川 「どんなエネルギーなんだ!」


宇宙人「キャラメル。一粒300メートル」


吉川 「お前もう、総武線で帰れ」



暗転




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