嘘発見器


博士 「嘘発見器を発明した!」


吉川 「随分いきなりですね」


博士 「いきなり発明してしまいました」


吉川 「発明なんていきなりしないでください。もっとプロセスを踏んで」


博士 「若さに任せてつい……」


吉川 「若くないじゃないですか。白髪ハゲのくせに」


博士 「うるさい、バカ! おたんちん!」


吉川 「おたんちん……」


博士 「とにかく発明しちゃったんだからしょうがないでしょ」


吉川 「はぁ。そりゃ、しょうがないですね」


博士 「この嘘発見器は、従来品とは一味違う」


吉川 「従来品もあんまり知らないですけどね」


博士 「いままでのは、音声や発汗などで嘘を検知していたが、この発見器はなんと!」


吉川 「なんと?」


博士 「空気感を読んで当てます」


吉川 「なんだか、すごいんだか、すごくないんだか……」


博士 「例えば……『俺、2mのトカゲ見たことあるぜ! 』と言うと……」


発見器「ビー! ビー! 嘘っぽいです!」


吉川 「……」


博士 「どうじゃ!」


吉川 「どうじゃって言われても……」


博士 「すごいじゃろ!」


吉川 「……っぽい、ってそんな」


博士 「ファジー機能じゃ!」


吉川 「ファジー機能って懐かしいなぁ。……90年代の香りがする」


博士 「さらにこの嘘発見器は新機能を搭載してる」


吉川 「どんな?」


博士 「俺、人気ユーチューバーなんだけどさぁ」


嘘発見器「マジで!?」


博士 「いや、嘘だけど」


発見器「なんだ、嘘かぁ……」


博士 「どうじゃ!」


吉川 「どうって、なにがどうなんですか」


博士 「誘導尋問機能搭載」


吉川 「誘導尋問じゃない、普通に聞きかえしただけだ」


博士 「違う! 巧妙にあいづちを打つことで、思わず本音がポロリ」


吉川 「ポロリじゃない」


博士 「ポロリもあるよ!」


吉川 「あるよ、じゃない」


博士 「ポロリもあるの?」


吉川 「知らんがな」


発見器「ビー! ビー! ないっぽい」


博士 「ないのかぁ」


吉川 「なに、しょんぼりしちゃってるんですか」


博士 「思わず涙がポロリ」


発見器「やっぱ、あります!」


博士 「まじで!?」


発見器「マジマジ!」


吉川 「なに、そこでいい感じに盛り上がっちゃってるんだ」


博士 「仲間に入りたい?」


吉川 「別にいいですよ!」


発見器「ビー! ビー! 嘘っぽい! 強がってます! 仲間入りたがってます」


吉川 「うるさいなぁ。なんだこのバカ機械は」


博士 「吉川くん、機械にあたるとは見苦しいのぉ」


発見器「見苦しいです!」


吉川 「こ、こんなの何の役にも立たないじゃないかっ!」


博士 「嘘を看破されてムキになる気持ちはわかるが」


吉川 「そうじゃない! そもそも、嘘発見機じゃないじゃないですか!」


博士 「そうだ! 嘘発見器じゃない!」


吉川 「前提を覆すな」


博士 「こいつは機械なんかじゃない! 友達じゃ……」


発見器「アミーゴ!」


吉川 「なんなんだ! お前らなんなんだ!」


博士 「吉川君も入りたいかい?」


吉川 「結構です! それよりもちゃんとした発明をしてください!」


博士 「わかったよ。やるよ……」


発見器「ビー! ビー! 嘘っぽい!」


吉川 「博士ッ!」


博士 「これダメだ。壊れてるわ」


吉川 「博士……」



暗転




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