挨拶


吉川 「一周して面白いみたいなー?」


藤村 「な、なんだ突然」


吉川 「いや。一度使ってみたくて」


藤村 「だからと言って、挨拶代わりに言われても……」


吉川 「じゃ、二周して面白いみたいなー?」


藤村 「回転数の問題じゃないだろ」


吉川 「そろそろ、挨拶という文化も一皮剥ける頃だとは思わんか?」


藤村 「言ってる意味が理解できない」


吉川 「我々でもっと新しい挨拶を産み出そうではないか!」


藤村 「なんで使命感に燃えてるんだ」


吉川 「炊き込み御飯!」


藤村 「……え?」


吉川 「新しい挨拶」


藤村 「ちなみに、それはどんな状況のときに使うんですか?」


吉川 「炊き込み御飯が食べたいなぁ……って時に」


藤村 「挨拶じゃないじゃん! 願望じゃん」


吉川 「しまった。自分に正直になりすぎた」


藤村 「ポジティブな反省のしかただなぁ」


吉川 「おひたし! ほうれん草の!」


藤村 「また食べたいものか」


吉川 「今のは、お久しぶりと掛けようと思ったんだけど、ほうれん草が先走ってしまった」


藤村 「ものすごい先走り方だな。どれだけほうれん草の虜なんだ」


吉川 「YO! YO!」


藤村 「急にヒップでホップな感じになったな」


吉川 「いや、今のはヨーヨーをしたい時の挨拶」


藤村 「だからヨーヨー限定かよ。もっと汎用性のあるものを」


吉川 「ヨーヨーチャンピオン!」


藤村 「意味がわからない」


吉川 「ヨーヨーチャンピオンに会ったときの挨拶」


藤村 「普通じゃん。名前呼んでるだけじゃん」


吉川 「名前じゃなく肩書き」


藤村 「一緒だよ」


吉川 「じゃぁ。なにか? ヨーヨーチャンピオンは、ヨーヨーチャンピオンって名前なのか? ヨーヨーチャンってレスリー・チャンの系列なのか?」


藤村 「何にキレてるんだ」


吉川 「あれだ、俺達はアプローチの仕方を間違えていた」


藤村 「俺達って、俺もか」


吉川 「まず状況から先に考えよう。それに当てはまる挨拶を考案する」


藤村 「なるほど」


吉川 「じゃ、うんこしたい時の……」


藤村 「待て待て待て。なんでそういう状況限定なんだ。しかもうんこて。うんこしたい時に挨拶なんかしなくていい。うんこしなさい」


吉川 「……はい」


藤村 「いや、ここでしなくていいよ! したかったのかよ!」


吉川 「腹八分目だよ」


藤村 「意味わからない」


吉川 「じゃ、なんだ? 知り合い以上、友達未満の人に対して敵意はありませんよ。という挨拶」


藤村 「敵意があります。という挨拶もあるのか」


吉川 「テキイハーアーリマセーン」


藤村 「わかりやすい。今までで一番わかりやすい。なぜならそのまんまだから」


吉川 「じゃ、あれだ。恋人未満の異性に対して、もっと仲良くなりたい感をアピールする挨拶」


藤村 「ほぉ、それは実用性ありそうだ」


吉川 「好きです」


藤村 「普通!」


吉川 「スーーーーキーーーー!」


藤村 「なんだ、それは。面白ポーズか」


吉川 「求愛のポーズ」


藤村 「何類だ。何類何科何属何目だ」


吉川 「じゃ、最後。ここ一番で面白いやつという印象を植え付けたいときにする、とっておきの挨拶」


藤村 「そんなフィニッシュホールドもってるヤツは嫌だ」


吉川 「狼が出たぞぉー!」


藤村 「もう、なんと言うか。面白いとか、そういう次元ですらない」


吉川 「一周して面白いみたいな?」


藤村 「何周されても面白くはないな」



暗転




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る