爆弾処理

吉川 「藤村先輩あと3分です! 早く逃げてくださいッ!」


藤村 「いや、俺がここで逃げたら何人もの命が犠牲になる」


吉川 「しかしっ!」


藤村 「こんな爆弾の一つや二つ……犯人の好きにはさせないさ」


吉川 「そうは言っても、そんな簡単に……」


藤村 「大丈夫。シミュレーションで何度もやったタイプだ。もう少しなんだ」


吉川 「藤村さんッ!」


藤村 「なぁ~に、お前は彼女とのことでも心配してろ」


吉川 「あっ!?」


藤村 「……どうした?」


吉川 「今日の占い……」


藤村 「占いがどうした?」


吉川 「俺の星座……乙女座……悲しい別れがあるかも……でした」


藤村 「そんな、占いなんて……」


吉川 「なに言ってるんですかッ!? ムーンプリンセス三太夫の占いは100%ですよ!」


藤村 「ということは俺は……」


吉川 「藤村さんッ! 逃げてくださいッ!」


藤村 「例え俺がここで死ぬようなことがあっても、お前は必ずやってくれると信じている」


吉川 「いやです! 俺……まだ、そんな……」


藤村 「甘ったれるなッ! お前ならできる」


吉川 「藤村さん。ちょっ、ちょっと待ってください」


藤村 「どうした?」」


吉川 「……もしもし……良子?」


藤村 「こんな時に彼女に電話かよッ!」


吉川 「……突然だけど、別れてくれ。……ごめんっ!」


藤村 「……おっおい……吉川」


吉川 「へへへ……これで、悲しい別れは終わりました。藤村さんとは別れなくてすみそうですよ」


藤村 「まったく、お前ってヤツは……」


吉川 「急いでくださいッ! あと一分です」


藤村 「待て。こ、コイツは……」


吉川 「どうしました?」


藤村 「最後のダミーコードだ……青のコードと赤のコード……どちらかを切れば止まる。間違えれば……」


吉川 「……爆発」


藤村 「コイツばかりは……今までの訓練もまるで役にたたねぇ」


吉川 「はっ!? 藤村さんッ! なに座ですか?」


藤村 「また、占いか。蟹座だけど」


吉川 「蟹座……蟹座……そうだ! 良子が蟹座だ! あいつなら……」


藤村 「おい、いったい何のことを言ってるんだ」


吉川 「今日のラッキーコードですよ!」


藤村 「ラッキーコード……」


吉川 「毎日発表されるラッキーなコードの色です。そいつがわかれば……」


藤村 「おいおい、占いなんて……」


吉川 「忘れたんですかッ! ムーンプリンセンス三太夫の占いは……」


藤村 「100%か」


吉川 「待ってください。……もしもし……良子?」


藤村 「……頼む」


吉川 「いや、うん。……一つ頼みが……うん、わかってる……」


藤村 「時間がない!」


吉川 「いいんだ! 今日の蟹座の……うん……うん……12位?」


藤村 「蟹座は12位か……」


吉川 「……それはいいんだ。……うん……爆弾に注意? ……うん」


藤村 「えー。随分具体的な占いだな……」


吉川 「……うん。ラッキーコードなんだけど……うん……」


藤村 「早くッ!」


吉川 「わかりました! ラッキーコードは……」


藤村 「赤と青、どっちだ!」


吉川 「紫ですッ!」


藤村 「……」



ドカーン



吉川 「藤村さん? ……藤村さん? ……あ、もしもし……良子? ……さっきの別れるとか、冗談だから……」



暗転




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