落選
吉川 「どういうことだっ!?」
参謀 「こんなはずでは……」
吉川 「シミュレーションでは私のトップ当選は確実だったはずだ」
参謀 「確かに確実でした」
吉川 「では、なぜだ! なぜ、最下位で落選なんだ!」
参謀 「やっちゃいましたね」
吉川 「やっちゃったよ! 大恥だよ!」
参謀 「飛んだ物笑いの種です」
吉川 「種じゃないよ! どうしてくれるの!」
参謀 「おかしいですねぇ……」
吉川 「おかしいよ! 俺もなんか、おかしいと思ったよ!」
参謀 「作戦は完璧だったんですけどねぇ」
吉川 「作戦がおかしいんだよ! なんだよ! マスクド政治家作戦て!」
参謀 「いや。なんか覆面被ると当選するって都市伝説が……」
吉川 「ないよ! 都市伝説って無責任なっ!」
参謀 「でもすごい受けてましたよ」
吉川 「指差して笑われてたよ」
参謀 「そのくらい我慢してもらわないと……」
吉川 「だいたいさ、なんでマスクこれなの?」
参謀 「お似合いです」
吉川 「セーラームーンじゃん!」
参謀 「セーラーマーズ」
吉川 「どっちでもいいよ! お面じゃん! 夜店のお面じゃん!」
参謀 「通気性を考えて」
吉川 「通気性か! わかった。じゃマスク第二弾はなに? 暑いし! 蒸れるし! にきびできるし! なにこれ?」
参謀 「お似合いです」
吉川 「これ、ストッキングじゃん」
参謀 「パンティーストッキング」
吉川 「どっちでもいいよ! 強盗かよ!」
参謀 「いまどきこんな強盗いませんよ」
吉川 「強盗以下かよ」
参謀 「話題にはなったんですがねぇ……」
吉川 「全然、票につながらないよ! パンストじゃ」
参謀 「それはお言葉ですが、……ご自身の力不足では」
吉川 「え? なにそれ? 俺のせい? 俺のせいなの?」
参謀 「だって、ぶっちゃけカリスマ性とか皆無でしょ」
吉川 「あるよ! 超ある! なんかほら、俺、夏場よく蚊にさされるし」
参謀 「全然意味わかりませんよ」
吉川 「蚊とか、俺のこと超好き! ひかれてる」
参謀 「蚊じゃ……」
吉川 「違うよ! 蚊はたとえ話。もっと……ほら! あれだよ。俺、犬の前通ると絶対吠えられるタイプ」
参謀 「犬……」
吉川 「なにそれ? いいよ。じゃ言うよ? 究極言うよ? 人間。人間の話」
参謀 「はぁ……」
吉川 「見て! 携帯のメモリ。243件。どうよ?」
参謀 「どうって……」
吉川 「びびった?」
参謀 「なんすか、歯医者って」
吉川 「ばっ、それは……歯医者だよ」
参謀 「自分。とかあるじゃないですか。なんだそれ?」
吉川 「うるさいッ! お前のせいだ!」
参謀 「困った人だ。こんな人が当選しなくてよかった」
吉川 「なんだとぉ!」
参謀 「公約が悪かったんじゃないですか?」
吉川 「やっぱり……それか」
参謀 「それだと思います」
吉川 「当選した暁には……」
参謀 「精一杯、思い出作りします」
吉川 「……ダメかな?」
参謀 「ええ」
暗転
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