不動産
不動産屋「いらっしゃいませー」
吉川 「あの~、部屋を探してるんですが」
不動産屋「はい、ではこちらにお座りください」
吉川 「あ、すみません」
不動産屋「本日は、どう言った形の部屋をお探しですか?」
吉川 「えーと、一人暮しなんでワンルームくらいで」
不動産屋「はい、ワンルームで。ご予算は何ドルですか?」
吉川 「えーと……ドルは持ち合わせてないんですけど」
不動産屋「ペセタ?」
吉川 「ペセタがどこの通貨だかも知りません。普通、円じゃないですか?」
不動産屋「あぁ……そっちの」
吉川 「どっちのだと思ったんですか」
不動産屋「では、ご予算は何億円からで?」
吉川 「いや、億とかの単位じゃないんですけど……」
不動産屋「もしかして……兆!? 申し訳ありません、当店はそのような高価な物件は……」
吉川 「いや、もっと下ですよ。普通何万じゃないですか?」
不動産屋「あぁ……そっちの」
吉川 「だから、どっちのだと思ったんですか」
不動産屋「それでは、ご予算は何万円からですか? この、腐れ貧乏人め」
吉川 「……普通、客に向かってあんまりそういうこと言わない方がいいんじゃないですかね」
不動産屋「申し訳ございません。つい口が滑って本音を」
吉川 「本音でも思わないで欲しいなぁ……」
不動産屋「で、結局いくらからなんですか?」
吉川 「え~と……6~7万円で」
不動産屋「そうですね。そのお値段ですと、こちらのウキウキ増毛コースなどいかがでしょう?」
吉川 「え? なんで増毛コースなの?」
不動産屋「そうですね。お客様ですと、思いきってカツラでもいいと思いますが、なにぶんご予算の方が……」
吉川 「いや、ちがくて。ここ、不動産屋でしょ?」
不動産屋「はい」
吉川 「部屋を探したりするんじゃないの? 別に増毛とか関係ないじゃん」
不動産屋「あぁ……そっちの」
吉川 「だから、どっちだと思ってたんだ! なんで、不動産と増毛で間違うんだ」
不動産屋「申し訳ございません。お客様があまりにもハゲてたもんで」
吉川 「うるさいっ! 大きなお世話だ」
不動産屋「そのお世話をするのが、私達、不動産屋でして……」
吉川 「増毛の世話とかいいから。部屋を探してくれよ」
不動産屋「はい。かしこまりました。それでは……こちらの犬をどうぞ」
吉川 「え? なに? 犬?」
不動産屋「はい、この犬は老いてますが、もともと警察犬ですので捜しものは得意です」
吉川 「はぁ。で、なんで犬?」
不動産屋「だから、お部屋を探して……」
吉川 「いやいやいや。なんでそうなるかな? 違うでしょ? 別に部屋をなくしたわけじゃないの。わかる?」
不動産屋「はぁ……」
吉川 「落し物とかじゃなくて、借りたい部屋を探してるのよ。わかる?」
不動産屋「あぁ……そっちですか」
吉川 「だからそっちだよ! はじめから」
不動産屋「また私、勘違いしておりました。お客様がハゲてるもので、つい」
吉川 「なに? 喧嘩売ってるの? もう、ハゲ関係ねーだろ?」
不動産屋「いや、そうやって現実から目をそむけるのはよくありませんよ」
吉川 「うるさいよ! 背けてないよ。知ってるよ! けど今は関係ないでしょう?」
不動産屋「そ、そうですね。申し訳ございませんでした。ハゲ丸くん」
吉川 「勝手にあだ名つけるなよ!」
不動産屋「それではですねぇ……えーと、当社で取り扱ってます物件で、こちらなどいかがでしょう?」
吉川 「へぇ、どれどれ?」
不動産屋「こちらですね。ご予算も適当だと思われますし、まぁ、駅から少々遠いかもしれませんけど、商店街が近いですから」
吉川 「あ。いいね、これ」
不動産屋「結構、掘り出し物だと思うんですよ」
吉川 「いいですね。これ、中見れます?」
不動産屋「はい、見られますが……あ!」
吉川 「どうしました?」
不動産屋「申し訳ございません。こちらの物件……ハゲ不可となっております」
吉川 「なんだよ! なんだそのハゲ不可って! バカか! おまえらなんだ! いじめか!?」
不動産屋「いかが致しましょう?」
吉川 「いかがって……」
不動産屋「掘り出し物ですが……」
吉川 「じゃ、ウキウキ増毛コースで」
不動産屋「はい、そちらでよろしいですね?」
吉川 「そっちで……」
暗転
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