ガソリンスタンド

店員 「いらっしゃいませー。前の方にどうぞ!」


吉川 「レギュラー満タン現金で」


店員 「店内でお召し上がりですか? お持ち帰りですか?」


吉川 「え?」


店員 「店内でお召し上がりですか?お持ち帰りですか?」


吉川 「いや、ガソリンを……車に」


店員 「お持ち帰りですね?」


吉川 「お持ち帰りといえば、お持ち帰りですけど」


店員 「コマネチといえば、コマネチですか?」


吉川 「あなた、言ってることがさっぱりわからない」


店員 「ははぁ……。では、コマネチと言えばなんですか?」


吉川 「あの、ガソリンスタンド……ですよね?」


店員 「そうですよ」


吉川 「じゃ、ガソリン。レギュラー満タン現金で」


店員 「はい。かしこまりました。お飲み物はいかが致しましょう?」


吉川 「え? 飲み物?」


店員 「はい、サービスとなっております」


吉川 「なんだ、サービスいいじゃん。どんな飲み物があるの?」


店員 「今でしたら、レギュラー、ハイオク、軽油などが……」


吉川 「ガソリンじゃん。飲まないよそんなの! バッテンロボ丸じゃないんだから」


店員 「お客様、失礼ながら……」


吉川 「なんだよ」


店員 「バッテンロボ丸はガソリンでは動いてません」


吉川 「いいよ、そんなの! 知らないよ!」


店員 「ププ……。間違えた上に、逆ギレ」


吉川 「バッテンロボ丸とか例えで言ったんだ。だいたい、飲み物とか言ってくる時点でおかしいだろ」


店員 「美味しいですか?」


吉川 「美味しいじゃない。おかしいだ!」


店員 「あぁ……。そっちの」


吉川 「そっちの。ってどっちのだ。なんだこのガススタは」


店員 「お客様、レギュラー満タン現金で?」


吉川 「そう言ってるだろ」


店員 「ご一緒に、ポテトの方はいかがでしょうか?」


吉川 「なに? ポテトって。なんで、ガソリンとポテトなんだよ」


店員 「ガソリンでこんがり揚げました」


吉川 「そんなの食べたくないよ。身体壊しちゃうよ」


店員 「バッテンロボ丸だけに! ポテトはバッテンということで」


吉川 「だけに。じゃない。なんだそれは! なんだ、そのしたり顔は!」


店員 「では、レギュラー単品でよろしいですね?」


吉川 「普通、単品だろう」


店員 「レギュラーワンプリーズ!」


吉川 「そもそも、バッテンロボ丸だけに。の意味も全然わからないな」


店員 「お客様、灰皿の方は……」


吉川 「あ、灰皿ね……」


店員 「ついてますか?」


吉川 「ついてるよ! 当たり前だろ!」


店員 「へぇ……。こんなボロでも一応?」


吉川 「感心されちゃったよ。お前、なんかすっげー失礼だな」


店員 「あ。洗車のほうは……」


吉川 「結構……」


店員 「しても無駄ですよ。なぜかというとボロだから」


吉川 「わかってるよ! うるせーなー。お前なんだ。なんなんだ」


店員 「通りすがりのガソリンスタンド店員です」


吉川 「通りすがるなよ! むしろ、通りすがったのは俺だろ?」


店員 「そうでした。私は土着のガソリンスタンド店員です」


吉川 「なんだ土着って」


店員 「生まれも育ちもガソリンスタンド。もちろん産湯もガソリン」


吉川 「嘘つけ」


店員 「バッテンロボ丸だけに!」


吉川 「またバッテンロボ丸か。根にもつなぁ……」


店員 「レギュラー満タン入りましたー! お会計の方、三千飛んで315円になりまーす」


吉川 「飛んでねーじゃん」


店員 「バッテンロボ丸だけに!」


吉川 「なんだよ、さっきから、しつこいなぁ。全然意味わからないし」


店員 「はい、四千飛んで、0円からお預かり致します」


吉川 「飛んでって言いたいだけだろ」


店員 「はい、おつり685円、飛んでお渡し致します」


吉川 「いいよ! 普通に渡してくれ」


店員 「ぴょーん」


吉川 「わかったから。はいはい」


店員 「あ、お客様、ただいま当店、スクラッチキャンペーンを行っておりまして、こちらのスクラッチカードをどうぞ」


吉川 「へぇ……。これ、何が当たるの?」


店員 「当たりますと、同じ物をもう一つ!」


吉川 「今、満タンにしたばっかりなのに、そんなにガソリンいらないよ!」


店員 「次の機会にもお使いできます」


吉川 「あ、そう? ならいいや。……あ。当たった」


店員 「本当だ! すっげ、はじめてみた!」


吉川 「え……。そんなに当たらないものなの?」


店員 「へぇ……。こうなってるんだ。大当たりー! 大吉ー!」


吉川 「いや、大吉は関係ないと思うけど」


店員 「村の衆! 今宵は祭りぞ!」


吉川 「村の衆とか呼ばなくていいから。ちょっと、早くしてくれ」


店員 「おぉ……。スクラッチ神様の光臨じゃ……」


吉川 「そんな小さな限定の神様いやだよ」


店員 「バッテンロボ丸だけに!」


吉川 「言いたいだけだろ」


店員 「おめでとうございます。こちら賞品となります」


吉川 「やったぁ。嬉し……って、これ、スクラッチカードじゃねーか。これもう一枚かよ」



暗転




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