横綱
吉川 「会長! 横綱審議会会長! お願いします。アフロ山を是非横綱に!」
会長 「いやぁ、でもさぁ……」
吉川 「またアフロのことですか! まだそれにこだわっているのですか?」
会長 「それって言ったって……」
吉川 「現に、今場所も連続優勝したじゃないですか! 連勝記録も双葉山の69連勝に迫らんばかりです。 誰がなんと言うと、史上最強の力士ですよ」
会長 「それはわかるんだけどね。でもさぁ……アフロ山じゃぁ」
吉川 「日本の景気低迷を救ったのはアフロ山効果と日本経済は認めています。 それほどまでに、アフロ山フィーバーはすごいんです。今や全国民の実に六割がアフロです。 現に会長もアフロじゃないですか」
会長 「いや。これはたまたま、ほら家が火事で」
吉川 「嘘おっしゃい! そんなドリフみたいな珍事がありますか!」
会長 「だって孫がさ。アフロじゃないとやだって泣くから……」
吉川 「ほら、お年寄りから幼い子供まで、すべての人が愛する力士、それがアフロ山です」
会長 「しかしだね。日本の国技としての伝統が……」
吉川 「伝統ッ!? 今更何をおっしゃる! 今の東西両横綱は外人じゃないですか! それでも 日本の国技に伝統と言い張るんですか?」
会長 「彼らは日本に帰化してるから日本人」
吉川 「たしかにそうですが、やはり相撲を愛する考えの古い人たちにとっては生まれも育ちも日本であって欲しいという思いは強いんです! アフロ山はね、心はアフロでも、 生粋の日本人ですよ!」
会長 「心がアフロってのが……」
吉川 「会長。このままアフロ山を横綱にしないと、角界は大きな被害を受けますよ」
会長 「ど、どういうことだ?」
吉川 「アフロ山がいつまでも、相撲に固執してるとお思いですか?」
会長 「それは……」
吉川 「今あらゆる格闘技界からオファーが殺到してます。 いや、格闘技だけじゃない。芸能界も、アフロ山の非凡な才能を見逃しはしない」
会長 「あれか? 歌のやつか?」
吉川 「そう。ファーストアルバム『土俵際のフリースタイル』は現在300万枚。日本だけでなく、 その音楽性は広く海外まで評価されています」
会長 「あの妙な歌が……」
吉川 「チェキチェキチェキチェキ……」
二人 「チェキゴッツァン、YO!」
吉川 「って歌っちゃってるじゃないですか!」
会長 「いや、孫が……」
吉川 「アフロ山が他の格闘技に行ったら相撲界はどうなるとお思いですか?」
会長 「それは……」
吉川 「悲しい事実ですが、現在の相撲人気の8割はアフロ山の人気です。 観客動員数は激減。そしてまた他の格闘技に押される形になるのです」
会長 「相撲は相撲で面白いのにね」
吉川 「なに他人事みたいに! ここでアフロ山を横綱にしないとファンもどうなるかわかりませんよ!」
会長 「そんな脅さなくても……」
吉川 「これは私たちだけの問題じゃない。もちろん相撲界だけでもない。日本という国の重要な選択なのです」
会長 「でもさ、でもさ」
吉川 「なんですか!」
会長 「やっぱり、あれはダメだと思うよ」
吉川 「まだ、アフロのことですか!」
会長 「いや、そうじゃなくて。あの、下の方の」
吉川 「あぁ……。アレですか」
会長 「……うん」
吉川 「……だめですかね?」
会長 「ダメだと思うよ」
吉川 「アフロ山、またしても横審は首を縦に振らなかったよ」
アフロ山「そうでゴワスか」
吉川 「なぁ……。アフロ山、頼むから」
アフロ山「これだけは譲れないでゴワス!」
吉川 「マワシじゃなくてもいい。せめて何かつけてくれないか?」
アフロ山「自分、フリースタイルでゴワスから」
暗転
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