戦闘員2
戦闘員 「はぁ、今日もバイト疲れたなぁ……」
赤い影 「とうっ!」
戦闘員 「った! イタタタ、何? 何事!?」
赤い影 「戦闘員め! こんなところで悪事を働いていたか! 覚悟!」
戦闘員 「あ、ヨゴレッドさん。ぃったぁ。いきなり飛び蹴りはひどいですよ」
ヨゴレッド 「問答無用だ!」
戦闘員 「まぁ、そうかもしれませんけど。すみません、ちょっとバイト帰りで疲れてるんで、また今度にしてもらえませんか?」
ヨゴレッド 「そんなわけにいくか! これ以上、悪をはびこらせはしない!」
戦闘員 「いや、別にはびこりませんから。ちょっと今日は本当に疲れちゃって、戦闘どころじゃ」
ヨゴレッド 「さすが悪の戦闘員。そんな演技には騙されないぞ!」
戦闘員 「演技とかじゃなくて。わからない人だなぁ」
ヨゴレッド 「悪の理論なんてわかってたまるかっ!」
戦闘員 「だから~、なんというか、今は悪の戦闘員じゃなくて、一個人として疲れているんで」
ヨゴレッド 「なるほど」
戦闘員 「わかってくれました?」
ヨゴレッド 「わかった。よし! じゃぁ、俺は一個人としてお前を倒そう!」
戦闘員 「なんでだ! なんで個人的に倒されなきゃならないんだ」
ヨゴレッド 「それはお前が悪だからだ」
戦闘員 「なんにもわかってないじゃないか! 違うって、もう悪とかそういうの抜きにして」
ヨゴレッド 「抜きって言ったって、俺こんな正義っぽい格好しちゃってるし、そっちはそっちで全身タイツじゃないか」
戦闘員 「切り替えましょうよ! これ、コスプレ。どうです?」
ヨゴレッド 「そんなの恥ずかしいじゃん」
戦闘員 「いや、だから。こういう普段着ってことで、それなら突然飛び蹴りとかしないでしょ? おかしいでしょ?」
ヨゴレッド 「するよ。正義だもん」
戦闘員 「だーかーらー! もう、オツムの弱い子だなぁ。突然街中で他人に飛び蹴りしたら暴行罪ですよ」
ヨゴレッド 「他人じゃないもん。悪だもん」
戦闘員 「それは、そちらの都合でしょ? 私が今警察に駆け込んだら大変なことになりますよ」
ヨゴレッド 「えっ!? ……行くの? 警察」
戦闘員 「行くかどうかは、そちらの対応次第ですよ」
ヨゴレッド 「そんなこと言われたってわかんねーよ。俺中卒だし」
戦闘員 「だからね、ゆっくり考えましょう? とりあえず、さっきの飛び蹴りは水に流しますから今日は戦闘なしということで」
ヨゴレッド 「そうしたら警察行かない?」
戦闘員 「行きません」
ヨゴレッド 「本当?」
戦闘員 「本当です」
ヨゴレッド 「えー! 信じらんねーよ! だって、悪だもん」
戦闘員 「もう、本当に悪からは離れてください」
ヨゴレッド 「じゃ、今日はどうするんだよ!」
戦闘員 「今日は、このまま会わなかったということで、別れましょう」
ヨゴレッド 「え~~!」
戦闘員 「戦闘は次に会った時にしますから」
ヨゴレッド 「……わかった」
戦闘員 「はい、それでは。お気をつけて。失礼します」
ヨゴレッド 「うぅ~ん……」
戦闘員 「はぁ、疲れた。ったく、時と場合を選んで欲しいよ。本当に……」
ヨゴレッド 「っとう!」
戦闘員 「アイタァ! って、なにするんですか!」
ヨゴレッド 「ここであったが百年目!」
戦闘員 「今別れたばっかりでしょ」
ヨゴレッド 「やっぱりダメだ! お前を倒す!」
戦闘員 「……はぁ。なんだったんだ、さっきのやりとりは」
ヨゴレッド 「なぜなら、お前は悪だからだ。そして今日、俺は新必殺技を開発したからだ!」
戦闘員 「それか! それが出したかったんだ。そんな極めて個人的な都合だったんだ」
ヨゴレッド 「うるさい! 悪がいたら倒す! これが俺の正義だ!」
戦闘員 「こういう人間がいるから、世界から戦争は無くならないんだ……」
ヨゴレッド 「俺の新必殺技、うけてみろ!」
戦闘員 「あー、もういいや。説得するだけ無駄っぽい。イーーッ!」
ヨゴレッド 「ようやく正体を現したな、戦闘員め!」
戦闘員 「イーーッ!」
ヨゴレッド 「くらえ! 必殺!バーニングアップル!」
戦闘員 「イーーッ? ィイ? ……え? どうしたんすか?」
ヨゴレッド 「いや、名前は考えたんだけどねぇ。技をまだ考えてなくて」
戦闘員 「……へ?」
ヨゴレッド 「でもかっこいいでしょ? バーニングアップル! バーニングは燃え盛る炎をイメージ。レッドの俺にピッタリだろ?」
戦闘員 「はぁ。で、アップルは?」
ヨゴレッド 「知らないの? アップルはリンゴだよ」
戦闘員 「それは知ってますけど」
ヨゴレッド 「赤いものをイメージしたんだけど、リンゴと還暦しか思い浮かばなくてさぁ。還暦は英語でなんて言うかわからなかったから、アップルにしてみた」
戦闘員 「へぇ、アップルねぇ。それって焼きリンゴってことですか?」
ヨゴレッド 「え? 焼きリンゴ!? そうなっちゃうのか。それはまずい! 弱そうだ」
戦闘員 「そうっすね。美味しそうですね」
ヨゴレッド 「どうしよう。なんかかっこいい言葉つけたすか!」
戦闘員 「いいんじゃないすか、別に」
ヨゴレッド 「こんなこともあろうかと、英和辞典もってきたんだ。これで開いたページのかっこいいやつをつけよう」
戦闘員 「うわぁ、すげえ適当。そんな技でやられなきゃならない俺らの立場は……」
ヨゴレッド 「えいっ! Sだ! Sの……センシティブってのにしよう!」
戦闘員 「センシティブ」
ヨゴレッド 「ティブのあたりが英語っぽくてかっこいいなぁ。センシティブバーニングアップル! すげえかっこいい!」
戦闘員 「あのセンシティブって、敏感な。とかそう言う意味じゃ……」
ヨゴレッド 「いいの。もうこの際、意味とか関係ない。カッコいいんだからいいじゃん」
戦闘員 「はぁ。俺は敏感な焼きリンゴでやられるのか……」
ヨゴレッド 「後は技だな。ねぇ? なんかいいアイデアない?」
戦闘員 「え? 私が考えるの?」
ヨゴレッド 「違うよ! アイデアだけ!」
戦闘員 「なんで自分がやられる技を考えなきゃいけないんだ」
ヨゴレッド 「カッコよさそうなアクションがあるやつがいいな。でもあんまり難しくないやつ」
戦闘員 「面倒な注文だなぁ」
ヨゴレッド 「何? 何も思いつかないわけ? 使えねーなぁ」
戦闘員 「なんで、そんなことまで言われなきゃいけないんだ。じゃ、こういうのどうです?」
ヨゴレッド 「どんなの?」
戦闘員 「こう、高いところから飛び降りる力を利用して、そしてここで手を広げて回転、で、一瞬止まる。ここがブレイクポイントです。かっこいい場所。その後に貯めた力を放出する感じで、こう、全身でキック!」
ヨゴレッド 「うわぁ、かっこいいじゃん! やりゃできるじゃん!」
戦闘員 「……釈然としない誉められかただ」
ヨゴレッド 「それにしよう。どうするんだっけ? こう、手を広げて回って?」
戦闘員 「で。ここでバランスとって止まる」
ヨゴレッド 「ちょっ! ムズイよ! ムリムリ。俺には無理」
戦闘員 「大丈夫ですよ。こう、止まる前に重心を前のほうにしてね、バランスをとって」
ヨゴレッド 「無理だって! そんなの、自分でやりゃいいじゃん!」
戦闘員 「いや、私は必殺技なんて要らないから……」
ヨゴレッド 「何それ? 俺のほうが上手くできるみたいな。何? 自慢? 自慢ですか~?」
戦闘員 「いや、自慢じゃなくて……もうちょっとだから、一緒に頑張りましょうよ」
ヨゴレッド 「もうやだよ。面倒臭い。どうせそっちの方が上手いんだしさ、俺のことバカにしてるでしょ? 中卒だから」
戦闘員 「いや、バカにしてませんて」
ヨゴレッド 「もういい。やめたやめた。そんなにやりたいんだったら、あんたヨゴレッドやれば?」
戦闘員 「いや、そんな無茶な」
ヨゴレッド 「マジもう、飽きてたんだよね。ガキばっかりで女にはモテないしさー」
戦闘員 「すねないで」
ヨゴレッド 「話が違うっつーの。もうやってらんね。こんなヘルメットももう要らない」
戦闘員 「あぁ。そんな、ダメっすよ」
ヨゴレッド 「はぁ。新しいバイトでも探そう」
戦闘員 「バイトって、ヨゴレッドは!?」
ヨゴレッド 「じゃね。バイバイー」
戦闘員 「バイバイーって。ねぇ! ちょっと!」
戦闘員 「これ、もらっちゃっていいのかな? ちょっとだけ、試しに着て見ようかな……」
ヤマアメフラシ「こんなところにいたか、ヨゴレッド!」
戦闘員 「いや、違っ! あの……僕違います! イーーッ! ほら、イーーッ!」
ヤマアメフラシ「問答無用、覚悟!」
戦闘員 「イタ! 痛いって!」
ヨゴピンク 「大丈夫!? レッド!」
戦闘員 「いや、違うんです。僕人違いで……」
ヤマアメフラシ「これで死んでもらうぞ、ヨゴレッドめ。アーメアメアメ!」
戦闘員 「うわぁ……。くそぅ、ええい。もうヤケだ! センシティブバーニングアップルゥゥゥゥ!」
ヤマアメフラシ「ぐわぁ。やられたぁ!」
ヨゴイエロー 「レッド! さすがだ! すごい新必殺技だ」
戦闘員 「いや、あの……」
ヨゴブルー 「どうした? レッド?」
戦闘員 「……まぁ、余裕でした」
ヨゴグリーン「さすがレッドだ! ようし、勝利のポーズだ」
ヨゴレンジャー「正義爆発、ヨゴレン……」
戦闘員 「イーーッ! ……あ」
暗転
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