通販
藤村 「ハーイ、今日紹介するのは、このアブソージーだ」
吉川 「わぁ。カッコよさそうな名前ですね」
藤村 「かっこいいのは名前だけじゃないぜ? 普段ご家庭でお使いの掃除機、重くて使いにくいでしょ?」
吉川 「そうなんだよねぇ。重いからついつい億劫になっちゃって、おかげで部屋の中は……あ~あ~、ひどいあり様」
藤村 「そんな悩みをすべて解決してくれるのがこの一台。見てくれ」
吉川 「わぁ。け、結構大きいですね」
藤村 「大きいから、どこに片付けたか忘れるなんて心配もないのさ」
吉川 「あぁ、そうですか。って、これ、おも、重いですけど?」
藤村 「そりゃそうさ。コイツは16kgもあるんだ」
吉川 「おもっ!」
藤村 「しかも、力を込めてガシガシと動かさないとなかなかゴミを吸い取ってくれないというすぐれもの」
吉川 「いや、あの……」
藤村 「大人一人が一畳分のスペースを掃除すると? ほら、この通り。汗だくさ」
吉川 「全然意味がわからないんですが」
藤村 「どうしてだい?」
吉川 「疲れちゃうじゃないですか」
藤村 「だからこそさ。エクササイズにピッタリだろ!」
吉川 「あー! はいはい。あー、そういうことか。わかりました。これエクササイズ?」
藤村 「始めっからそのつもりだよ」
吉川 「失礼しました。私はまたてっきり掃除機かと思ってましたので」
藤村 「エクササイズのついでに掃除ができる。どうだい? いいだろう」
吉川 「そう考えると素晴らしいですね」
藤村 「この16kgというのも、人間工学に基づいたものを、適当に四倍した数値なんだ」
吉川 「適当に四倍する意味がちょっとわかりかねますが」
藤村 「つまり四倍効くってことさ」
吉川 「そんな単純な」
藤村 「そして疲れたときは、この部分」
吉川 「本体の横?」
藤村 「そう。ここを触ると、ホラ!」
吉川 「え? なんか震えてるだけですが」
藤村 「このブルブルが肩や腰のツボに効くんだ!」
吉川 「なるほど。エクササイズと共に疲れを癒して。って肩も?」
藤村 「そう。肩をやるときには、ここを、こう……こうやって……ヨイショッ……こんな体勢になればバッチリだ!」
吉川 「いやいや、すごい無理な体勢してるじゃないですか、余計疲れそうな」
藤村 「もしくはこいつを担ぎ上げて直に肩に押し付ける」
吉川 「え? だって16kgでしょ?」
藤村 「米俵だと思えば、軽い軽い!」
吉川 「そりゃ、米俵だと思えばなんだって軽いですよ」
藤村 「これだけで終りだと思うなよぉ?」
吉川 「あ、他に何かあるんですね?」
藤村 「とりあえず、アブソージーは置いといて」
吉川 「置いちゃうのか。これは特にフォローしないままか」
藤村 「ほら、このタイル見てくれ!」
吉川 「うわぁ。こりゃ、ひっどい!」
藤村 「油ヨゴレでギットギト、おまけに子供がクレヨンで悪戯書き、そしてヤンキーがスプレーで悪戯書き」
吉川 「どこにおいてあったんですか?」
藤村 「おまけに、ペットの毛や甘い樹液につられて集まってきた虫もわんさか」
吉川 「甘い樹液なんか塗らないで下さいよ」
藤村 「こんなタイルいやだよねぇ?」
吉川 「絶対にいやですね。何とかして下さい」
藤村 「まかせておいてくれ! さきほどのアブソージーに……」
吉川 「なんと!? そんな機能が!」
藤村 「今回このアブソージーをお買い上げのお客様には、この汚いタイルをつけちゃいます!」
吉川 「いらないよ! なんだそれは! 商品だったのか」
藤村 「樹液がとっても甘いぞぉ!」
吉川 「虫目線でアピールしないでよ」
藤村 「あと、これはうちの実家でとれた柿なんだけど」
吉川 「なんかお裾分けみたいになってきた」
藤村 「さらに、マイケルジャクソンのサインもつけちゃう!」
吉川 「マイケルってカタカナで書いてあるじゃないですか」
藤村 「すべてあわせて、なんと今回は時価!」
吉川 「なんだ、その不明瞭な値段は。はっきりしてください」
藤村 「市場相場にもよるからね」
吉川 「いったい何が市場相場に関連して来るんだ」
藤村 「お申し込みはこちら、090-……」
吉川 「って携帯!? 自分の?」
藤村 「深夜だから、くれぐれもイタズラ電話はカンベンしてくれよな」
吉川 「深夜じゃなくてもやだろ」
藤村 「それじゃ、お電話お待ちしてます。あと、メル友も募集してます」
吉川 「完璧に電波を私物化してのけた」
『この番組は再放送です。現在この商品はお取り扱いしておりません。メル友は、まだ募集してます』
暗転
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