異世界転生1

管理人 「ようこそ、転生せしものよ。これからそなたは異なる世界にて生きることとなるでしょう」


吉川  「こ、これは異世界転生ってやつか!」


管理人 「そうです。話が早い。新たなるスキルを三つだけ選び、新たなる世界でどう生きるかはそなた次第です」


吉川  「そっか。前の人生は終わっちゃったのか。そう思うとなんか寂しいな」


管理人 「え!? そうなのですか? 一応、生き返ることもできますが、こちらのデータによると。頭髪はまばらで、歯が数本抜け落ちていて、体臭と口臭があり……これはグールでは?」


吉川  「グールじゃないよ! 要素だけピックアップしたら似ちゃうけど、人間だよ!」


管理人 「そうでしたか。どちらにしろ、さすがにこの人生をまた生きるということは考えられませんよね?」


吉川  「別にそう悪くはない人生だったよ。これでも一生懸命生きてたんだ。楽しいことだってあった」


管理人 「グールなりに?」


吉川  「グールじゃないんだよ! 人間なりにだよ」


管理人 「ただ元の世界に戻ったところで残りの寿命が……」


吉川  「あ、あんまり残ってないのか」


管理人 「80年もあります。グールとして生きるなんてお辛いでしょう」


吉川  「グールとして生きてないんだよ! 全然長生きじゃん。え? そんなに生きるはずだったの。俺?」


管理人 「頭髪も歯もなく臭いんですよ? 私なら一秒だって耐えられない」


吉川  「失礼だな! そういう容姿を揶揄するのは良くないぞ。その状態で結構生きてたんだよ。何だったらもっと生きようと思ってたよ」


管理人 「新しい世界ですが、今度は人間としてやり直すことになってしまいます」


吉川  「人間だよ。人間以外になったことないよ」


管理人 「ただし、この世界で経験を積めば上級種族への転生が可能です。エルフ、竜族、吸血鬼などありますが、残念ながら……」


吉川  「グールにはならないから! 別に目指してないから」


管理人 「目指してないのですか? だったらなんで?」


吉川  「知らないよ! 成り行きでなっちゃったんだよ。そもそもグールになってないよ!」


管理人 「そうですか。選択するスキルなのですが、こちらの『魅了する香り』あたりが近いものかと思われるんですが、やはり本物ではないので」


吉川  「別にスキル選び取ったわけじゃないよ! 自動的に獲得してたんだよ。体臭はパッシブスキルだよ!」


管理人 「みなさん、新しい世界では元の世界とは違う生き方をされる方が多いそうです」


吉川  「そうだな。俺も新たなる人生を生きるとするか!」


管理人 「ちなみにここを出たあと、西の廃墟のあたりに弱いモンスターが沸いているので、そこで経験を積む人が多いそうです」


吉川  「へぇ、スライムとか?」


管理人 「グールです」


吉川  「倒しづらくなっちゃったよ……」



暗転

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