第35話 決着
一週間が経った。
中間テスト期間に入ると生徒たちは勉強に思考を持っていかれ、そのせいか、PVの話題もあまり聞かなくなっていった。
結論から言うと、この学校は入学者問題への対策を根本から変更することになった。
黒河内が突然教職の辞退を申し出たからだった。さらにはPVの肩を持ち、今の学生たちには実績をアピールするよりも、ああいった分かりやすい魅力を押し出した方が良い、と述べた。
その結果、あのPVが公式として扱われるようになった。黒河内の教職辞退に関しては、他教師陣からの全力の引き止めもあり、無かったことになったが、今までのやり方を一新するとのことだった。
この話は当然全校生徒に瞬く間に広がることになり、刹那的な注目の話題となったわけだが、やはりテスト週間に入り、段々とそういった話は下火になっていった。
PVが公式として扱われるにあたって、当然常葉と藍川が制作者であることを教師陣に明かすことになった。
もちろん大目玉を喰らったが、罰もそこまで大きなものではなかった。
諏訪の存在は二人で全力で隠す方向で一致した。
けれど、ばれるのも時間の問題かもしれない。
PV制作の大体のことは常葉がこなし、藍川はイラストを描いた。
けれど唯一、二人が出来ないことがあったのだ。
それは作曲である。
実は諏訪には、作曲を担当してもらっていた。
彼女も彼女で、ネット界隈では相当な有名人だったのだ。
今回の作戦では、PVの拡散速度が異常に高かったことが勝利への 0要となったわけだが、それに一役買ったのが藍川兄のSNSであり、そしてもう一方が、諏訪のSNSだった。
両者のフォロワー数を足すと、かつての常葉のフォロワーを有に超えることになる。
これが勝因の大部分を占めていたといっても過言ではない。
諏訪曰く、作曲活動を始めたのは常葉の配信を見て元気をもらったから、という理由らしい。
それで全盛期の常葉よりも知名度を越してしまうとは、何だかなぁという気持ちもあることにはあるが、それでも嬉しいものには変わりなかった。
偶然ではあるが、PV制作は藍川と諏訪という本物のクリエイターが二人も協力してくれた。
常葉にとってそれはとても良い刺激であったし、配信や動画では得られなかったものを得られるいい機会だった。
おそらく、一生忘れることはないだろう。
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