不可逆への反逆
目は覚めていた。
意識は醒めていた。
けれどまだ現実に戻りたくなくて、眠っているふりをしていた。
夜が明けたら朝がやって来る。そんな覆しようのない現実が反吐が出るほど嫌いだった。
重い瞼をこじ開けて食物を受け付けない腹に無理やり朝食を押し込み、極寒を耐え忍んで物憂げな課外を受ける。
清々しさ朝など何処にもない。あるのは暗澹たる魔の時間、とうに腐敗したサイクルだけ。
斯様な朝を誰が愛そう。待ち望もう。
しかしどれだけ嫌悪し、拒絶し、忌避しても、時間という不可逆の概念はそんな私の嘆願を聞き入れてはくれない。
……そんなことは痛いほど分かっている。
卓越した頭脳をもつ科学者らと幾度となく対峙し、その悉くを狸寝入りさせてきたヤツだ。矮小な小童なんかが敵う相手じゃない。
だけど、それでも、ほんの少しくらい反逆してもバチは当たらないだろう──
「ねえ、今日休校らしいわよ。降雪がどうのって」
「え、マジで?」
夜が明けたら朝がやって来ると言ったが、それは他動的に覆しようのない事実であって、自動的に覆りようのない事実ではない。
不可逆性と不可能性は、いささか異なる。
見たか、時間よ。
今日に限って──「朝」はやって来ない。
追記。
とうとう大雪警報まで発令されてしまいましたが、はてさてどうなることやら。
路面は凍結し列車は遅延し、まともに外出できる状況にありませんね。
明日出掛ける予定あるのに、どうしよう。
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