第5話 ルール説明なのです

 神から宣告されたゲーム内容、それは666体の知的生命体によるバトルロイヤル。


「ば、ばとるろいやる? わたし、ゲーム詳しくないからちょっとわからないな……」


「あーしも! もうちょいいい感じでシクヨロ!」


 みっちゃんとギャルは単語の意味がわからないようで首をかしげている。まあ、女子はあんまりゲームやらないイメージがあるから、わからないのも無理ない。


「バトルロイヤルとは、最後の1人になるまで倒し合うルールです。地球では現在、最もコンピュータゲームのルールなのです」


 神様、残念ながらそのワードからはナウさが全然感じられないぞ。


 だが、バトルロイヤルゲーム――バトロワが流行のゲームであるのは間違いない。俺たちはこれから航空機からパラシュートで降下して、銃火器を拾い集めて戦ったり、ヘンテコな丸い着ぐるみを着て落としあったりするのだろうか。


「あなたたちには、これからゲームの参加証となるアイテム――神器じんきを渡します。ゲームの勝利条件は、『を最後の集団になるまで所持し続けること』です」


「……集団? ここに集まっている奴らとチームを組むってことか?」


 俺は神様の説明の中で気になる点を質問した。正直、みっちゃん以外の、さっきまで俺に殴る蹴るの暴行を働いていたやつらとは協力したくない。城崎しろさきたちも願い下げだろう。


「このゲームは神同士の代理戦争なのです。それぞれが管轄する世界の知的生命体を競わせて、どの神が優秀であるか決めるのです。このような経緯があるので、必然的に同一世界から呼ばれた者たちは、1柱の使いとしてチームを組むことになります」


 なるほど、ただの神様のお遊戯だと思っていたが、このゲームは神の評価につながるらしい。しかし、地球代表が女子高生5人と女子高生もどき1人で良いのだろうか?


 そんな俺の心配などつゆ知らず、神様は淡々と説明を続ける。


「神から渡される神器じんきは、それぞれ固有の形状があり、『スキル』を備えています。基本的に、あなたたちは神器の『スキル』を使用し、他の参加者プレイヤーと争うことになります」


 つまり、神器を使って他のやつらを倒せばいいってことだな。


 ゲーム脳の俺はその説明で大方は理解できたが、JK女子高生には難解なようで、彼女らは眉をひそめながら聞いていた。


「次に、神器が不所持となる条件を説明します。

 一つ目は神器が破壊されること。

 二つ目は神器が他の参加者プレイヤーに奪われること。

 三つ目は所有者が死亡することです。

 その他に、ゲームのラウンド――つまり進行状況によって不所持となる条件が増える場合があります」


「二つ目のという部分に関して質問がありますわ。神器を他の参加者プレイヤーから奪って使用することが可能ですの?」


 金髪縦ロールが手をあげて質問をする。確かに、神器を奪って使用できるのであれば、多くの神器を集めれば集めるだけ有利になるはずだ。


「他の参加者プレイヤーから奪った神器を使用することは可能です。ただし、『スキル』の発動には、その神器の使用条件を満たす必要があります」


 奪っただけで使うことはできないらしい、世の中そう簡単にはいかないってことかな。


「ついでに『神器が他の参加者プレイヤーに奪われること』の補足をします。最後の1チームが決まる前であれば、奪われた神器を200時間以内に奪い返すことで所有権を取り戻すことが可能です」


 奪われたから即脱落、というわけではないようだ。


「最後に、ゲームの結果について説明します。最初に話した通り、ゲームを最後まで勝ち残った場合、ここにいる全員が死亡する直前の状態で生き返ることができます。その際、死亡した原因となる事件・事故・病気などは都合よく無かったことになります。ただし、残念ですが異世界で死亡してしまった場合は生き返りはできません」


「1位以外はどうなるんだ?」


「2位以下は異世界に取り残されることになります。ペナルティーはありません」


 死んだりするわけではないらしい。生き返りを賭けた血なまぐさい殺し合いを予想していたが、なかなかどうして緩いルールだ。


「以上で説明を終了します。不明な点がありましたらお答えします」


「あ、あの……自分の神器を壊しちゃった後に他人の神器を手に入れたりしたらどうなるのかなって……」


「初期装備の神器以外を所持してもゲームの参加証として認められません。また、すべての神器には『ゲームの参加証が残っていること』という使用制限がかけられているため、初期装備の神器を破壊された者は、それ以外の神器を使用することはできません」


「あ、ありがとうございます……」


 色々と説明されたが、簡潔にまとめるなら『武器神器』、これで十分だろう。


「……他に質問は無いようですね。これで説明責任をすべて果たしました。では、これから自分の考えを伝えます」


 今までの説明は規則か何かで決められていたらしい。これから神様はゲームについてのアドバイスでもくれるのだろうか。


自分は思います。ここに集められたみんなは同じ学校の友達です。神のゲームというは放棄して異世界で協力して生活しませんか? これからみんなが行く異世界は自然が豊かで空気もおいしいです。人が生活している町や村なども、ちゃんと存在しているので生活基盤さえ築ければ生きていけるはずです。それに、どんな場所でも仲間がいれば楽しめるはずなのです」


 ……どういうことだ? 神のゲームに参加させるのに、生き返りを諦めて異世界でのんびり暮らせと? 何が目的なのかまったくわからない。というか、このゲームは神の評価に関係するんじゃなかったのか?


「ふざけないでっ! なんで私がこいつらと一緒に知らない世界で生きていかなきゃならないのよ! 誰だってゲームに勝って生き返ることを望むに決まってるじゃない! 最初から放棄なんてするわけないでしょ!」


 ここに来てからずっと落ち着かない様子の城崎が憤慨し怒鳴り声をあげた。


 それを皮切りに各人が意見を述べる。


「神様、ごめんなさい……。わたしも元の世界に帰りたい……かな」


「拙者も帰る方向で進めたいでござるな~」


「あーしも帰るのにさんせー!」


「ワタクシは別にどの世界でも構いませんわ。ですが、どちらにしてもこの場にいる愚民の共同生活は考えられませんわ」


「俺としても元の世界にはやり残したことがあるんだ。悪いが、その提案を呑むことはできない」


 全体的に帰る意見が多いようだ。もちろん、俺もそのうちの一人だ。まだ『クラス全員の乳首を見て吸う』という目標を達成していない以上、帰らなければならない。


「そう……ですか……」


 神様は表情こそ変えないものの、どうやらガッカリしたようで少しだけ下を向いた。


「わかりました。では、みんなに神器の元となるカードを配ります。カードには『職業』と『スキル』が記載されています。『職業』とは【戦士】・【魔法使い】・【武闘家】などがあり、それぞれで個人のステータスの成長方向が変わります。生物を倒すとレベルが上がり、ステータスの向上が起こります。ただし、神器を失うと『職業』もなくなってしまうので注意してください」


 ここでまた新しい要素が入るのか……。なぜ、さっき説明が終わったはずなのに『職業』の解説をここでするんだ? 


 しかし、RPGそのまんまの世界観だな。


「カードの選別は自分がみんなの適性を確認して行います。カードに触れた瞬間に異世界に転移することとなりますので、注意してください。転移先はランダムですが、同一世界の人はに飛ばされます。カードはその後、みんなに適した形状の神器となります」


 神様はパンパンっと手を叩き、「神の前で一列になってください」と言って並ばせる。まるで学校の先生みたいで緊張感が欠ける。


 そして、100枚くらいのカードの束をポケットから取り出し、各人に配りだした。……あんな分厚いカード束、ポケットに入るのか? まさかひみつ道具なのだろうか……。


「変態野郎。あなたは最後よ」


「なんだかワクワクするでござるなぁ~」


「いいから早く渡してくださいませ」


「じゃ、じゃあ、椿くん。またあとでね」


 爆死フレンズは次々とカードを受け取り、足元に出現した魔方陣的なもので転移した。


 誰が何のカードを貰ったのか知りたかったが、みっちゃん以外誰も教えてはくれなかった。みっちゃんのカードは『職業』は【僧侶】で『スキル』は【回復ヒーリング】だった。あたりかどうかはわからないが、クラスで煙たがられている俺とも会話してくれる、優しいみっちゃんらしいカードだと思う。


 ……俺の番だ。神は両手を俺の前に掲げ、目をつぶっている。おそらく適正を確認しているんだろう。


 しばらくして、神様は瞼を開いた。




「……おどろきです。あなたはなのです」

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