第34章 夏の甲子園3回戦 船町北VS大阪西蔭

第423話 勝機あり

 西郷の怪我の報告を終えた後、話しは3日後に迫った3回戦の大阪西蔭戦についての話題となった。


「大阪西蔭は俺が説明するまでもなく、全国一の強豪校だ。しかし、だからといってうちのチームに勝機がない訳ではない。うちのピッチャー陣は現在、比嘉と川合が1回戦2回戦と継続してヒットどころかフォアボールすら許さないパーフェクトピッチングを続けている。比嘉はともかく、川合はてっきりまぐれだと思っていたが、今日の試合でも四球を1つも出さなかったところを見ると、甲子園での登板をきっかけに一皮むけたようだな。うれしい誤算だ」


「監督、誤算はないでしょ」


 そんな川合の言葉を無視して話しを続ける鈴井監督。


「そして吉田も今日の試合では序盤こそ荒れていたが、途中から元の調子を取り戻して安定したピッチングを見せてくれた。うちの強力なピッチャー陣なら、大阪西蔭打線にだって十分通用するはずだ」


 監督に褒められて、ドヤ顔を見せるピッチャーの3人。


「だが、心配なのは打線だ。相手のピッチャーは十中八九万場兄弟が投げてくるだろう。あの兄弟の右バッターには右サイドスロー、左バッターには左サイドスローをぶつけてくるあの継投策を打ち破ったチームは、未だ存在しない。それだけあの兄弟のピッチングは驚異的だということだ。実際に対戦したことのある安達や星なら、あの兄弟の怖さを身をもって知っているだろう」


 監督の言葉に、ゆっくりと頷く安達と星。


「という訳で、これからはひたすら万場兄弟対策に向けた練習を行っていく。その練習方法は至ってシンプル。右バターならマウンドから3塁側に約1メートル、左バッターならマウンドから1塁側に約1メールくらい離れた場所にピッチングマシーンを置いて、万場兄弟と同じ持ち球のストレート、スライダー、カーブをランダムに投げていくから、その球をひたすら打ち続けるんだ。この仮想万場兄弟のピッチングマシーンの球を難なく打ち返せるようになれば、きっと本物の万場兄弟の球だって打てるようになるはずだ」


「はい!」

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