第4章 春季大会スタート

第11話 春季大会地区予選

 西暦2016年。4月15日。春季大会地区予選初戦。船町北高校の相手は鈴村第一という最近創立したばかりの高校だった。


 この日の船町北の先発投手水谷は、変化球を低めに集めた丁寧なピッチングで3回を1安打0四球2奪三振無失点に抑えた。4回から登板した白田も、スライダーとシュートの横の揺さぶりに相手打線は翻弄され、3回を無安打1四球4奪三振無失点に抑えた。


 一方打線の方は、スタメン全員が安打を放つなど5回を終えた時点で7得点。そして6回裏の攻撃では4番の黒山が3ランホームランを放ち、船町北校は初戦を6回コールド勝ちで収めた。


 鈴村第一 0-10 船町北


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 そして2日後の4月17日。船町北高校の春季大会本戦行きが掛かった代表決定戦。相手は静山南という今年創立70周年の伝統ある高校で10年前には甲子園出場経験もあるが、ここ数年はあまり活躍出来ずにいた。


「船町北は守備のチームだと思っていたが、前の試合では10得点のコールド勝ちをしている。攻撃面でもあなどれない。正直今のうちの力では勝つのが厳しい相手だろう。それでも何が起こるか分からいないのが野球というスポーツだ。とにかく死に物狂いで1点でも多くの得点を取り、1点でも少ない失点で抑える。そうすれば必ず勝機が見えてくるはずだ。お前ら気合い入れていくぞ!」


「はい!」


 静山南高校監督の熱い言葉に、静山南ナイン達の闘志は最高潮に達した。


 1回表。静山南高校の攻撃。


「ストライク・ワン!」


「ストライク・ツー!」


「ストライク・スリ―!」


「ストライク・ワン!」


「ストライク・ツー!」


「ストライク・スリ―!」


「ストライク・ワン!」


「ストライク・ツー!」


「ストライク・スリ―!」


 この日の船町北高校の先発黒山の速球に、静山南のバッター達は全く手が出ず、いきなり三者連続三球三振を食らった。


(あんな球、どうやって打つんだよ……)


 最高潮に達していたはずの静山南ナイン達の闘志は、たちまち下がっていき、その後も静山南は黒山から点を奪うどころかヒットすら打つことが出来なかった。


 一方この日の船町北打線は前回の試合に引き続きスタメン全員が安打を記録するなど7回で8得点を奪い、船町北高校は2試合連続のコールド勝ちという最高の形で春季大会本戦出場を決めた。


 静山南 0-8 船町北


(今までうちのチームはコールド勝ちなんてしたことはほとんどなかった。それが地区予選とはいえ2試合連続のコールド勝ちとは。うちのチームは確実に力を付けてきている。これに安達の打力が加われば……甲子園も夢じゃない)


 鈴井監督はこの2試合の結果に確かな手応えを感じていた。


※高校野球のコールド勝ち条件:5回終了して10点差以上または7回終了して7点差以上ついた場合

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