第7話 安達弾VS黒山聡太①

 安達弾はユーティリティープレイヤー。そう思い込んでいた船町北高校野球部員達と鈴井監督だったが、実はそれは間違いだったどころか、安達弾はどこも守れずキャッチボールすらろくに出来ないことが発覚した。


「すみませんでした。まさか親父が監督にそんな嘘を付いていただなんて」


「いや、今思い返してみたらどこも守れないって言おうとしたお父さんの言葉を俺がどこでも守れると早とちりしてしまったような気がする」


「もしかして僕、特待生取り消しとかになっちゃいますか?」


「いや、それは大丈夫だ。とりあえず夏の大会までには何とか形だけでも守れるようにしてもらって、守備位置はそうだな……一番負担の少ない場所と考えるとレフトだが、ピッチャー兼外野手の3人は外したくないし、星もここ半年で急成長して今やうちのリードオフマンだからな……よし、じゃあ安達君には一塁を守ってもらおう。今日から特別メニューで徹底的に鍛えるぞ」


「監督! いい加減にしてください。こんな素人にバックを守られたら安心して投げられませんよ。ちょっとこいつを特別扱いし過ぎじゃないですか」


 そう言って監督に抗議したのは、左投げの剛腕ピッチャー黒山聡太だった。


「ああ。確かに俺は安達君を特別扱いしている。ただそれはこのチームの力を上げて甲子園に行くためだ。例え守備で何度かエラーをするリスクを負ってでも先発で使うだけの価値が彼のバッティングにはあると俺は確信している」


「僕はそうは思えませんね。確かにマシンの球を打つのは得意みたいですが、だからといって人が投げる生きた球を打てるとは限りませんよ」


「よーし、じゃあ実際に試してみるといい。黒山、安達君と勝負しろ」


「望む所ですよ」


「ルールはどうする?」


「3打席勝負で1回でもエラー以外で出塁を許したら俺の負け。それでどうですか?」


「それじゃあバッターに有利じゃないか?」


「実戦経験のない素人相手にたったの3打席すら抑えられないようじゃ甲子園なんていけませんよ」


「良い心掛けだ。じゃあその条件で勝負してもらおう。安達君もそれでいいな?」


「は、はい……」


 こうして、安達弾VS黒山聡太の3打席勝負が始まった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 1打席目。キャッチャーの鶴田伸介は1球目に内角高めのストレートを要求した。


(実戦経験のない左打者の安達が、左投手の黒山が投げる内角高めの150キロ近い速球を初見で打てるはずがない)


 鶴田のその考えは黒山と一致していたらしく、黒山はすんなりとうなずき投球モーションに入った。


(マシン専門のド素人め。打てるもんなら打ってみろ)


 黒山の投じた球は、キャッチャーの要求通り打者の内角高め目に真っすぐ向かっていった。


「カキ―ン!!!!」

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