セルリアンレポート
時折、彼は研究所を訪れた。ここはビースト計画(プロジェクト)以前はセルリアンの研究が行われていて、アムールトラ関連以外にも、沢山の資料が保管されていた。
そしてある日、こんな物が見つかった。もしも研究が続けられ、これが公表されていたら、世界はこうはならなかったかもしれない。
◉とある研究者の日記
A日
私の同僚に、異様にセルリアンを恐れる者がいる。なんでもその生態以前に、見た目が生理的に受け入れられないそうだ。
その事が彼のセルリアン研究の原動力にもなっているのだが、事あるごとに近くで叫び声を上げられるのには参っている。
まあヒトの価値観はそれぞれだ。私もゴキブリが大の苦手だ。
B日
このところ、彼がセルリアンを恐れなくなった。
それは良いのだが、あれほど研究熱心だった彼から、さっぱり意欲が感じられない。一日中、コンピュータの前でぼうっとしながら宙を眺めている。
話を聞いてみると、「怖くなくなったらどうでもよくなった。」そうだ。一体どうしてしまったのだろう。
C日
突然、彼が元通りになった。
どうゆう事かと訝しんでいたら、彼が私のところにやってきて、「昨日ベッドから落ちたら目の前に小さなセルリアンがいたんだけど、飼い猫が追っ払ってくれた。」と言った。
普段なら夢だと片付けるところだが、これまでの経緯は先日読んだレポートと妙に共通点があった。
◉そのレポート
フレンズはサンドスターが適切に供給されていれば、老いる事も死ぬ事もない。これはサンドスターが持つ、生物の状態を維持する働きのためだと考えられている。
パークには普通の動物も生息している。彼らはここで成長し、繁殖している。そんな彼らを眺めていて、ふと死体が見つからない事に疑問を感じた。
これについて興味深い報告がある。ある日、たまたまある職員が鳥の死体を見つけたが、それは全身が輝きに包まれたかと思うと、光の粒となって消えてしまったというのだ。これもサンドスターの力なのだろうか。
サンドスターもセルリウムも、パークから出ると力を失って消滅してしまうため、ここでしか直接観察する事は出来ない。
どちらも今の所、ヒトへの影響は無いとされている。
しかしセルリウムは、ヒトの体内に長い間留まり続けることが確認されている。しかもこの状態では、パークの外でもある程度の期間消滅することがない。また、強い刺激で体外に飛び出す事もある。これがセルリアンに変わる可能性も考えられる。
あくまで想像だが、もしヒトの体内でセルリウムが徐々に変異し、ヒトが持つ輝き、例えば情熱や希望、思い出などを積極的に取り込んでゆけばどうなるだろうか。
おそらく宿主はいずれ心を食い尽くされ、無気力になるだろう。
もしも変異したセルリウムが、何らかのきっかけで体外に飛び出し、ヒトの世界に適応したセルリアンが生まれたら?それが移動しながら変異セルリウムを大量にばらまいたら?
そうなってしまったら、最終的には全てのヒトが変異セルリウムの宿主となる。
その時世界はどうなっているのか。恐ろしくて考えたくもない。
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