おはよう! 〜 新たな日常 〜

翌日から、あの子のパークでの生活が始まった。


昨日の暗がりでは分からなかったが、猫は真っ黒に汚れていた。

そんなわけでパークでの最初の仕事は、この子を綺麗にする事となった。早速洗ってみると、金色の毛皮のサーバルキャットだった。

そしてこの子はサバンナで、カラカルと過ごすこととなった。


あの子は宿泊エリアやセントラルホテルで寝泊りしながら、かつて職員夫婦がやっていたように、パークの清掃をしたり、ラッキービーストと一緒に施設を整備したりして過ごした。


中でもサバンナの隔離施設には毎日足を運んだ。

ポイポイと一緒に施設の周りを掃除しながら、壁越しにアムールトラに話しかけ、今日も起きなかったと肩をすくめて帰る、それが日課となった。


パークを歩いていると時折セルリアンに出くわす事もあったが、その都度フレンズに助けてもらった。またフレンズも、困ったことがあったら彼に相談した。


またでっかい箱に乗りたい!という要望が多かったので、彼はパークを回るついでに、フレンズと一緒にモノレールに乗った。

そうした利用が広まるにつれ、違うエリアのフレンズ同士で顔を合わせる機会が増え、自然と交流が深まっていった。


すると自分の縄張りだけでなく、他のエリアやセントラルパークで友達と過ごすフレンズが増えていった。また、ご飯を持ち寄ってレストランで食べたり、ホテルで休んだりと、施設が利用される事も多くなった。


月2回、彼は遊園地を開放した。その日はラッキービーストからお知らせを受け取ったフレンズ達がパーク中から集まって、1日中はしゃぎ回った。

こうして、あの寂しげな雰囲気が一変し、パークは笑い声の溢れる明るい場所となった。


ポイポイは、ラッキービースト達とやり取りしているうちに、彼らと同じようにフレンズと接するようになった。生態系の維持を原則とし、できるだけ介入を避けるため、ヒトの緊急時以外はフレンズと話さなくなった。言葉遣いや仕草もそっくりになり、色が違っていなければ、もう彼にも見分けがつかなかった。


パークには、ラッキービーストのメンテナンスをする場所もあった。フレンズが具合の悪いラッキービーストを連れてくるたびに、彼はそこで修理を行った。

とはいえ部品を交換する事は滅多になく、専用の機械にセットしてある程度休ませれば、大抵はそれで元気になった。


空港の黒い塔は、いつしかセルリアンのかけらで構成された輝くタワーとなっていた。彼は何度か端末を見てみたが、移住先の星から通信が届くことはなかった。


はたしてセルリアンは宇宙船を追って、あの星にたどり着いたのだろうか。

向こうでは撃退したかもしれないし、あるいはここと同じ光景が広がっているかもしれない。

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