◉ホテル戦までのあらすじ〜◉けもハーモニー
◉あらすじ
◯キュルル一行は、イエイヌと別れホテルに向かった。途中でリョコウバトに出会い、一緒にホテルに行く事になった。
◯お留守番を続けるため、一旦はキュルル達を見送ったイエイヌだが、胸騒ぎが治まらない。床にキュルルのペンが落ちているのを見つけ、それを届ける事にした。大切な絵を毛皮にしまい、匂いを辿ってホテルへと向かった。
◯ホテルに到着したキュルル一行。そこには3人の従業員と、ペパプライブの準備をしているマーゲイがいた。
◯従業員達にパークの危機を伝えるが、具体的に何が起こるのかがはっきりしない。かばんさんが到着するまで、一行はホテルに滞在する事にした。
◯キュルルはリョコウバトに、ヒトのおうちを知らないか聞いてみるが、見た事はないと言われてショックを受け、どこかへ行ってしまう。
◯キュルルはホテルの屋上の縁に腰掛け、スケッチブックに今まで出会ったフレンズ達の絵を描いていた。そこへカラカルがやって来て声をかけた。
◯カラカルが「あたしはおうち探しと関係無く、キュルルと一緒にいたい。」と言いかけたところで地震が起きる。
◯地震でホテルが揺れ、スケッチブックと一緒にキュルルが海に落ちた。その時帽子が飛ばされる。カラカルは一瞬躊躇するも、キュルルを助けに海に飛び込んだ。しかし溺れてしまう。
◯カラカルはバンドウイルカとカリフォルニアアシカに助けられ、ホテルで目を覚ます。そして2人からキュルルの帽子を受け取る。
◯キュルルは船セルリアンに飲み込まれていた。
その中でフウチョウコンビと出会う。フウチョウコンビがカコ博士とセルリアンの女王の姿に変わる。コンビは2人の化身だった。
◯2人はキュルルに告げた。
キュルルはあるヒトの完全なコピーで、おうちは存在しない事。
セルリアンの王となるべく生まれた存在である事。
海底火山噴火を皮切りに、パーク中で火山活動が活発になり、セルリアンが大量に発生してパークが崩壊する事。
ヒトの輝き(キュルルの絵)が強力なセルリアンを生み出し、フレンズを危機に陥れる事。
◯キュルルの絵から大量のフレンズ型セルリアン(以降フレリアン)が現れ、周りを取り囲んだ。
カコ「すべての物事は、いつか終わりが訪れる。」
女王「輝きは失われ、元に戻る事はない。」
カコ&女王「「しかし我々セルリアンは保存し、再現する。永遠に。」」
◯絶望したキュルルは、2人と同化し、意識を乗っ取られ、セルリアンの王となる。そしてセルリアンを指揮し、全フレンズを取り込ませ、今のパークの全てを永遠に保存しようとする。
◯海中の船セルリアンが、ホテルの窓に咆哮を浴びせると、窓ガラスが割れ、大量の海水とともにフレリアンが侵入し、ホテルの中にいたフレンズ達に襲いかかって来た。
◯徐々に浸水するホテル。フレンズ達はフレリアンに追われながら、屋上に避難した。オオミミギツネがドアをロックし、これからどうするか考えていると、力任せにドアが破られた。
◯そこに現れたのは、かばんさんの呼びかけで、各地から駆けつけたフレンズ達だった。イエイヌもいる。自分達の姿のフレリアンを蹴散らしながら登って来たのだという。かばんさんは海上の船から、こちらに避難するよう呼びかけている。
◯博士と助手が現れて、ひとまずかばんさんの船で脱出するようみんなに告げた。すると、海中から船セルリアンが現れて大波が起き、船が流されてしまう。咄嗟に助手が救助に向かう。
◯船セルリアンの甲板にキュルルが現れた。カラカルの呼びかけにも、全く反応が無い。手にしたスケッチブックの絵から、無数のフレリアンが現れる。その中には、サーバル型、カラカル型、ビースト型の強力な3体がいた。
◯フレリアンが屋上に飛び移って来る。さらにドアからも入って来た。フレンズ達は応戦するも、強力な3体の力も加わった相手に押されてゆく。
◯かばんさんは船の体勢を立て直し、もう一度ホテルの側に着けようとした。音がしたので振り向くと、船の屋根にビーストがいた。
◉永遠に(ずっと)一緒
海中の巨大セルリアンがホテルに向かっている。そう感じたビーストは、泳いでセルリアンの気配を追った。
その途中、ヒトの輝きの気配を感じて、かばんさんの船の屋根に飛び乗った。
そこにはかばんさんと助手がいて、突然現れたビーストを、驚いた様子で見ていた。この2人にはジャングルで助けてもらった。
ビースト『こっちじゃない。危ないのは…!』
見上げると、泳いている時は気づかなかったが、小山のように巨大なセルリアンがいる。そこから、2つの影(フウチョウコンビ)と同じ禍々しい気配がする。ビーストは屋根を蹴り、船セルリアンの頭上まで高々と跳躍すると、それ目がけて急降下した。
船セルリアンの甲板に、スケッチブックを持ったキュルルが立っている。その全身から不気味な気配が放たれている。
彼女はビースト化し、爪を振りかざして向かっていった。
すんでのところでキュルルが身をかわし、爪はスケッチブックに当たった。その勢いのまま、彼女は船セルリアンに強烈な一撃を叩き込んだ。
するとスケッチブックは粉々になり、あたりに散らばった。
キュルルは衝撃で吹き飛ばされ、仰向けに倒れて動かなくなった。船セルリアンは船体が大きくめり込み、低く唸った後、ブクブクと音を立てて沈み始めた。
こちらのセルリアンの気配が消えたため、彼女はビースト化を解除した。今度は屋上へ飛び移ると、身を翻し、爪を閃かせてフレリアンを一掃した。それを見たフレンズ達から歓声が上がった。
残るは強力な3体のみ。オオミミギツネ達がヘリポート用の照明を点け、3体がそれに気を取られた隙に、野生解放したサーバル、カラカル、ビーストが連携し、撃退した。
セルリアンが蹴散らされ、歓喜に沸くフレンズ達。
しかしサーバルとカラカルは、様子がおかしかったキュルルの身を案じて、船セルリアンの方を見た。
キュルルは起き上がり、あたり一面に散らばっている絵の切れ端を見つめた。すると、バラバラになった絵から輝きが溢れ出し、船セルリアンに流れ込んでいった。
船セルリアンの姿が変わってゆく。側面に6つの小さな羽が生え、海上から身を躍らせてフレンズ達に飛びかかって来た。唸り声を上げながら、巨大な口が迫ってくる。
サーバル、カラカル、ビーストがビースト化し、3人一緒に攻撃して船セルリアンを海まで吹き飛ばした。それに乗っていたキュルルは、ヘリポートに落っこちた。
なんとか船セルリアンを撃退したが、カラカルは酷く消耗していた。サーバルは大丈夫だろうか?と心配になり様子を窺うと、
度重なる戦いで、サーバルはサンドスターが尽きてしまっていた。
フレンズの姿が消えてゆく。
それでも、駆け寄るカラカルに笑顔でこう言った。
サーバル「キュルルちゃんの傍にいてあげて。」
そう言い残して、サーバルキャットの姿に戻ってしまった。
キュルルはヘリポートにふわりと着地した。
キュルル「時は来た。」
キュルルが呟くと同時に、ホテルの側の海底火山が本格的に噴火した。パーク中で巨大な地震が発生し、山が震え大地が裂けた。
パークのフレンズ達は、ただ怯えるしか無かった。
もちろんホテルも無事では済まない。あちこちに亀裂が走り、部屋の壁や天井から瓦礫が降り注いだ。
頭上から、巨大な噴石が次々と降ってきた。それをよけたイエイヌの毛皮から、大切な絵が滑り落ちてしまう。すぐに手を伸ばしたが、絵は手をすり抜け、風に飛ばされてどこかへ行ってしまった。
ホテルが沈むと判断したかばんさんは、舵を操り、船をホテルに着けた。そしてみんなに、早く飛び乗るようにと指示を出した。
かばんさん「急いで!運動が苦手な子には手を貸してあげて!」
突然波が大きくうねり、船がホテルに激突し、船体がへし折れた。咄嗟に助手はかばんさんを抱えて飛び上がった。
空中からあたりを窺うと、2人は目の前の光景に言葉を失った。
海底火山から放出された大量のセルリウムが、海を黒く染めてゆく。フレリアンと船セルリアンのカケラが、黒い海に飲み込まれて溶けてゆく。
それらが真っ黒で巨大な渦となってホテルを取り囲んでいる。
渦から細い腕が何本も伸びて、船に絡みついている。そのまま船は渦に飲み込まれてしまった。
腕は2人にも伸びてきた。助手はそれらを掻い潜り、屋上へと向かった。渦の勢いはどんどん激しくなり、ホテルごとフレンズ達を飲み込もうと迫ってきた。
もはや泳ぐのはもちろん、飛ぶことも出来ない。もうどこにも逃げる事は出来なくなってしまった。
みんな、呆然と渦を見つめていた。
助手はかばんさんをサーバルキャットの近くに連れていった。
かばんさんはすぐさま駆け寄ろうとした。するとサーバルキャットは、牙をむき出し全身の毛を逆立てて、かばんさんを威嚇した。
かばんさんが戸惑っていると、大きな揺れと共に突然床が崩れ、
サーバルキャットが瓦礫と一緒に下に落ちてしまう。
かばんさんが、「サーバルちゃん!」と叫んで穴に駆け寄った。
カラカルも追いかけようとしたが、博士と助手にキュルルの所へ急ぐよう促される。2人はかばんさんを抱えて、真っ暗な穴の中へと消えて行った。
カラカルはサーバルの言葉を思い出し、キュルルの下へと走った。
すると、カラカルの周りにフッと影が差した。見上げると、巨大な噴石がカラカル目掛けて落ちてきた。
「潰される!」そう思った瞬間、
「ガアッ!」
ビーストが雄叫びと共に体当たりし、カラカルを突き飛ばした。そして代わりに噴石に埋もれてしまった。
カラカルはすぐに立ち上がり、一刻も早くビーストを助けようとしたが、巨大な噴石は重くてびくともしなかった。
そこへフレンズ達が駆け付けて来て、ビーストは自分たちに任せて、カラカルはキュルルの下へ急ぐようにと言った。
みんなが背中を押してくれている。なんとしてでもキュルルを止める、という強い決意を胸にカラカルは先に進んだ。
今までの戦いで消耗しているカラカルにとって、亀裂や噴石を乗り越えながら進むのは困難だったが、体の疲れを気にしている余裕は無かった。
一度に様々な事が起こりすぎて、頭の中がごちゃごちゃしている。
巨大な亀裂を飛び越えながら、なんとか考えをまとめた。
カラカル『こんな大騒ぎを起こして、ただじゃおかないんだから。おでこを弾くくらいじゃ済まさない。ひっぱたいで叱りつけて、みんなの前で謝らせる!覚悟しなさい!』
カラカルはようやくキュルルの下にたどり着いた。
彼の体は黒い輝きを纏っていて、無機質な目でカラカルを見ている。
カラカル「キュルル、いい加減にしないと怒るわよ!」
カラカルは必死に呼びかけるが、キュルルは何の反応も示さない。帽子を取り出しても、彼の様子は変わらない。
虚な目でカラカルを見つめ、感情のこもらない声でこう言った。
キュルル「我々セルリアンは保存し、再現する。永遠に。」
それを聞いたカラカルは、キュルルに手を振り上げた。
だが手は止まり、震えだした。
カラカルはキュルルの顔にそっと触れた。そして膝をついて、キュルルをぎゅっと抱きしめた。
今のキュルルには、何をやっても届かない。
そのことをまざまざと思い知らされ、胸が一杯になってしまい、もう何も出来なくなってしまったのだ。
なら、せめて、
カラカル「ずっと一緒にいてあげる。」
そう言ってカラカルは目を閉じると、キュルルの肩に顔をうずめた。そこから一雫の涙がこぼれ、彼の左目の近くに落ちた。涙はそのまま頬を伝って、一筋の道を作って地面に落ちた。
しかしキュルルは相変わらず、何も反応しなかった。
低い唸り声を上げながら、セルリアンの渦が間近に迫ってきた。
渦に浮かんだいくつもの巨大な目が、フレンズ達を睨んでいる。
◉けもハーモニー
穴からホテル内部に入ったかばんさん達は、落ちたサーバルキャットを必死に探していた。浸水するホテルのひび割れた窓から、セルリアンの渦が見える。ホテルが沈むのとセルリアンに食べられるのとでは、どちらが早いだろう。
あちこちに瓦礫が散乱し、海水は既にすねまで来ている。
かばんさんの体はあちこちが擦りむけ、傷口が海水に触れてジンジン痛んでいる。
かばんさん「サーバルちゃん、返事して!」
かばんさんは何度も呼びかけながら、サーバルキャットを探した。
捜索は困難だったが、絶対に諦めるわけにはいかない。
瓦礫を押し除け、海水を掻き分けながら進んだ。
博士と助手が耳をすますと、すぐそばの瓦礫の下からサーバルキャットのかすかな息遣いが聞こえてきた。3人でそれをどかすと、ついにサーバルキャットが見つかった。
だが反応がない。目を閉じたまま、ぐったりと横たわっている。
かばんさん「サーバルちゃん!サーバルちゃん!しっかりして!」
かばんさんさんが、サーバルキャットを抱き抱えて呼びかけるが、サーバルキャットは目を開かない。しだいに体が冷たくなってゆく。かばんさんがわなわなと震えた。
再びホテルが大きく揺れた。すると、かばんさんの目の前に、
キラキラしたものが流れて来た。それは海底火山から噴出した
サンドスターだった。
かばんさんは、サーバルキャットをサンドスターに浸した。
輝きがサーバルキャットを包み込み、しだいに輪郭が形作られてゆく。徐々に輝きは消えてゆき、フレンズの姿のサーバルが現れた。
どの道セルリアンに食べられたら、意味の無い行為だと分かっていたが、やらずにはいられなかった。
フレンズの姿になっても、サーバルは目を覚さない。
かばんさんは泣きながら、目を閉じたまま横たわっているサーバルを抱きしめた。そして涙で声を詰まらせながら、必死に呼びかけた。
かばんさん「お願い、起きてよサーバルちゃん!聞いて欲しい事がたくさんあるんだ!私…僕は、サーバルちゃんが大好きなんだよ…!」
研究所でサーバルと別れた後、かばんさんは博士と助手に、こんな事を言っていた。
かばんさん「たとえ気持ちを伝えられなくても、あの子がどこかで元気でいてくれるなら、それだけで私は満足だよ。」
そう言って、研究所に入っていった。
悲しげな背中が暗がりに消えてゆくのを、2人はじっと見つめていた。
博士「あれは『つよがり』というやつなのです。」
助手「まったく、ヒトの行動には謎が多いですね。」
サーバルと離れてから、かばんさんは寂しさを押し殺して研究に励んでいた。ようやくサーバルと出会ってからも、彼女の気持ちを優先して、自分の気持ちを押さえ込んでいた。
だがこの機会を逃したら、もう二度と本当の気持ちを伝える事は
出来ないだろう。今までずっと堪えてきたが、ようやく言葉に出す事が出来た。
その時、サンドスターがかばんさんの服の中にあったキュルルの絵に触れた。すると絵が輝き始め、歌声が流れてきた。それは大昔の記録から見つかって、かばんさんが希望の歌と呼んだ歌だった。輝きと歌声はどんどん大きくなってゆく。
それに気付いて、かばんさんは顔を上げた。
腕のラッキーさんが嬉しそうに言った。「オカエリ、ミンナ。」
旅の途中でキュルルの描いた絵が次々と輝き始め、歌声が流れてきた。風に乗って各地に散らばった絵の欠片もキラキラと輝きだし、パーク中に歌声を届けた。
歌を間近で聞いていたラッキーさんも、歌声を全てのラッキービースト達に送信した。
こうして歌声がパーク中に響き渡った。
それを聞いたフレンズ達は、口々に同じ歌を歌い始めた。
なぜ歌えるのかは分からないが、とても懐かしく感じられる歌だった。そして歌いながらたった一つのことを願った。
『大好きなこのパークを守って』
フレンズ達の思いが一つになり、ホテルを中心にけもハーモニーが起こった。ホテルは輝きに包まれ、セルリアンの渦がかき消えてゆく。
輝きの一部は屋上に集まって、巨大なイルカの姿になった。
巨大なイルカは身を翻して海に飛び込んだ。そして群がって来たセルリウムを突っ切って、海底火山に向かって一直線に泳いで行くと、そのまま火口に飛び込んだ。するとズン…っと大きな音がして、火山活動が収まった。
空は晴れ、地震は止み、ホテルの浸水が止まって海の水がみるみるうちに引いてゆく。そして沈んでいたホテルの出入り口と遊園地が、地上に姿を現した。
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