プロット

◯あの子との出会い〜◯パーク襲撃事件

プロットです。本編よりもイベントや会話が少ないです。


アムールトラ/ビーストのきせき


◯あの子との出会い


アムールトラがパークの一員になったのは、まだフレンズとヒトがそこで一緒に暮らしていた頃だった。その頃の彼女はボリュームのあるショートヘアーで、いつも小さなシルクハットを被っていて、サーカス団員やマジシャンのような姿をしていた。


彼女はいつも明るく元気いっぱいで、得意のマジックでみんなを喜ばせるのが大好きだった。そんな彼女のマジックショーはいつも大盛況だった。

彼女は誰からも好かれる人気者だった。


ある日アムールトラは、パークで迷子になって泣いている子供を見つけた。そこで、彼にマジックを見せて泣き止ませてから、一緒に親を探してあげた。


彼はアムールトラにお礼を言って、持っていたスケッチブックに彼女の絵を描いてプレゼントした。

彼女は絵を描いてもらったのは初めてで、とても感動した。彼にお礼を言い、絵を丁寧に畳んで毛皮の中にしまった。


これをきっかけに、2人は大の仲良しになった。

一人ぼっちが嫌いなアムールトラは、両親が不在がちで寂しい思いをしていたその子に、自分と近いものを感じ取っていた。

彼がパークを訪れた時は、必ず会いに行った。彼が一人でお留守番をしなければならない日は、パークに招待して一緒に過ごした。


彼もアムールトラが大好きだった。

彼女を「アムールお姉ちゃん」と呼んで慕っていた。

2人は強い絆で結ばれていた。




◯パーク襲撃事件


もうすぐアムールトラの誕生日。正確には、彼女がフレンズになり、パークの一員となった日だ。

そこで、誕生パーティーも兼ねた大規模なマジックショーが開催される事になり、みんなの所へ招待状が届いた。


もちろんあの子も招待された。彼は招待状が届いた日から、何をプレゼントするか散々悩んでいたが、マジックショーで輝いている彼女を、スケッチブックに描いてプレゼントする事に決めた。


そして誕生日当日。その日はとても良い天気に恵まれた。

アムールトラは会場から少し離れた所で、周りのみんなと談笑しながら機材を運んでいた。


彼女は昨日からずっとウキウキしていた。おかげで夜は、興奮してあまり眠れなかった。伸びをして大きなあくびをした後、あの子の顔を思い出し、慌てて気を引き締めた。


一方あの子は、一足先に会場を訪れていた。

マジックショー会場は、彼女のためにきらびやかな装飾が施されていた。まだ開演までにかなりの時間があり、会場内には数名のスタッフがいるだけだった。

パークガイドのミライさん、サーバルとカラカル、イエイヌとそのご主人夫婦2人が設営をしていた。


彼に気付いたイエイヌが、大きな包みを抱えて駆け寄って来た。

イエイヌ「おはようございまーす。来てくれて嬉しいです。実はあなたにお願いがあるんです。」


それはパークのみんなが用意したプレゼントだった。包み紙の隙間から覗いてみると、中には首に赤いリボンをつけた、大きなクマのぬいぐるみが入っていた。


イエイヌ「パーティーが始まったら、みんなを代表してこれをアムールトラさんに渡してあげて欲しいんです。」

彼は喜んで引き受けた。


フレンズになったばかりで、『ぷれぜんと』とは何なのか知らないというイエイヌ。それを聞いた彼はスケッチブックを開くと、周りのみんなと自分がパークの入り口に並んでいる絵を描いて、イエイヌにプレゼントした。(アニメでイエイヌが持っていた絵)

イエイヌはとても喜んだ。


そこへ何の前触れもなく、巨大なセルリアンが現れた。無機質で大きな目が彼を睨んでいる。彼は恐怖でその場に尻餅をついた。

セルリアンが、彼めがけて腕を振り下ろした。


咄嗟にイエイヌが彼を助けに向かった。必死に手を伸ばしたが

わずかに間に合わず、目の前で彼は取り込まれてしまった。

そしてイエイヌは腕の衝撃で吹き飛ばされ、気を失ってしまった。





パーク中に警報と緊急アナウンスが鳴り響いた。


アナウンス「緊急事態発生!緊急事態発生!マジックショー会場にセルリアンが現れました。お客様はパークの職員の指示に従い、速やかに避難して下さい。繰り返します…」

パークは大混乱に陥った。


それを聞いたアムールトラは、とても嫌な予感がした。

彼女は持っていた機材を放り出し、、会場に向かって一目散に駆け出した。


会場への通路は、パニックになり逃げ惑う人々で溢れている。それを掻き分けながら彼女は走った。


そこへ、避難誘導とは別のアナウンスが流れて来た。

アナウンス「子供が1人、セルリアンに取り込まれた模様!

応戦できる者は、直ちにマジックショー会場に向かい、子供を救助せよ!繰り返す…」


それを聞いた彼女の顔は血の気が引き、頭の中が真っ白になった。あの子に違いない。いや、まだそうと決まったわけじゃない、

ああ、でも。

『どうか無事でいて。』

そう祈りながら、彼女はがむしゃらに走り続けた。




取り込まれたあの子を助けようと、サーバルとカラカルは必死に戦っていた。

しかし相手は強力で、野生解放したサーバルでも敵わなかった。

とうとうサーバルまでもが、セルリアンに取り込まれてしまった。


ところが突然セルリアンの体が弾け、そこからサーバルが飛び出してきた。


サーバルの全身から、もの凄い勢いでけものプラズムが吹き出している。セルリアンが勢いよく腕を伸ばしてきたが、爪で払い除けただけで弾き飛ばした。そして以前とは比べ物にならないパワーで、セルリアンに突撃した。強烈な攻撃を受けたセルリアンは、粉々に砕け散った。


セルリアンのカケラが散らばる中、サーバルがあの子を抱き抱えながら歩いて来た。サーバルはパークの職員に彼を預けると、にっこりと笑った。彼は気絶しているが、命に別状は無さそうだ。職員はほっと胸を撫で下ろした。


そこへ、カラカルの叫び声がした。

カラカル「ちょっと、どうしたのサーバル!?」

なんだかサーバルの様子がおかしい。けものプラズムの放出が止まらず、体がどんどん消えて縮んでゆく。そうしてあっと言う間に、サーバルキャットの姿に戻ってしまった。


ようやく駆け付けたアムールトラが見たものは、倒れているあの子とそれを介抱する職員、そしてポカンとした顔でこちらを見上げている、サーバルキャットだった。



あの子は医務室のベッドに寝かされ、その横でアムールトラが彼を見守っていた。彼女は自責の念に囚われていた。


『この子に招待状を送らなければ、こんな事にはならなかったのに。私が近くにいれば、守ってあげられたのに。そうすればサーバルだって、動物に戻る事はなかったのに。』


自分を責める言葉だけが、頭の中をぐるぐる回っていた。大切な友達を守れなかった己の無力さが許せなかった。


しばらくして、彼は目を覚ました。アムールトラは身を乗り出して彼に話しかけた。

アムールトラ「良かった、気が付いたんだね!気分はどう?痛いところは無い?」


すると彼はキョトンとしながら「お姉ちゃん、誰?」と言った。


セルリアンに取り込まれたせいで、彼は記憶を失っていた。

それに気付いた彼女は大きなショックを受けた。


少しでも覚えている事はないかと、彼女は自分の事を話したり、初めて会った時に描いてもらった絵を見せたりしたが、駄目だった。


『そうだ、私の事は分からなくても、これなら何か思い出すかもしれない。』


そう考えて、アムールトラは彼にスケッチブックを見せた。

ページをめくってみると、そこには2人にとってのパークの思い出の場所が、何枚も描かれていた。


しかし彼は、その場所はおろか、もう絵の描き方すら覚えていなかった。


幸い、彼は現状をすんなり受け入れてくれた。その場で軽くやり取りをしただけで、2人はすぐに仲の良い友達に戻った。


それからあの子は、失った記憶の事など気にせず、これまで通り明るく元気に日々を過ごした。


そんな彼に感化され、酷く落ち込んでいたアムールトラも、徐々に前向きに生活が送れるようになった。小規模なマジックショーを紙に開いたり、友達とおしゃべりしたり、また彼と一緒に過ごしたりと、元の明るく元気な彼女に戻っていった。


すっかり元気を取り戻したかに見えたアムールトラだったが、彼女の心の奥には罪の意識が残り続けていた。

この気持ちに負けたくない、今度こそみんなを守りたいと、体力自慢のフレンズ達と一緒に、筋力トレーニングを始めたりした。

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