後編
第26話 ♫おちゃかい
イエイヌ「フフフ、フフーフフーン♪」
イエイヌのおうちから、希望の歌のメロディが聞こえてくる。
その中では歌を口ずさみつつ椅子に腰掛けているイエイヌが、キュルルが描いてくれた絵を見ながら微笑んでいた。
それはイエイヌが大切にしていた絵と同じ構図だが、人物が変わっている。
左からイエイヌ、アムールトラ、カラカル、キュルル、サーバル、かばんさん、博士と助手がパークの入り口に並んで笑っている。
するとコンコンとドアを叩く音がした。イエイヌがドアを開けると、そこには絵に描かれていたメンバーと、ジャングルのフレンズ達がいた。
イエイヌ「みなさん、ようこそ!」
そう言って、イエイヌは笑顔でみんなを出迎えた。
うららかな日の光の下、イエイヌのお庭でお茶会が催された。
アルパカからもらったお茶とかばんさんが持ってきたお菓子が振る舞われ、集まったみんなで近況を報告し合った。
海底火山の活動は、けもハーモニーにより鎮静化した。
これによりセルリアンの数は大幅に少なくなり、大型の個体は出てこなくなった。
地震で壊れた所は、ラッキービースト達による整備が進んでいる。
レールが修復された事でモノレールでパーク中を回れるようになり、セントラルパークの遊園地などの施設も、海の水が引いたため利用できるようになっていた。
キュルルはおうちを見つけることはできなかったが、カラカルというかけがえのない友達を見つけた。
またセルリアンが原因とはいえ、パークの危機の中心人物だとカラカルから聞かされたキュルルは、ホテルでみんなに謝罪した。そして罪滅ぼしのため、困っているフレンズのお手伝いをする事にした。
カラカルはそんなキュルルに協力を申し出て、一緒にパーク中を回ることとなった。
そんな2人のお手伝いは大好評。たちまち評判となり、あちこちからお手伝いやお使いを頼まれるようになった。その依頼方法は直接だったり人づてだったり、ラッキービーストが教えてくれたりした。
こうして2人は、パーク中を旅しながらフレンズに品物や伝言を届けるメッセンジャーになった。
ちなみにけもハーモニーが起きたあの日から、ヒトの輝きからセルリアンが生まれる事はなくなったため、キュルルは今でも絵を描き続けている。時にはフレンズたちの交流を、絵や文章で繋いだりもしている。
サーバルはかばんさんとの記憶を取り戻し、博士助手と一緒に研究所で暮らしている。もうセルリアンの心配をしなくても良くなり、かばんさんも研究を続ける必要が無くなったため、近々サバンナに引っ越して2人で暮らすそうだ。
そして博士と助手は、お菓子を頬張りながらこう言った。
博士「それに合わせて、我々は図書館に戻るのです。」
助手「時々様子を見に行くのです。料理の腕を磨いておくのですよ。」
アムールトラはジャングルのフレンズ達と同じテーブルに座って、笑いながらみんなとおしゃべりをしている。まだ言葉はところどころぎこちないものの、時々かばんさんに教わりに行っていて、少しずつ会話の幅も増えてきている。
けもハーモニーの力で彼女の野生解放は治まり、強大な力は失われた。獣のようだった大きな手は、すっかり縮んで器用に物を掴めるようになり、今は小さなカップでお茶を飲んでいる。
そんな彼女の左腕には、壊れたラッキービースト本体が光っていた。練習を繰り返す事で着脱もできるようになり、大切なお友達としていつもそこに着けている。
彼女はゴリラ達とジャングルで暮らしていた。
なんでも壊してしまった広場をみんなで修復し、フレンズが自身の身体能力を活かしたショーを披露する、サーカス会場にしたのだという。
イエイヌはおうちを開放し、積極的にみんなと交流するようになった。聞いたところによると、あの日のホテルで大切なヒトと出会って約束したのだという。
それからというもの、それまでしょぼくれていたのがウソのように明るく社交的になり、今ではお茶の淹れ方もすっかり板についていた。
そうしてお茶会が一段落した頃、キュルルが鞄からなにかを取り出してイエイヌに手渡した。
キュルル「はい、招待状だよ!ようやくホテルの修理が終わって、ペパプがお祝いのライブをやるんだ。パークのみんなが招待されているんだけど、とりわけあの時駆け付けてくれたイエイヌさんには、ぜひ参加して欲しいんだ。」
それを聞いたイエイヌは、笑顔で「はい!」と返事をした。
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