第17話 ◉2人の軌跡
かばんさん達はいなくなったビーストを探して、ジャパリバスに乗ってジャングルを訪れた。しかしゴリラ達に話を聞いてみても、見ていないという。
ゴリラ「ただおかしな事があったんだ。キュルルさんの絵から、私達にそっくりな黒い一つ目のセルリアンが出てきて、どこかへ走っていったんだ。」
かばん「ここでもか…。実はキュルルさんと出会った他のフレンズからも、同じような報告が来てるんだ。私達はこれから各エリアを回って、ビーストを探しながら話を聞いてみる。もしかしたら、パークの危機が迫っているのかもしれない。」
その言葉を聞いて、ゴリラが考え込みながらこう言った。
ゴリラ「パークの危機…、私達も一緒に行って良いだろうか。何か力になれるかもしれない。」
かばん「いいよ、乗って!」
それからかばんさん達はジャパリバスに乗って、各地のフレンズ達に話を聞きながら、キュルル達の来た道を逆にたどった。休憩も挟みつつモノレールの線路に沿って進んで、翌朝サバンナに到着した。
各エリアを訪れるたびに「一緒に行きたい!」と申し出たフレンズを乗せたため、その頃にはバスはすし詰め状態となっていた。
話をまとめると、フレンズ型セルリアンはセントラルパークに向かっているらしい。またアヅアエンのバンドウイルカとカリフォルニアアシカは、海のご機嫌がどんどん悪くなっていると言っていた。これは海中のセルリウムが増えているという事だ。
かばんさんが考え事をしながらハンドルを握っていると、空から甲高い笛の音と共に誰かが舞い降りてきた。
カルガモ「そんなに速く走ったら危な…、わあ!?フレンズさんがいっぱい!」
お互い自己紹介をしてから、かばんさんはここまでの
パークの危機と聞いて、彼女も同行してくれる事になった。そして急いでいると伝えると、空を飛びながら道案内をしてくれた。
しかし駅のホームにも割れた岩のある水辺にもビーストは見当たらなかった。かばんさんは地図を片手に、カルガモにこう尋ねた。
かばん「このあたりに頑丈そうな建物があるはずなんだけど知らないかな?もしかしたらそこにビーストがいるかもしれない。」
カルガモ「キュルルさんが眠っていたという所でしたら知ってますよ。しっかりついてきてください。」
カルガモについてゆくと、隔離施設に到着した。建物のあちこちに大きな穴が開いている。
かばん「おーい、誰かいないかー?」
かばんさんは呼びかけてみたが、何の反応もなかった。どうやらここにもビーストはいないらしい。
かばんさん達が中に入ってみると、そこにはキュルルが眠っていたセルリアンの結晶とコンピュータ、そしてビーストが入っていた檻があった。
鉄格子は内側から破られていて、床にはぬいぐるみがたくさん並んでいる。かばんさんは、その中でひときわ目を引く大きなトラのぬいぐるみを抱き上げた。
結ばれているリボンには、「忘れないよ」「また会おうね」などの文字とフレンズの手形がびっしりと並んでいた。
かばん「アムールトラは、本当にみんなから愛されていたんだな。そして長い眠りから目覚めた後、ここをこじ開けて結晶に向かっていった。けど何か問題があって壊せなかったんだ。」
そして彼女はここを出た後、たった一人でパーク中を駆け回り、いつしかビーストと呼ばれ避けられるようになった。
それから結晶も触ってみた。ひんやりしていて、軽く叩くとキンキンと硬い音がした。
かばん「その後で、キュルルさんがここで目を覚ました。それから外に出て、そこで出会った2人と旅を続けている。」
誰からも愛されていたのに一人ぼっちになってしまったビーストと、一人ぼっちで生まれたけれどみんなに受け入れられたキュルル。同じ場所で過ごした2人の今は、あまりにも対照的だった。
こうしてしばらく思いを巡らせた後、かばんさんはこちらの様子を伝える為、キュルルと連絡を取る事にした。
かばん「ラッキーさん、キュルルさんがどこにいるか分かる?」
ラッキーさん「せんとらるぱーくニ向カッテイルヨ。」
かばん「いけない、止めないと!キュルルさんに繋いで。」
ラッキーさん「ワカッタ。」
かばん「もしもし、キュルルさん聞こえる?」
すぐにキュルルから返事がきた。
キュルル「ザッ…ばんさん?…したんですザッ。」
かばん「よく聞いて。大変な事が起こってるんだ。もしかしたらパークの危機かもしれない。私はフレンズ達とセントラルパークに向かうよ。危険だから、キュルルさんは安全な所にいて。」
キュルル「ザザッ…ビーストを……ザッ…セントラル…ザザ。」
かばん「ビースト?ビーストがそこにいるの?」
雑音が酷くて言葉が聞き取れない。かばんさんは通話を諦めた。
ラッキーさん「アノラッキービーストハ、疲レテイルミタイダヨ。何カ大変ナ作業ヲシタンジャナイカナ。」
かばん「急ごう。ああ、こんな事になるなら、ビーストの事をもっと話しておけばよかったなあ。」
かばんさんは急いで建物から出ると、フレンズ達を連れてバスを走らせた。
地殻変動により、セントラルパークは海に沈んでいる。
バスでは調査が難しいと考えたかばんさんは、一旦アヅアエンへ行き、そこから船で向かう事にした。
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