第6話

◯ビースト計画(プロジェクト)

子供の輝きを取り込んだためだろうか、マジックショー会場に現れたセルリアンのコアが消滅せずに残った。これをどうしたら良いのか。襲撃事件が起きた後、パークの関係者達で話し合いが行われた。

危険性を考えるとすぐにでも破壊すべきだったが、これを傷つけることが出来たのは突如変異したサーバルだけだ。

 

サーバルが見せた強力な野生解放状態は、ビーストと名付けられた。記録された映像や目撃証言などから推測すると、野生解放よりも大きな力が出せるが、サンドスターを一気に消費してしまうため、制御できなければすぐに動物の姿に戻ってしまうようだった。

フレンズは通常、いわゆる制御機能の働きによりこのような状態にはならないが、今回のケースでは、サーバルがセルリアンに取り込まれた際にこれが失われ、ビースト化したのだろうと考えられた。

 

サーバルは先のセルリアンとの戦いで、サンドスターを使い果たし動物に戻ってしまっている。現在のところフレンズ化は噴火任せのため、次がいつになるのかは予測できない。また、動物に戻ると記憶が失われるため、たとえ再びフレンズになったとしても、ビースト化できるのかどうか分からなかった。

 

その後数ヶ月に渡って話し合いが続いたが、今のままのフレンズとヒトの力では、どうする事もできないという結論に達した。

 

 

残された手段は、人為的にフレンズをビースト化させ、その力でコアを破壊する事だった。

一連の計画は『ビースト計画(プロジェクト)』と名付けられた。

 

だが前例の無い試みで、途中で何が起こるか分からない。仮にコアが破壊出来たとしても、そのフレンズは動物に戻ってしまう可能性が大きかった。そのため、フレンズを危険に晒すくらいなら、コアはひとまず放置するべきとの意見も多かった。

 

しかしそんな中、アムールトラは自ら志願した。彼女も他のフレンズと同様、野生解放すらできない。だが彼女には、みんなを守りたいという強い決意があった。これから起こりうる数々の危険を聞かされても、彼女の心は揺るがなかった。

 

 

ジャングルの奥地に、研究者以外立ち入ることのできない研究所があった。ここではいろいろな研究が行われていて、その中にはセルリアンに関するものもあった。厚い壁に囲まれ隔離されたこの場所には、すでにコアが運び込まれていた。

そして計画(プロジェクト)もここで進められる事となった。

 

こうしてビースト計画(プロジェクト)が始まった。記録されていたサーバルのデータを基に、様々な実験が行われた。

日を追うごとに、アムールトラは強い力を出せるようになっていった。感覚も鋭くなり、セルリアンや輝きの気配を敏感に察知出来るようになった。しかしその一方で、徐々にフレンズとしての特性が失われていった。

 

容姿が変化し、髪が伸び毛皮が生え変わった。

手は肥大化し巨大な爪が生え、野生動物を思わせる形になった。

物が掴めなくなり、四つん這いで走るようになった。

しだいに言葉を話せなくなり、意志の疎通が難しくなった。

また、戦いと食事と睡眠以外の事への関心が薄まった。

 

彼女を心配した研究者達が、何度も実験の中止を勧めた。あるいは彼女の力になりたいと、危険を承知で計画への参加を申し出るフレンズも現れた。

しかしアムールトラは、「もう誰にも辛い思いをさせたくない」と言って、それらを頑なに拒否した。その姿勢は、言葉を話せなくなっても変わらなかった。

 

彼女の強い意思を無下にする事はできなかった。

こうした情報は研究所内のみで共有され、慎重に計画は続けられた。

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