うどん『県立通信高校の思い出』


 締切に間に合わず、一年のときに書いたやつを直したのを出しています。

 公立の通信高校に通っていた珍しい体験を書き残しておこうとしたのですが、三年近く経つともう思い出せないですね……自分で読み返して「へー」って思うレベルになっています。


 私の通っていた通信高校は倦怠感が何となく漂っていました。そんな雰囲気なので全日制以上に「尖った人」が目立つ空間でした。そんな人は印象に残っています。あまりにも残りまくったのでこうして書いておこうと思いました。ツイッターの検索がダメになって当時のツイートが拾いにくくなったのも理由の一つです。

 ほぼ人付き合いをしなかったので話している様子を遠目で見た感想が中心になります。要するに珍しいと思った人達を中心に淡々と県立通信高校の思い出を紹介していきます。


 まず、通信高校に学年の概念はなく、「今期(二期制)卒業予定者を集めたクラス」「来期卒業予定者を……」など「いつ」卒業予定かを基準にクラス分けがありました。もちろんみんなで授業を受けるために存在しているわけもなく、ホームルームをするときしか機能しません。日本人と思えない等身の高い若そうな美女、袖からリスカ跡がチラっと見える女、そんな中制服を着たフツーの若い男女も

 そしてそのクラス分けのなかに「五年間来ていない人を集めたクラス」がありました。


  子持ちの同年代編


 ギャルとマックのポテト


 文系の私は単位の関係で、地学基礎を取っていました。

 数学発展と物理基礎と地学基礎の一つを選べ、そうしないと卒業させんと単位選択用プリントに迫られ一番計算を使わなさそうな地学基礎をむりやり選んだわけです。思った通り地学基礎は難しくなくむしろ楽なほうでした。レポートは全部で六通か八通あり(それらを完了させないと単位認定は認められない)授業内容もラクなので勿論レポートも楽勝(計算が必要な章を除いて)でした。

 しかし隣のギャルは違うようで、私が五通目をやっている間ギャルは二通目を埋めているスローペースでした。

 地学基礎は珍しく席が指定されていたので毎回そのギャルが隣にいました。

 長くて明るい茶髪のギャルは柳原可奈子似で、私と年が近いように見え、真冬でも生足にパンツがはみ出しそうな超短パンを履いて、大きい声で一番後ろの席から先生に色々と質問していました。

 ある日レポートの課題が分からず、先生に質問しにいくと既にギャルと多分二十代前半頃に見える落ち着いた雰囲気のギャルがいました。(もちろん二十代っぽい女も生徒)同じ問題で三人とも詰まっていたという。先生はまだ来なかったので私も会話に混ざってテキトーにダベっているとギャルが「あっ」と言いスマホを取り出しました。

「ね、これ見て」

 ギャルが私にスマホを突きつけ見せてきたのはいかにもフリフリで写真撮影用の服を着たふっくらした男の子の赤ちゃんの画像。

「え、可愛い」と褒めたら「でしょー?」と明るい声が返ってきました。

「スタジオアリスってさ、写真にすると金取られるけどデータだとタダなんだよね」

「赤ちゃんっぽいし良いじゃん? いくつだっけ?」

 二十代前半に見える女が質問すると、ギャルは「一歳○ヶ月!」と若干被せ気味に即答しました。よく出てくるなと感心しました。多分両親や大好きな従兄弟達の年齢でも何歳何ヶ月だよと即答はムリ。   だから凄いねよくそんな早く出るね、と言いました。

「え? 自分の子供だもん当たり前じゃん!」

 ギャルがそう言いました。

「え?」

「うん」

「今は?」

「お母さん……てかもうおばあちゃんだけど見てくれてるから」

「そっか」

 これが私にとって、母になった歳が近い人とのファーストコンタクトです。なおこの後妊婦含め何人か見かけることになります。

 ギャルとのエピソードはもう一つあります。

 遅刻したギャルが教室にマックポテト持参でやって来た日がありました。もうアホかと思いましたね。マックポテト特有の香りがどんどん近づいてきてめちゃくちゃ嫌でした。まあでも席に着けばしまうだろうと思っていたのに今度は食べ始めるという! 私としては珍しく片付けてほしいと頼むと、ギャルはあっけらかんと「じゃあ一緒に食べよう!」とくっついている机の真ん中にポテトを置いてきた!

 今思い出してもわけわからん! ギャル! なにそれは! その行動!

 匂いが辛い=食べたくなってくるから辛いと解釈したのでしょうか? 全く分からないけど、当時は大笑いしてポテトをもらったのでした。


  妊婦と卓球


 通信高校の体育は、バスケかウォーキングかバトミントンか卓球(道具があれば他競技も選べる)どれか一つ選んでやる事になっていました。私は中学の頃やっていたこともあり、卓球を選びました。

 体育初回、二階の卓球台がある場所に向かうと三人の女集団が既に居た。その中の一人が太ってもいないのに腹だけが不自然に膨らんでいました。まさか…と思ったがさすがに聞けませんでした。妊婦だとハッキリ分かったのは女が妊婦に卓球台の片付けを丸投げした際に女の先生が「コラ、妊婦さんに作業させないの」と注意したときでした。

 その次回か次次回の卓球は妊婦とやることになりました。

 そのとき初めてちゃんと正面から顔を見ました。黒髪を触覚と流し前髪だけ残し後ろに一つ結びでノーメイクの中国人っぽい顔。聞かなかったので本当に中国人かは分かりませんでしたが、中華料理屋の娘とか言われたらものすごいしっくりくる感じでした。若い子が妊娠するなんてのはギャルかヤンキーの話だと思っていたのに地味な感じの女の子だと意外な感じでした。

 無言でラリーを続けるのも間が持たなくて辛かったので「いくつなの?」と聞きました。妊婦の返事は忘れましたが、年下なんだなと思った気がします。当時十五〜十七辺りでしょうか。

「上手いよね、卓球やったことなくて」

 妊婦さんにそう言われれると、中学の頃やってて……と返事しました。

「ラリーが続くね。上手い人がいると、違うね」

 実際、私が妊婦のラケットに当たるようにボールを打っていたのが大きいと思いますが、妊婦のほうもめちゃくちゃな打ち方をしていないから続いていたと思います。私も妊婦もお腹に関して一切触れず体育は終わりました。

 妊婦さんとつるんでいた女達はお腹を触ってたりしてましたが。

 他にも妊婦を何人か見かけましたが、全日制とは違い先生達から祝われているようでした。全日制にはない通信高校の良い点だと思います。

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