第18話
賛成派のはずの男子生徒三人の主張は、ことごとく人の神経を逆なでして、賛成の方向に傾きつつあった流れを押し戻した。
そもそも、
青ざめた顔をした女子生徒、
背の低いツインテール。
そのため髪の真ん中に分けた白い筋がビシッと通っている。
大きなセルフレームの黒縁メガネにツンと上を向いた鼻。
なんだかアニメに出てくるロリっ子キャラのようだけど、それは本人があえてそう意識してるのだろう。
ただ、実際に存在する舘若は、アニメのようにカリカチュアされてないために、なんだかアンバランスさが痛々しい。
人呼んで『かわいそうな人』と言ったところだ。
普段は割と元気なイメージがある舘若だったが、なんだかふらふらして今にも倒れそうだった。
「私はさっきから吐きそうです。私達には性欲がある。それはわかってます。でも、それって隠さなきゃいけないことなんじゃないですか? 見て見ぬふりをして、健全に過ごすからこそ社会が成り立ってるんじゃないですか。あの人も、裸を見たがっている。あの人もセックスをしたがっている。そんな風に思い始めたら気持ち悪いし、はっきり言ってこれからその人を普通の目では見れません」
その苦しそうな表情に、ついつい憐れみの同情を抱いてしまう。
男子生徒が挙手をする。
つややかなマッシュルームカットの男子生徒で、目付きが異常に悪い。
そして、舘若と付き合ってるらしい。
クラス内カップルは他にいなかったわけでもないけれど、正直、彼に対して羨ましいという気持ちを持っている人は少ないんじゃないかと思う。
人呼んで『かわいそうなキノコ』と言ったところだ。
「俺も同意見です。さっき、パンチラだとか言ってたけど、それだって結論が違うんじゃないか。恥ずかしいから興奮するんじゃなくて、秘すればこその美なんだよ。本音を言えば楽になれるなんて、動物の世界じゃないか。本音を言わずに、嫌なやつでも適当に愛想を使いながら生きるから争いが起きなくていいんだろ。自分に正直になんて、周りとの調和を考えない我儘でしかない。ありのままだなんてクソッタレだ」
和多野の意見に舘若が頬をヒクヒクさせてため息をつく。
「ハァ~、もうっ……」
「恥ずかしいことでも言えてしまう俺の向こう見ずな度胸はカッコ良いと勝手に思い込んでるだけだ、むしろそっちの方が百倍格好悪いぜ」
和多野はそう力説したが、視線がどうにも舘若の方に流れていて、今ひとつクラスのみんなに内容が響いてない気がした。
ボクも正直、彼が何を言ってるのか耳に入ってこなかった。
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