21話:運命への復讐、始動
「初めまして。そして、さようなら」
ドンと近距離から発砲される。弾が体に当たる。
しかし咄嗟に体を固めたことで、弾が体に侵入するのを防ぐことに成功。弾はギンと音を立てて弾かれた。
今の俺が本気で体を固めたら、鋼以上の硬度をもつ。銃弾など効かない。
「なっ……!?」
撃たれたのに何ともない様子の俺を、有り得ないといった様子で凝視している女の首を掴んで、地面に思い切り叩きつける。
「で、これは何の真似だ?出会って早々に発砲とか、どこの狂人だお前」
ギギギと絞めながら地面に押しつけて拷問する。
どういう経緯でこうなったのかを軽くおさらいしよう。
学校に登校して下駄箱を見ると手紙が入っていて、内容は次の休み時間に焼却炉前に来いとのこと。
手紙の言う通り、次の休み時間に指定された場所へ行くとそこには高校生には見えない体つきをした女子(?)がいた。
何の用事かと聞いた瞬間、こちらにつかつかと近づいてきて……後はさっきまでの通りだ。
「女が相手だからといって、俺に敵対する以上は容赦されると思うな?
おい喋れるだろ?いったいどういうつもりかって訊いてんだ」
ギリギリと絞める力を強めて拷問をする。そこでやっと女は口を割った。
「げ、玄達様の命令で、お前を消しにきた。お前が危険だから、と……ぐぅう!」
「危険?今のお前らの方がよっぽど危険じゃねーかよ」
怒りと呆れが混じった感情が湧いてくる。
「アンチどもが……ついに俺を消しに来たか。俺が恋人に相応しく無いとか言ってこうやって俺を亡き者にしようとしにな…。
いつもそうだ。俺ばかりがこんな目に遭わせられる…。クソ忌々しい運命だよマジで…!」
藍野さんのクソ親父に、刺客女に、そして俺に科せられた運命に全て怒りを覚える。全部が憎い、潰したい……ぶち殺したい。
そうだ……ここからは復讐といこうか。
前世から続ているくそったれ過ぎる運命に対する復讐を、ここから始めようじゃねーか!
「お、おい…。放せ、よ。藍野様に寄り付く害虫が」
女がこちらを睨んで言葉を吐く。
「お前が…悪いんだ…!藍野様の傍にいるのは、私だったはずなのに…!お側で仕えていたのに、ある日突然私から離れていったのは、お前が現れたせいだ!!
お前なんか死ねばいい!!」
この女はどうやら藍野さんを慕っているようだ。しかもライクではなくラブで…。
「大した女だ。今までのアンチどもはちょっと小突いたら泣き喚く小物だったが、お前は少しは度胸があるようだな」
「ゲホッ!だ、まれえええ!!憎い!死ね!今すぐここで死んで藍野さんの傍から消えろォ『ドスッ』ーーーカヒュ」
怒りの声を上げる女の喉を貫手で刺して黙らせる。
「ア……ガ、ッマァ……!」
「同性愛とか気持ちわりーんだよゴミアンチが。死ねよクズ」
喉を刺した手でそのまま女の首の骨を折って、殺してやった。その場で穴を掘って死体を埋める作業をしていると、
「秀征、さん…?」
藍野さんがいつのまにか俺の横に現れていた。どうやら俺がそそくさとここに来るのを見ていたようだ。
「その人って…私の側近だった松井さん…よね?まさか……殺した、の?」
「こいつが松井とかいうのは今知ったけど、その通り。俺はこいつを殺した」
藍野さんはプルプル震えながらこちらに近づいて、松井の死体をしゃがんで呆然と見下ろす。
「どうして…どうして松井さんを!?」
涙を浮かべている藍野さんのところに、松井の銃を落とす。
「そいつで俺を撃ち殺そうとした。君の親父の命令で、あと私情で殺しにきた。だから俺も殺すつもりで殺した。それだけだ」
銃を握りしめて俯いている藍野さんに俺は無情にそう告げる。
「そんな、殺すことって…。秀征さんなら殺さずに解決できたはずよ!殺す必要なんて…!」
「相手は明確な殺意を以て撃ってきた。仮に生かしたところでまたこいつは俺を殺しにきてたはずだ。そうなったら俺が殺されてたかもしれない。だから殺した。正当防衛だ」
半分嘘をついた。こんな奴の程度がいつどこで何人襲って来ようが、俺は殺されない。それだけ力の差があるから。
「藍野さん、こうなった以上は君に打ち明けることにするけど。
君の親父は俺を殺そうとしている。理由は色々あるみたいだけど…一番の理由は俺が気に食わないからだそうだ」
「……っ!」
「気の毒だが事実だ。奴は俺を殺すまでこれを続ける気でいるはずだ。許婚相手だった久保田以外の男との交際を、奴は認めない気でいる。だから俺を殺そうとしてるんだ」
「お父さんが、そんなこと、を……っ」
藍野さんは酷くショックを受けた様子で項垂れてしまう。そんな彼女に俺は情け無しにある決め事を告げる。
「藍野さん。俺は自分の恋愛をこうやって邪魔をする、俺を亡き者にしてまで潰そうとしている連中は絶対に許す気はない。けじめはしっかりつけてもらうつもりだ」
「……何を、するつもり?」
「決まっている。ただ藍野さんには申し訳ないけどーーー」
俺の続く言葉に、藍野さんは顔を真っ青にさせた。
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