22話:今度は俺が好き勝手する番だ
松井が吾妻秀征に殺されたことを、娘の藍野から聞いた。
奴がただの男子高校生ではないことは先日の抗争で知っていることだ。
だから組でいちばん暗殺術に長けていて藍野に従順であった松井を寄越したのだが、彼女が殺される結末となった。
藍野からはどうしてこんなことをするのだと怒りと悲しみが混じった声を浴びせられて心が痛んだが、ワシはこのまま終わる気はない。
吾妻秀征、奴はダメだ。許婚相手がいるのにも関わらず、ズカズカと藍野の傍に入り込んで親しくなった害虫だ。
しかも許婚相手である辰雄君を廃人に変えたということも聞いた。よくもワシの組を発展させる為の縁談を滅茶苦茶にしおって。許せるはずがない。
奴は危険だ。こうなったら組総出で奴を消さなければなるまい。
そうだ、自分は正しい。愛娘の藍野に付く悪い虫を排除することに間違いも悪もあるものか。
奴が悪だ。親切に警告してやったのに未だに藍野の傍にいる…許せん。
消してやる…!
鮫村組の人間を消してから数日後。突然「その時」がきた。
「お迎えにあがりました。どうぞ、お乗り下さい」
「………」
日曜の昼、日課であるトレーニングをしようと家を出ると黒い車がいくつも待ち構えていた。そいつらが鮫村組だとすぐに理解できた。
無視して通り過ぎようとすると背後に銃を突き付けられている気配を察知する。
「どうぞお乗りになって」
組員は額に汗を浮かべながらも笑顔で乗車を薦めてくる。
俺なら後ろの組員も簡単に潰すことは可能だが、せっかくなので誘いに乗ってやることにした。
車が向かう先は以前訪れた鮫村組の屋敷…ではなかった。
屋敷を通過して、だんだん人が少ないところへ移動していく。
車が止まった先は、だだっ広い空き地だった。
(ここも前世と同じって…。ここまでくると笑うしかねぇな。
俺が恋愛するのがどうしても許せないというのか…)
車から降りると物陰から組の人間が何人も現れる。
その1分後に車がもう一台到着する。
出てきたのは、組長の鮫村玄達と…藍野さんだ。
「さて……唐突だが。
吾妻秀征、貴様にはここで消えてもらうことにした。死ね」
玄達の声とともに周りにいる組員どもが一斉に武器を構える。
「お父さん!どうして…!?秀征さんは悪人じゃないってあれほど!!」
「藍野、お前こそ何度も言わせるな。奴と親密になることは決して認めない。奴と付き合うのはダメだ。奴に藍野をこれ以上親しくはさせない。ワシも我慢の限界だ。もはやこれまで……殺すしかない」
藍野さんが玄達に食ってかかる勢いで止めに入る。その顔には怒りと焦りが見える。
反対に玄達は冷静な表情で、しかし意味不明な言葉を発している。
「そもそもお前には将来約束された許婚がいたというのに。あのような男なんぞと恋仲になるなど認められるはずがなかろう。許婚の男を廃人にした奴などなおさらな。
しかも奴はうちの松井を亡き者にした罪もある。そんな奴を生かす理由はどこにもあるまい」
「黙ってきいてりゃ意味不明でふざけたことばかりほざきやがって。あの女に俺を殺すように命令しておいてよくそんなことが言えたな?俺は何も悪いことしてねーのに、お前らから仕掛けたんだろうが」
「うるさい黙れ!貴様が藍野と恋仲になることは認めん!こいつらにはお前が極悪人だということを伝えてある。
遠慮はするな。殺せ!!」
組員にそう命じた直後、組員たちが一斉に俺を殺しに来た。藍野さんは玄達に連れられて車に姿を隠した。
「秀征さん!!ダメぇ!!」
藍野さんが車の中から悲鳴に近い叫び声を上げる。彼女は分かってるんだ。俺がこれから何をするつもりでいるのかを。
以前の許婚の件で、藍野さんは俺のことを悪い意味で理解したから分かってしまうのだ。
俺がもうこいつらに慈悲の欠片など一切あげないということを……。
「…いつもそうだ。あの時もそうだった。俺は悪いことしてねーのにいつも理不尽な目に遭わせられる」
銃弾を全て弾く。駆け出して思い切り蹴りを放って、組員どもを消し飛ばす。
「前世では無力だったから、お前らの好き勝手にやられて、殺されたが………今回はそうはならねー。なってやらねー」
体がデカめの組員を掴んで大砲の如く投げ飛ばす。ひと投げで3人は絶命した。
「この世界では俺が好き勝手にやる番だ。アンチのお前らの結末は………
死 だ」
掴んでは投げ飛ばす。その動作一回で4人殺していく。組員はまだけっこういる。
俺のアンチがまだ沢山いる。しかも俺を殺そうとしている。
容赦などすることはしない。たとえ
全員ぶち殺してやる!!運命への復讐だ!!
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