1話:前世の記憶
「ーーーんなわけねぇだろーがああああああ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!!」
ある日突然、俺はそんな怒声を天を見上げて出した。
あまりに突然のことに周りの奴らがビクリとする。そして何人かが泣き出してしまった。
俺は咄嗟に近くで泣いている女児たちを、ゴメンねー大丈夫だよーとあやして落ち着かせる。因みに男児どもはガン無視してやった。
「いきなりどうしたの?あんな怒った声を出しちゃって。まぁ皆が泣き止むのを手伝ってくれたのは助かったけど。気をつけてよね………秀征くん」
「はーい。いきなり怒鳴ってしまってゴメンなさーい先生。次からは気をつけまーす」
注意してきた大人の女を見上げて返事をする。
そう……俺は今は園児であり、俺が今いる場所は幼稚園だ。
俺は…神屋秀清だった少年は、
何がきっかけで前世の記憶が蘇ったのかは分からない。それにしても思い出すだけでも腸が煮えくり返るような気分にさせられる。
前世ではあの子のことを本気で愛していたのに、幸せにしてやりたいと誓っていたのに…!
あの子だって俺のことを本気で好きでいてくれて、身の危険を省みずに俺と一緒にいると言ってくれたのに……っ!!
あのクズ親父め、そんな俺たちの仲をふざけた理由で無情に引き裂きやがって……俺をよくも殺しやがって……!!
あの日……俺とあの子の密かな逢い引きを誰かが……恐らくクズ親父の手先の人間が奴らにチクって、そのせいで俺はクズ親父を筆頭とする俺らの恋愛アンチ勢に囲まれて……撃たれて死んだんだ。
前世の俺はあの子と違ってただの庶民…それも貧しい方だった。あの子の家の人間はほぼ全てが家柄を重視する傾向があり、当時の俺みたいな貧困層を見下し、ましてや恋仲などは絶対に認めないような連中だった。
あの子だけはそんな思想を良しとせず、俺の家柄など一切気にせず、俺を好きになってくれた。
しかし彼女の親父をはじめとする彼女の家の者ども、彼女のファンクラブ的な集団、同じく上流階級の家柄の連中は俺たちの恋愛を認めなかった。
というより、俺が気に食わなかったと言うべきか。あの子に俺は身分が不釣り合いだ相応しくないだと、そんなふざけた理由で俺を排除しにきた。
最初はそんなに過激なちょっかいではなかった。せいぜい雇われた不良集団に絡まれて暴行されたくらいだった。まぁ十分犯罪レベルのちょっかいだったが。
俺たちの恋愛を裂く行為は月日を追うごとに度合いが過激になっていき、しまいには俺の命を直接消すというところまで踏み入った…。
許せねぇ…!
そんなに家柄や地位が必要で大事なのか?そんなもの関係無しに、俺たちは本気で好き合って愛し合っていたのに。愛に身分なんか関係ねぇだろが?
それなのにあいつらの勝手な下らない家柄思想によって俺はあの子と完全に結ばれることが出来ずに終わった…。
あのクズ親父は、あの子のことを大切に想ってはいたらしい。俺を遠ざけようと…消そうとしたのも、あの子の為だとさ。
ふざけてやがる。本当に大切で愛しているのなら何故彼女の本当の意思を汲み取ろうとしなかった?
あの子は許婚による結婚は嫌だと本気でそう言っていた。しかしあのクソ親父はあの子の意思を最後まで受け入れなかった。あの子を一族の発展の為に無理やり嫁がせようとしたのだ。
あのクズ親父だけじゃねぇ。学校ではモブ男子どもが俺があの子と付き合う資格が無い、相応しくない、不釣り合いだと毎日罵声を浴びせにきた。
奴らのやってきたことは言うなればただの醜くくて感じの悪い妬みに過ぎない。それでも俺にとってはそれが非常に不快だった。
あの子が好きで俺を選んでくれたのにどうして俺が相応しくないなどと蔑まれてちょっかいをかけられなければいけなかったのか?
いつもそうだった。何の取り柄も無い者が高貴な者と付き合うことは許されないという世間のふざけた思想。俺はそれが我慢ならなかった。今も同じ気持ちだ。
不釣り合いとかどうとか、そんなものが恋愛に関係あるのかよ?
恋愛に家柄とか身分とか、勉強あるいはスポーツの成績なんか関係ねーだろ?そいつの人柄こそが、大事だろーが!?
それを全く分かっていない、理解しようともしない有象無象どもが許せない。許してはいけない……排除すべきだ。
決めたぞ。
この新しい人生でも俺は恋愛をしてやる。あの子のような女の子とまた恋愛するんだ。
で、その時にまたアンチどもが俺にあるいは恋人にやっかみやちょっかいをかけてくるようなら………
今度は完膚なきまでぶっ
こうして俺は、神屋秀清の記憶を取り戻した吾妻秀征としてこの人生を歩むことになった。
今度はこちらも遠慮や容赦などしない。俺の恋愛に難癖をつけてくる奴ら、嫉妬から繰り出す嫌がらせをしてくる奴ら、排除しようと暴力を振るってくる奴ら…全て返り討ちにしてやる。
殺そうとするのなら、俺が殺してやる。
今度は誰にも俺の恋の邪魔はさせない!!!
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