俺の恋愛を妬んで邪魔するアンチどもをぶっ◯すマンが俺って話

カイガ

プロローグ


 199×年。季節は夏、ある日の真夜中のことであった。


 パァン…!


 広い空き地にの乾いた銃声音が鳴り響く。その音と同時に、赤黒い血が宙を舞っていた。


 「が……ぁ」

 「秀清さん、秀清さん!!いや、そんな……いやあああああ……っ!!」

 

 撃たれた男……神屋秀清(かみやしゅうせい)は、ロクに声を出すこともできないまま地面に倒れ込む。その彼の名を呼んで悲鳴を上げながら彼に駆けつけたのは、白黒の高級ドレスを着ている茶髪ロングの少女だ。

 その見た目は如何にも身分の高いご令嬢と言えるもの。事実彼女は、貴族の娘である。


 「ああ、血が…止まらない。そんな、こんなのって……!」

 

 撃たれた箇所の腹に自身のハンカチ、さらにはドレスの一部をちぎって布代わりとして使って止血を試みるも、尋常ではない出血の量に少女は絶望した。


 「ふん。下賤な者の分際で我が娘を誑かしおって。もっと早くこうすれば良かったのだ…」


 腹から夥しい血を流して死にかけている秀清と絶望に打ちのめされて涙を流している少女に、冷たい声がかかる。

 二人のすぐ側には、拳銃を握っている強面の中年男性がいる。銃口からまだ煙が出ているからして、彼が秀征を撃ったに違いない。

 

 「お父様…!どうして、どうして秀清さんを!この人はお父様たちが思うような悪い人ではないとあれ程言ったはず!私は秀清さんを本気で慕って、愛を誓っていたのに!どうしてですか!?」


 少女は秀清の頭を膝に乗せて腹に布類を当てながら、拳銃を持っている中年男性…少女の父親を涙目で睨みつけて怒りの声を上げる。


 「何度も言ったはずだ。お前にはあの有名財閥の御曹司という許婚と結婚することになってると。身分に相応しい者と結ばれることは当たり前だというのに、よりにもよって庶民…それもその中でも底辺の男に気を許しおって。挙げ句の果てにはその汚い男と結婚を誓うなど…。流石の私も見過ごせるものではない」


 少女の父は冷たい目で冷たい声でそう言い返す。上流階級に位置する自分たちと同じ地位の者しか認めないという旧態依然の思想を持っているこの親は、前から娘と親密関係になっている秀清をあの手この手を使って娘から遠ざける・別れさせようとしていた。

 しかし今日までそれが成功出来なかった彼は、こうして彼を物理的に消すという手段を選び、決行した…。


 「何度でも言うぞ。我が一族に、こんな下級庶民の血など不要だ!お前は我が一族に相応しい者の元へ嫁ぐべきなのだ!

 お前は父である私の言った通りにすれば良いのだ愛娘よ」

 「何が……愛娘、よ。私の大切な人をこんなにしておいて…。私の幸せ。否定しておいて…!

 それよりも早く、治療を!秀清さんを救ってあげて!早く!!」


 少女は助けの声を上げるが、誰も彼女に応える者は現れなかった。ここにいる人間は全て父親の手下・彼の思想に共感している者たちだからだ。

 

 「そんな……!秀清さん、ごめんなさい。私と出会わなければ、こんなことに……貴方を死なせるようなことにはならなかったのに……っ」


 何もかもお終いだと悟った少女は、最後に秀清に謝罪の言葉をかけて、彼の体をギュッと抱きしめながら、秀清の最期を見届けたのであった…。


 神屋秀清。享年18。恋人の家の者たちに、身分が不相応だという歪んだ理由で殺された。

 しかし彼は、死ぬ直前まで愛する人の膝元で…愛する人に看取ってもらえたことを嬉しく思っていたのだった。

 最後は愛する人の側で死ぬことが出来たのは良かったと、死ぬ間際に秀清はそう思ったのであった…。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る