第16話
教室内で
思わず教室を見回す。
休み時間だったために生徒の数は半数ほどだったけど、誰もボクたちのやり取りなんか気にしていないようだった。
別にボクはいじめられたり避けられたりしているわけではない。
ただ単に地味で目立たないだけだ。
そんなボクが誰と話そうと、話題に上がるようなことはないのだろう。
自意識過剰すぎるボクをあざ笑うように目のあった一人の生徒、
「
「わかった。今日も顔出すよ」
そう答えると、かなり離れた場所でクラスメイトと紙くずを投げ合っていた
「なになに~? よろしくやっちゃってるじゃん。な? 俺の言ったとおりだろ」
「近い。顔が近いよ」
昼沢はボクの首に腕をかけて、体重をかけるように寄りかかってきた。
それまで誰も気に留めなかったボクと舞座のやり取りも、昼沢が声を上げた瞬間に視線が集まる。
「比糸さんが手伝ってくれてとっても助かってるんです。本当にヒーローみたいです」
舞座がそう言うと、昼沢はプッと鼻を鳴らして笑い、唾を飛ばす。
「ヒーロー! やったじゃん。ヒーロー! 念願のヒーローだ」
昼沢は小馬鹿にするように、そう声を上げる。
悔しさと、恥ずかしさでやりきれない。
「そうです。比糸さんなら、きっと怪人蜘蛛男も倒してくれると思います」
舞座は、そんな教室内の微妙な空気を気にせずにあくまで善良さを発揮してボクを持ち上げる。
「ははっ。なぁ、聞いた? ヒーローって。すげぇな。いやぁ、ありえないっしょ、ヒーローとか怪人とか」
「あの、昼沢!」
「なぁにぃ?」
ボクが声をかけると、昼沢は粘着質なやる気のない返事をして振り返った。
「前に言ってた、蜘蛛が笑うってどういう意味だ?」
「え? 蜘蛛って笑うの? 雲?」
昼沢は人差し指を天に向けて呆けた顔をする。
「いや、キミが言ってたんだよ。蜘蛛が笑ってるって」
「蜘蛛? 笑う? 知らない。言ってないけど? なにそれ、気持ち悪っ」
昼沢は大げさに肩をすくめて仲の良い男のクラスメイトの方によたよたと向かう。
しかし、途中で理蘭にぶつかり、理蘭は弾き飛ばされる形で床に倒れた。
今まで笑い声をあげていた、昼沢とその友達に緊張が走る。
理蘭は一人で立ち上がり、静かにスカートを叩いて昼沢たちを白目がちの目で一瞥して言う。
「ありえるわ」
それだけ言って立ち去った。
残された昼沢たちは、呆然と立ち尽くしたまま、顔を見合わせる。
「誰、アリエルって。外人?」
間の抜けた表情で昼沢がそう呟いた。
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