100節から105節

100 周組、霜田小鳥

 その食事の間、姉様はまるで子供のようにぽろぽろと、鶯豆を何度も零された。その、姉様に似つかない無様を見て、無理をしなければいいのにと私は思ったが、なにぶん那賀島達との真剣な会話で忙しかったので、そのような瑣末な問題を語っている場合ではなかったし、彼らも気にも止めなかっただろう。机の上に残された豆は、まるで生まれたての獣のように、てらてらと光っていた。

 忙しない食事会によって、私は、霧崎と共に迚野と組むことが決まった。残りの五名――姉様、霊場、霊場、那賀島、沖田――はもう一つの班となる。三人と五人の班になったのは、井戸本達を含めた話し合いの中でそういう戦力バランスの許に作戦を立てていたので、やむなく踏襲したのだ。つまり、もともとの那賀島達と我々の人数バランスである。そして姉様曰く、

「やっぱり、霧崎さんを撃退した迚野さんの腕が一番信用出来るわね。そもそも、よく考えたら、さっきの不意討ちでは彼しか試せていないし。」

 とのことで、姉様がいらっしゃらない方、つまり我々を預ける方に迚野が割り振られ、そして傘を盾として扱うのに最もなれている私が加わることで少人数の不利を少しでも是正しようとの狙いだ。そして、私と相性がいい霧崎を加えての三人である。まあ、最後の一人が霧崎なのについては、そもそも、霊場の片割れだけを加えるのは意味不明という観点からしても当然なのだが。

 班が決まった後、我々は急いで互いの出来ることを確認した。迚野に、霧崎の聖具の癖の強さや私の傘の振るい方などを詳らかに教え、そして、基本的なフォーメーションを考案した。私が前面に立って盾となり、初撃を凌いだ後で霧崎や迚野が飛び出せるようにする。姉様達もそのような話し合いを行われていたが、なにぶん時間が無かったので、そちらの話は聞いていられなかった。慌ただしかったのだ。

「ったく、もう少し時間が欲しいものだよ。」

「仕方ないさ、霧崎、……さん。」

「どうでもいいけれど、何であまねえ様のことは――クソ生意気なことに――呼び捨てにするくせに、私にはそう他人行儀なのよ。」

「物の弾みというか、うん。周の名前を最初に呼んだ時はそういう呼び方が相応しい雰囲気だったけれども、君の時はまた別の雰囲気だったからね。」

「まあ、正直何でもいいよ。どうせ短い付き合いだし。彼方組をっ殺して、井戸本組をはっ倒して、そうしたらアンタらともこの廃校ともおさらばだからね!」

「まだ逸れ、というか残党が何人か残っている筈だけれどもね。」

「何言ってんの迚野? そんな奴ら、餓え死にするしかないでしょ? 私達とは保有ポイントが一桁か二桁違い、だからといって一人きりで私達に挑み掛かるわけに行かないのだからさ。」

「ああ、そうか。成る程。でも、ここまで生き残る残党だよ? 想像以上に手強いかもしれないし、そうしたら僕達に挑み掛かってくるかもしれない。」

「まあ、その時はその時ってことで。でさ、迚野、思い出したんだけれども、そもそも襲撃の時刻を言い出したのは那賀島じゃん。なんでこんなに慌ただしい時刻にしたのさ。」

「あのタイミングでは、こんなに色々な事前準備を行う必要に駆られると思わなかったから仕方ないさ。」

 二人の会話に、私がここで割り込んだ。

「今からでも井戸本達に聯絡して、多少遅らせられないものだろうかな。」

 迚野がすぐに返してくる。

「霜田さん。例えば、『何で?』と井戸本に訊かれたらどうするの? 周は、出来る限りこの僕達の聯合を知られたくないと言っているのだけれども。」

「そういう、英語の所有限定詞の直訳のような、非日本語的言いまわしは止めてくれ。むず痒いし畏れ多い。」

「失礼。でも、とにかくどうするのさ、もしも――というか、そうなるに決まっているけれどもね――遅延の理由を問い質されたら。いいかい、僕達は、井戸本達の親友でも何でもない。仕方がなく、危ない橋を渡りつつ協力し合っている仲に過ぎない。そんな彼らに対して、不誠実な説明をするのは、あまりに危なっかしいよ。」

 言い返す言葉が無くなった私は、仕方がなく頷いた。そしてふと気が付くと、向こうでも姉様と那賀島、そして沖田が何やら話しあっているようだ。そして姉様が軽く肩を竦めてからくるりと翻ったので、向こうでも那賀島達が言い勝ったことが知れた。成る程、これくらいの論理力があってこそ、あれ程の寡人数でも那賀島達は生き残れてきたのだろう。


 結局、あっという間にのべ三時間は過ぎ去った。

「では、必ず生きてまた会いましょう。霜田さん、霧崎さん、そして、迚野さん。」

 所定の位置がやや遠い姉様は、それだけ言うと、那賀島等と共に先立っていかれる。

「しかしここに居ても仕方がない、もう僕達も出ようか。」

 迚野の提案に私と霧崎は肯んじ、己がじしの聖具の状態を確認して教室を発った。この男、迚野良人の戦いぶりを、私は直接見たことがない。霧崎曰く大した男のようだが、実際はどうなのだろうか。勿論、霧崎相手に生き延び、そして、周姉様に認めさせた以上大した奴に決まっているのだが、しかし、私の命、というか我々の命運が懸かっている以上、些かの不安も覚える。まあ、今更四の五の言っても仕方有るまい、もしもこの男が情けなければ、私と霧崎で何とかするしかないだろう。そうだな、一人だな、一人くらい仕留めれば我々三人の成果としては上出来だろう。そうすれば、姉様達と井戸本達で残る彼方組三人を斃して、それで終わりなのだから。

 緊張しながら、我々三人は打ち合わせ通り私を先頭にして、無言で廊下を進む。その後元の棟を出、埃のように野暮ったい灰雲の下を歩み、目的の棟、彼方組の本拠地が存在する建屋にやって来た。少なくとも、カンナリンコがここに居る。そしてもしかすれば、兇悪この上ない聖具を携えた銃手達もここに居るのだ。私は緊張しながらその棟に一歩足を踏み入れた。当然ながら、それだけでは何も起こらない。しかし、まるで違う世界、例えば地獄の一丁目にでも迷い込んでしまったかのような感触を覚える。何故だろう。何故今日の私はこれほどまで、……いるのだ? 後ろに居るのが姉様でないからか? それとも、この上なく厳しい戦いに身を投じつつあることを、いや、ある種既に投じてしまったことを認識しているからか? 分からないが、とにかく、迚野にそんな朧げな背中を見せるわけにも行かないので、私は懸命に肩や背中に力を込めて、空々しい逞しさを演じることを余儀なくされたのだった。

 幾度か角を曲がった末に、階段が見えてくる。あれだ、あれを登った先の二階に、奴らの本拠地と、すなわちカンナの寝床があるのだ。今彼女が寝ているのかどうかは知らないが、どちらでも構わない。何せ、戦闘能力を持たないと専らの評判なのだからな。

「――!」


 突然、聞こえた。何かを砕くような音と、あまりに簡素すぎる呻き声。


 ……おかしいな、何故私は今、などという印象を得たのだろう。転んだ程度での原因であれば、むしろ、十分すぎるくらいに痛ましかったのに。訝った私は、後ろに回していた左手の違和感に気が付き、それを顔の前に持ってきた。赤い。べたべたしている。鉄の臭いがする。

 私は振り返った、何だ、何が起きた、一体、どうしたのだ、見ると、霧崎が、斃れている、姉様以上に生理学に疎い私ですら分かる、死んでいる、ぴくりともせず、突っ伏した、真っ赤な顔から、虚ろな瞳が、こちらを、見ている、生気は、ない、なんだ、これは、どうした、そうだ、迚野は、あいつは、どうなった、のだ、

 地べたの霧崎の頭から、迚野の頭のある筈のあたりまで、切り上げられた刃の切っ先のように視線を移動させた私は、しかし彼の顔を見ることは出来なかった。迚野の振り下ろす刃が、聖具が、私の視線移動と打ちあったからだ。私の視線の方はそこで折れ、目を見開くことになったが、しかし、迚野の聖具は止まらない。振り下ろされてくる。私は絶叫しながら自分の傘、広げてあるそれを持ち上げ、その兇撃に対しぶつけた。

 弾けろ! 私がそう願ったのが功を奏したのかどうかは分からないが、とにかく、霧崎の聖具に匹敵する筈の迚野の聖具は、箒は、私の黄色い傘を柄で打ち据えるに留まり、その幕を切り裂くことも骨を折ることもなかった。迚野の箒が、ゴムで縛められていたかのように向こうの方へ引き戻される間を盗んで、私は、思い切り後ろへ、跳ぶように後ずさる。そして口を開いた。

「貴様、何を考えている、」

 窓硝子を割らんとしたほどの声量、しかし、誰も聞く耳は持たなかった。今や私の世界には霧崎と迚野しか居らず、霧崎はいつものようにまともに話を聞いていなかったし、迚野は、その顔を微塵も乱さなかったのだ。満面の殺意を湛えているくせに、家にでも忘れてきたのか敵意と悪意を同居させることを怠って、代わりにそこらにあった憂いと苦悩を申し訳程度に捻じ込んだかのような、不気味な親しみやすさを孕んだ、しかし間違いなく私を殺そうとしている顔、私は顫えた。

 迚野が飛び込んでくる。その右手の聖具が舞い、大味ながらしかし力強い軌道を持って、私の身を求めてやはり飛び込んでくる。私は、また、傘を必死に差し向けて、その攻撃を凌いだ。しかし、迚野の手は止まらない。二撃、三撃と、箒が私の傘を打ち据える。私の手も、傘も、同じように骨が軋んだ。このままでは。なんとかこちらからもしなければ。しかし、

 その私の逡巡を盗んだか、突然迚野の左手が閃いた。直前の攻撃によって無理な角度にされていた私の傘は、その、鋭い啄ばみのような塵取りの一撃により、とうとう手から弾かれ、宙を舞う。自身の一部が切り飛ばされたかのように思えた私は、その傘の行方を必死に目で追った。それはふわりと舞い、ゆっくりと地上に着地して、ころころと転がる。その後、床についた持ち手を軸として、もじもじするように少し揺れ、止まった。視界の内の全ての静止。

 私は、しばらく経ってから前を向く。そこでは迚野が、相変わらずあの気味の悪い表情のまま佇んでいて、しかし、私と目が合うや否や、そこに明らかな遺憾と憐憫を忍ばせた。彼は両手に聖具を尋常に携えており、私は、まるで普通の女学生のように空手である。いや、これで良いんじゃないのか? だって、屋根のある校舎内で傘を広げるだなんてまともじゃない。そうだ、彼が持っているのは清掃道具、いかにも廊下に似つかわしい品ではないか。何も問題はない。これでいいのだ。

 私がつい顔を綻ばせると、迚野の表情の不純物が露骨に強まった。

「さようなら、霜田さん。」


 それが振り上がって、振り下ろされた。私はいつか見た、二輪の花弁を捧げた百合の姿を思い起こす。二つの可憐な花が、まるで互いの訣別を表明するかのようにそっぽをむいて撓垂れていた。今の私もそうだった。左肩から腰に切り裂かれたことによって、右肩の方と、左肩の方とが、それぞれ、まるで頭の取り合いで仲違いしたかのように、勝手な方向へ裂けていき、頭を勝ち取った右肩の方を讃えるように、私の身はそちらへ倒れて、そして、終わった。最後に覚えた印象、右手と左手が遠すぎる感覚は新鮮であった


101 井戸本組、絵幡蛍子

 今我々は三つの班に分かれている。まず、綾戸は単独行動を取ることになっていた。銅座戦で得た教訓と、奴が漏らした言葉から、彼女の音撃が彼方組の銃手に効き辛いことが判明しているので、彼女は容赦の無い威力での音撃を放たないといけないことになっている。しかし、それでは彼女自身や同行者の耳が持たない。そこで綾戸は自分の耳を、栓をすることで守ることにし、そして、そうやって意志疎通が困難になる以上は独り身で行動することとなったのだ。勿論、一人であることは鑑みられており、彼女は比較的危険性や脅威の少ない場所に配置されている。

 そして綱島と緩鹿は、いつも通りの二人組での行動だ。味方に気を遣わないで済む方が、少なくとも綱島にとっては望ましいだろう。彼らはその実力を買われて、そこそこに厳しそうな場所を宛てがわれた。綱島達ならば切り抜けてくれると思うのだが、しかし、どうだろうか。

 最後に我々本隊、というか、残りを併せたらこうなったというか、まあ、そんなところだ。井戸本様にいつも通り続橋と縄手が付き従い、綾戸に伴えなくなった私を加えての四人。

 井戸本様と共に戦う、転がり込んできたような話とは言え誉れ高いことだが、しかし、思ったより私の気分は明るくなかった。厳しい戦いに臨むから、というだけではない。恐らく私は、綾戸がいないことをどこかで不満に思っているのだろう。綾戸彩子、私をこれまで導き、何度も死地から生還させてくれた、松明であり、燈台であり、太陽であった。そう、彼女の放つ光こそが、

「何だろうかね。」

 井戸本様の声が聞こえたので、私の大仰な思考は差し止められた。続橋や縄手を差し置いてたまたま一番近くに居た私が、井戸本様と同じような潜め声で言葉を返す。まともな会話を行うには、すでに彼方組へ近すぎるのだ。

「何か心配事でも?」

「先程から、妙に騒がしいのだ。」

 私は指摘されて耳に意識を集中した。成る程、確かに注意すると、穏やかでない気配を感じることが出来る。

 私は一歩踏み出て、きょろきょろと見回した。私の後ろに井戸本様、前に縄手と続橋がいる。そして、その、互いに小声で話しあっている彼ら二人の肩の間から、向こうを見やると、

「伏せて!」

 私は、二人を押しのけるようにして、いや、事実押しのけて前に飛び出、聖具を構えた。その刹那、まず大きな音が鳴り、そして私の聖具に凄まじい衝撃が走り、私は続橋を巻き込みながら後ろへ倒れ込む。いや、続橋に激突したことで、いつかのように吹き飛ばされずに済んだと言った方が正しいかもしれない。

 床と私の体とでサンドウィッチにされた続橋の情けない呻き声を聞いて申し訳なさを覚える頃には、私は気が付いていた。彼方組の銃手がこちらの様子を窺っていて、私がそれを知るとほぼ同時に攻撃してきたこと、そして、今、縄手が居なくなっていることをとだ。

 悲鳴が聞こえた。前方、そこまで遠くない。聞きなれない声質であることが私を安心させる。聖具を退かしてそちらを眺めると、地面に転がる、恐らくは凄惨なことになった死体と、佇む縄手の姿があった。彼女は、その銃手を仕留めたらしい自らの聖具、裁ち鋏を分解して二本のダガーのようにしたそれに纏る血を、舌で、……舌で!?

 彼女は両手にそれぞれの聖具を提げ、歩み戻ってきながら言った。

「まず一人仕留めました。井戸本様。」

「素晴らしい。流石だ、縄手君。」

 彼女の表情には、力みも誉れも一切なかった。縄手は、あのいきなりの襲撃に対しても迅速に行動し、すなわち、その銃手が一撃を見舞って、次弾発射の準備が整うまでは無防備であることを即座に把握、というよりは覚悟し、その許まで迷いなく駈け込んだのだ。そして、それをやってのけたことを、少しも自慢に思っていないように見える。縄手にとっては当たり前のことなのか。私は、彼女が拵えた死体を眺めた。とても小さく見える。あの距離を、一瞬で駈けたのか、息を切らしもせずに。流石であった。流石、井戸本様に認められた者のことはある。――血を舐め啜ったのには酷く驚かされたが。

 彼女は私を見下ろして言った。

「ねえ、いい加減、続橋から退いてあげたら?」

 私は、こう言われてようやくおずおずと五十五キロの身を起こし、続橋を解放した。今まで呆然としてしまっていたのだ。冷静になると、全身が軋むように痛みだす。

 起き上がった私と続橋を見ながら、彼女は、

「しかしまあ、絵幡、よくやってくれたわよ。あなたが気が付いてくれなかったら、そしてあなたが躊躇なく飛び出してくれなかったら、今頃どうなっていたか、」

 そのいかにもな枕詞により、縄手から感謝の言葉がかけられ、そしてそれを追うようにして井戸本様からも少しはお褒め頂けるだろうかと、私は一瞬の内に期待したが、しかし、その期待は一瞬の内に裏切られた。縄手の顔が私の胸に飛び込んできて、泣きじゃくる綾戸の如くそこをしとどに濡らしたのだ。しかし、綾戸の時とはやはり違う。つまり、縄手の胸から上と下が分離して、その頭がついている方が、私の胸へ飛び込んできて、そこを真っ赤に、

 私は、そして恐らく三人ともが、周囲を見回し、そして、続橋が叫んだ。

「あそこだ!」

 既に駈け出している続橋の肩と無限に続くかとも思われる廊下の壁との隙間から垣間見えるは、密偵の如くこちらを覗いている、背の高くない男の顔と、そして、その手に握られている銃器。私も、盾となるべく続橋を追い抜こうと駈け始めようとしたが、

「待て二人とも、戻れ!」

 私はすぐに、そして続橋もしばらくしてその言葉に従った。密偵の姿が廊下の角に消え、そしていつまでたっても現れないからだ。どうやら続橋に戦いて逃げたらしい。

 井戸本様が壁に張り付いて、私と続橋が囲むように立つ。私は左手側を守ることになったことを後悔した。いや、二度ともそちらから銃撃が来たのだから、盾を持つ私がそちらに立つのは理にかなうのだが、しかし、ここから周囲を警戒しようとすると、どうしても視界に、さっき私が投げ捨ててしまった縄手の頭の辺りと、そして、残りの部分が、

「まず落ち着くのだ。状況を整理せねばならない。我々は彼方組に対する共同戦線の方針に従ってここに来て待ち構えていたが、どうやらこちらが動く前に彼方組に察せられてしまったらしい。気を緩めれば、また誰かが命を落とすことになるだろう。慎重に動かねば。特に、周や那賀島達がここに到達して、的が増えるまでの間はな。」

 私はようやく、状況に相応しい慄然を覚え始めることが出来ていた。このフロアに、彼方組の銃手が最大あと三人居る。いや、一人目と二人目の襲撃の間隔が近すぎることを考えれば、きっと奴らの間で聯絡が行われている筈で、それはつまり、奴らのここへの集結を意味するのかもしれない。もしそうならば、確実にあと三人居る。我々は鉄穴の元に辿り着けるか? 我々は生き残れるか? そして、綾戸は、


102 葦原組、躑躅森馨之助

 ……妙に騒がしいな。下階でドンパチでも起きていやがるのだろうか。ここは安全な筈だが、用心するか。


103 彼方組、鉄穴凛子

 色々な音がする。怒声が聞こえる。怖い。怖い。皆、早く帰ってきて。


104 逸れ、簑毛圭人

「騒がしいね。」

「うん。……どうしよう、圭人君。逃げた方が良いのかな。」

「幸いここは一階だ。窓からいつでも逃げられる。もう少し様子を見よう。動くだけでも危険かもしれないし、こんな天気の中に出て体力を消耗したくない。」

「そうだね。じっとしてるうちに危機が過ぎてくれればそれに越したことはないしね。」


105 欠番

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