第33話
投票が始まった。
クラスの一人ひとりに紙が配られ、それに
紙が配られた時は「誰にする?」などという雑談も聞こえたが、しばらくして皆一様に黙って記入をして箱のなかに投じていった。
クラスに居る者全員が投票すると、すぐに開票の流れとなり、名前が読み上げられた。
甘噛魔。
ドクター・クラスメイト。
末洞。
そして
黒板に書かれたその名前に、正の字が書かれていく。
「待ってください。私は立候補は……」
「十文字こそが学級委員長に相応しいと思ったやつがいるんだ。その思いを無碍にすることはないよ」
ボクは十文字の手を引き教壇に連れてきた。
甘噛魔は十文字をじっと見据える。
十文字は伏し目がちに怯えるように甘噛魔から距離をとり、メガネの位置を直す。
そこを甘噛魔は忍者特有の素早さで一瞬にして詰め寄る。
そして十文字の手をとった。
十文字が顔を上げる。
「待ってたぞよ」
甘噛魔と十文字の手の上に、涙のしずくが落ちた。
感動的な場面に、思わずボクも十文字の手を取ろうとした。
すると甘噛魔が十文字の手を引いて教壇の端まで退いた。
「気をつけないと
「人を病原菌みたいに言わないでくれ」
そうしてる間にも、名前は読み上げられ続けていた。
拳を握りしめる。
末洞の頬を汗が伝う。
甘噛魔が目を閉じて唇を強く閉じる。
十文字は口元をハンカチで抑えながら心配そうな目で見守っている。
そして、票が決した。
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