第11話
殺人サイボーグだという秘密を。
周りの反応は、焔明の言葉よりも、熱さにのたうち回る
その中で唯一人、
「ひょっとして……。殺人サイボーグというのは、第九次暗黒戦争の時のサイボーグ戦士のことでは?」
馬鹿な女だと思っていたが、この花火音は事情がわかっているらしい。
「それはマンガの話ですか? 今はそんな話をしている場合ではありません」
花火音が両肩をすくめて大きくため息を吐いて語りだした。
「やれやれ、そこからですか。知らないのも当然です。人知れず闇の業界の中で行われた巨大抗争だからです。今こうして世界があるのも、その戦いのおかげなんですよ。そしてその戦いを最後に忍者は消えたと言われてるんです」
「どうしたんですか、クリスさん。突然感じが悪くなりましたけど」
伊織が尋ねると涼数寄が横から答えた。
「花火音さんは説明に入るとこうなってしまうんです」
伊織は眉を下げて唇を尖らせる。
「冗談を言うのでしたら僕はつきあっていられません。忍者というのも怪しいのに。いいですか? 確かにペアボクシングの起源が神代の昔にあるという話はファンタジックに聞こえるかもしれませんが、そういったふざけた話と一緒にしないでください。神話に謳われたペアボクシングの伝承は事実なんです」
感情を露わにして諌める伊織に
「伊織先生、クリスさんは本物の忍者。いえ、本物の忍者見習いですわ」
「子蜂がそう言うのでしたら、聞くだけは聞くきますが」
花火音は鹿鳴院の顔を見てゆっくりと頷く。
そしてひときわ低い声で、やや自慢げな表情で説明を始めた。
「一般人が知らないのは当然のことです。決して恥ずかしいことじゃありませんよ。殺人サイボーグということはつまり、焔明さんは第九次暗黒戦争で最も凄惨な戦いをし、宇宙の歴史上最も多くの命をその手で奪った、絶対零度のサイボーグなんです!」
「違う! 俺は絶対零度のサイボーグなんかじゃない!」
焔明は叫びとともに、右足を大きく踏みしめた。
床板に穴が空き、テーブルが傾き、皿がすべて涼数寄に向かって落ちた。
「
涼数寄がのたうち回って、また鹿鳴院と伊織が意識をそちらに持っていかれた。
「あ。違うみたいです。人違いでした」
花火音はペロリと舌を出して首を傾げた。
伊織は長いため息を吐き、呆れたように言う。
「これだけの深刻な空気を無理やり作り出しておいて人違いってことがありますか。なんだったのですか今の無駄に多い情報量は」
「本人が違うっていうんだから違うんじゃないですか。あたしに言わないでくださいよ。殺人サイボーグなんて言われたら誰だって絶対零度のサイボーグを思い浮かべるに決まってます!」
不機嫌そうに頬を膨らませて花火音は言った。
彼女の言葉は焔明を突き刺す鋭いサーベルだ。
その切っ先の痛みに耐えかねて焔明は打ち明けるしか無かった。
「その通りだ。誰に聞いても絶対零度のサイボーグと答えるだろう。知る者はいない、その絶対零度のサイボーグに対抗するために作られた灼熱業火のサイボーグがいたことなど。戦線に投入される前に第九次暗黒大戦は終結し、戦うために造られたこの俺は戦う場所を失ったんだ」
「つまり、絶対零度のサイボーグと同等の力を持つってことですか?」
花火音の疑問に焔明は力強く即答する。
「スペックは俺の方が上だ!」
鹿鳴院が落ちた皿を片付けながら顔も上げずに言った。
「
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