第18話 なんて理不尽な


 さっきとは打って変わって、やけに高圧的に話してくる中年男性。


 仕事でストレスでも溜まってるんだろうか?


 そういえば微妙に前髪が後退を始めてる気がするが、本社勤めも楽じゃないんだろうな。


 なんてことは口に出さず、俺は誇らしげに胸を張って答える。


「そりゃあ勿論、冒険者パーティから追放された者たちを集めるギルドだからですよ! ステータスが低いからって追放された冒険者の多くは、特殊な能力を持ってるんです。俺は彼らが役立たずなんかじゃないって証明したい。実際、俺がスカウトしたヴィリーネって子は凄いんですよ!」


 自慢じゃないが、初めてスカウトしたにしてはヴィリーネは実に優秀な団員だと思う。


 【第6超感】が強力なのもあるけど、性格も素直で向上心もあるし、根性も十分だ。


 彼女は凄い冒険者になると思うよ。


 あの子を仲間にできたのは、我ながら鼻が高い。


 うんうん、と内心で頷く俺とは対照的に――中年男性は「はぁ~……」と深いため息を吐く。


「……もういい、入会金はいらんからさっさと帰ってくれ。相手するのもバカバカしい」


「はぁ!? ど、どうしてだよ! ギルド設立は、申請書を出せば誰でも通るんじゃないのか!?」


「あのなぁ、このご時世でステータスの低い追放者なんか集めて、マトモなギルド運営なんてできるワケないだろ? 申請が通るのは、ギルドマスターの人格に問題のなかった場合の話だ。どう考えても破滅するギルドを創るような頭のおかしい奴の相手なんて、こっちもしてられないんだよ」


「俺の頭はおかしくなんてない! 現実に、追放者のヴィリーネは成果を残してる! 嘘だと思うなら問い合わせて――!」


「しつこい男だな、これ以上付き合わせるなら警備を呼ぶぞ! 営業妨害で豚箱にぶち込まれたいのか!? あぁ!?」


 中年男性は付き合い切れないとばかりに、もの凄い剣幕で俺を追い払おうとする。


 なんて理不尽な――


 俺は営業妨害なんてするつもりはないし、ただ申請を通してくれれば文句なんてないのに……


 しかし、冒険者ギルド連盟の本社まで来て豚箱に入れられたのでは堪らない。


 今後の活動にも明らかに支障が出るし、『追放者ギルド』の評価云々どころの話ではなくなる。


 ここは、大人しく引き下がるしかないのか……


「わ、わかったよ……帰ればいいんだろ……」


「帰れ帰れ、この異常者め。まったく、ただでさえ狼藉者の相手ばかりで疲れるというのに……最近の冒険者は、人様の時間をなんだと思っとるのか……ブツブツ」


 ドカッと受付の椅子に座り込み、文句と罵倒の独り言を呟き始める中年男性。


 もはやこっちの相手をする気など微塵もない感じだ。


 俺は仕方なく受付を離れ、入ってきた入り口から外へ出た。

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