第19話
バクヒロのもとにスーパーヒーローショー製作委員会から連絡が入った。
戦闘予定時刻と戦闘区域の地図が送られてきた。
本来は機密情報ではあるはずだが、ネットにはその手の速報ページもあったりする。
こうして自分が管理する側に回ると、今までありがたがっていた情報サイトも誰かが情報を流出させてるのか不安になる。
ライブのため時間通りに事が運ばないというハプニングも極希にあるけど、ほとんどの場合はきちんと戦闘が開始する。
バクヒロはスーパーヒーローではないが、関係者として参加できるわけで、一般人と違う優越感もある。
ただそこにある高揚感は、関係者として責任を持たなければならないというプレッシャーと一緒に混ざり合っている。
現れたスーパーヴィランはいつものビンビントリッキィではなかった。
銀髪の巨大なパーマに身体に布を巻きつけただけに見えるザックリとしたコスチューム。
筋肉質な長身で80年代のグラムロックのようなメイクをしている。
胸には前掛けのような装置をつけていて、そこからスピーカーのように大声が拡声されていた。
「この痛みをわかちあうとき、人は大きくなれる。悲しみを、絶望を受け入れるのです」
空気を振動させるようなバリトンボイスで高らかに演説をする。
スピーカーから出ているのは、音だけではないらしく振動で周囲の建物や道路にヒビが入る。
自らも瓦礫の埃を浴びながら、それでもスーパーヴィランは演説と破壊をやめない。
避難が遅れ戦闘区域でもたついていた人々の盾になるように、二人は舞い降りた。
「そこまでですわ!」
「やかましいったらありゃしないわ」
白と赤、二人のフローラルキティンが飛び出す。
「何者なのよ」
お決まりのスーパーヴィランのセリフだ。
ここから格好いい名乗りが始まる。
「フローラルキティン・ルージュ」
「フローラルキティン・ブラン」
二人は先を争うように名乗りをあげた。
そのせいで声がかぶってよくわからないことになっていた。
練習した時はうまくいってたのに。
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