配信者の集い (ラブコメクロスオーバー)
春嵐
雑談配信「はつかおあわせ」
「どう。見えてる?」
「いや、分かんない」
『はいどうも』
『こんにちは』
「あっ、あっあの、こんにちは」
『はっ』
「あっ」
『同じ匂いがするっ』
「同種だっ」
「えっうそ、ライオンが二匹?」
『すっぱだかが二人』
配信スタート。カウントダウン。
3。
2。
1。
『あ、はい。私から自己紹介。すっぱだか姐さんです。よろしく。立ち絵は一番左っ』
『消えです。よろしくおねがいします。立ち絵は真ん中です』
「えと。百戦錬磨のライオン発電所こと、ライオンです。ライブ配信は初めてで、自分の立ち絵がどこにいるのかもまだ分かりません」
テキストで失礼します。ライオンの餌こと、ひとです。立ち絵を描いたのは私です。
『えっうそ、立ち絵はヒトさん描いたの?』
『上手です』
ありがとうございます。ちなみに立ち絵は動かせます。
『うわほんとだ。すごいっ』
みなさんの反応に合わせて動かしていきたいと思います。
「あ、あの。これ。本当に顔は隠れてるんですか?」
『隠れてますね』
『隠れてます』
「わたしからは、その、おふたかたの顔が、しっかりと見えているのですが、これは、そういう仕組みですか?」
そういう仕組みっぽいですね。わたしが作ったものではないので、よく分からないです。
「あの、すっぱ、ええと、姐さん?」
『姐さんとお呼び』
「姐さんはなぜその、はだ、ええと、ずいぶんと涼しい服装をしておられますが」
『これね。涼しいのよ』
立ち絵と同じ、肩が紐で繋がっている服を着ておられます。
『いつもの服ですね』
「消えさんのほうは」
この雑音は、消えさんのほうから出ています。上着を脱いでいるようです。
『普通にパジャマです』
「ぱじゃま」
うちの肉食動物だけ、メイクしてばりばり着込んでます。
「わたしだけ、なんかすごい場違い感」
『緊張が伝わってきますね』
『落ち着け。まずは上着を脱ぐんだ』
この雑音は、うちの肉食動物が毛皮を脱いでいる音です。
「はい脱ぎましたっ。おまたせしましたっ」
『かわいい』
『かわいい』
「ありがとうございます」
早速ですが、現在進行形でいただいているコメントを取り上げようと思います。今回は雑談枠なので、今のところゲームなどの配信は予定しておりません。
『唐突にゲームするフラグ立ったな今』
まず、多いのが、姐さんと消えさんは知っているけど、ライオンは知らないというコメント。同じく、ライオンを知ってるから来たけど姐さんと消えさんを知らないというのも多いですね。
『視聴者層違うんかね?』
「消えさんと姐さんのファンのかた、お初にお目にかかります。私はですね、録画をアップロードするタイプの配信者でして、ライブ配信は初で、緊張、しております」
緊張するフリやめろ、ライオンの怯える芝居へたくそ、等のコメントが行き交っております。
「ほんとに緊張してるんだってば」
主に何を配信してるか、という質問が来てます。
「主に。映画の感想とか、対戦ゲームとかの録画配信をしています。ネタバレをしない程度にしていますので、対戦ゲームは配信しやすくって」
編集とアップロードは、ひとが担当しております。
『あ、ヒトさんがやってんだあれ』
『編集凝ってますよね』
だいたい録画時間と同時並行で編集していってるので、あまり凝ったことはしてないと思います。
『うっそ、まじで。同時並行?』
『いちばんすごいのは、ひとさんかもしれない』
「お二方は?」
『姐さんは基本的に乙女ゲーとイケメンゲーを周回してますよお。たまに、ばかでもできるシリーズと称して全年齢対象のばかゲーに挑戦してたりもするけど』
『わたしは最近、RPGをゆったりプレイしています。なんでもやります』
「あれ」
『どうしました?』
「このまえ、なんかこわいゾンビゲームやってたような」
『あ、コラボ配信のときの』
『こわいゾンビゲームもたのしくプレイします。コラボ配信で姐さんがびびりまくってたので、残りのストーリーをこちらで続けてました』
姐さんの絶叫で鼓膜が破壊されました、という被害報告が多数寄せられています。
『音割れ姐さん』
『こわいんだもん。ライオンちゃんはどうなのよ。こわいゾンビゲーム』
「ゾンビゲーム。あんまり記憶にないような」
ひとによると、ライオンは映画をたくさん見ている影響で、ゾンビゲームを始めるとほとんど映画の話とかオマージュとかの説明が入ってます。ずっとしゃべってます。
『へえ』
『へえ』
「そうかも。ずっと映画の話とかしてるかも」
全部カットされてます。対戦シーンのみが動画になってます。
『ええ、もったいないなあ』
『あ。これは。もしかして』
「え?」
消えちゃん鋭い、というコメントと共に、ゾンビゲームやってというコメントが多数。
「え、うそ。ゾンビゲームやるの?」
ゾンビバトルⅢ、というタイトルが挙げられていますが。
『あ、コラボ配信のゲーム』
『ライオンちゃん、持ってる?』
「持って、ないですね」
買って、インストールしますか?
『いいね』
『フラグ回収』
「じゃ、おねがい」
わかりました。インストールします。どうしますか。一回お休みにしますか。それとも雑談続けますか。
『消えちゃん』
『十分休憩がいいと思います』
「では、十分休憩です。十分後に会いましょう」
配信画面止めます。
「はい画面止まりました」
「うっわあああ、きんちょうしたああああ」
『の割りに、めちゃくちゃ喋れてるじゃん』
『さすが百戦錬磨』
「いやあ、おふたりのおかげです。なんとか回せた」
「音声、大丈夫ですか?」
『ばっちり大丈夫』
『明瞭です』
「よかった。調整もこちらでやるので、お気軽に音量調整あったら言ってください」
『ヒトが有能すぎる』
『ライオンさん、おむね、大丈夫ですか?』
「え、胸?」
「あ、そっか。緊張して」
「やだ。はずかしい。下着替えてきます」
『胸、ぱっつんぱっつんになってたな』
「うちのライオンは、心拍数に応じて胸部装甲の厚みが変わるので」
『胸部装甲』
『かわいい』
「おまたせしましたっ」
『おっ。おおきなおっぱ』
『姐さん。おとこのひといるよ』
「あ、大丈夫です。うちのひとは下ネタ強いんで」
「強いかなあ」
『これは失礼しました。姐さん、言っていいって』
「おっぱ」
配信スタート。カウントダウン。
「ちょ、おまっ、待っ」
3。
2。
1。
『おっぱ』
『どうも。十分ぶりにおみみとおめめにかかります。消えです』
「緊張しすぎてどきがむねむねしてます。ライオン動物園こと、ライオンです」
テキストで失礼します。ライオンの飼育員こと、ひとです。
『え、なにそれ。毎回変わるの、自己紹介のやつ』
「雰囲気で」
雰囲気ですね。
『すごっ』
『姐さん。自己紹介』
『姐さんですっ』
ええと、ここでお伝えしなければならないことが、ひとつ、あります。
『おっ』
『おっ』
「お?」
ゾンビバトルⅢ。インストールまで、三十分以上かかります。
『えっ』
『なぜ』
休憩時間の十分で、どうやら購入とダウンロードが殺到したらしく、現在お時間がかかるとのことです。
『ライオンのせいだっ』
「えっわたし」
公式から、配信にお使いいただきありがとうございます、ぜひともたのしんでください、というメッセージが届きました。
『うわあ。もうあとに引けない』
『どうするよ?』
「三十分後にやるのは、対戦モードですよね?」
『そうなるね』
『だと思います』
「じゃ、お二人のコラボ配信眺めて待つ、っていうのは、どうですか?」
『うえっ、まじかっ』
賛成のコメント多数。鼓膜破損注意のコメントも多数。
『わるかったって。すまんて』
音量はこちらで調整します。
「よろしいですか?」
『よろしいです』
『構わぬ』
では、動画流します。立ち絵の上に被せますので、お二人ともそのままでおねがいします。
「まさか動画の振り返り配信になるとは」
はい。いきます。
3。
2。
1。
配信者の集い (ラブコメクロスオーバー) 春嵐 @aiot3110
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