第18話 言えなかった17歳
私は昔から、女のくせに口より手のほうが早くって
よくそれを親にも彼にも怒られてたっけ。
誰かが止めに来たような気がするけどそのあたりの記憶もまた曖昧で覚えがなく。
ただ私は、このバカみたいなオンナのために彼に腹を立てて、こんな結末を招いてしまったという後悔に、その時初めて襲われた。
でも、彼が居なくなったということは実感できないまま。
焼き場にも行って、灰になるのを見た。
ご家族の御厚意で骨も拾わせてもらった。
でも、彼が居ないという現実がうまく呑み込めてない。葬儀場での暴挙に、私に不快感を表す人もいた。相手のオンナに同情する人もいた。
事故は私のせいだったと、話が広まると陰口や中傷が酷く、嫌がらせもあった。自分勝手だと責められもした。
多分、うちの親へも嫌がらせはあったと思う。
唯一の救いだったのが、彼のご家族がその件について一切触れなかったこと。
自分勝手な言い分だけど、それは有難かった。
彼のお家にきちんと謝りに行きたかったけどそれはかなわなかった。
もし、責められても、私には謝る事しかできない。
ご両親に彼を返してあげる事ができない。
心の中でただただ謝り続けた。
本当は、もう関わりたくなかったんだろうけどね。
私は、他人からの嫌がらせなんてどうでもよかった。言われて当然のことをしたのだから仕方ない。
もっと言えばいいと思った。
気持ちが麻痺しているような状態の毎日。
みんな、もっとに好きなことを言えばいい。
ごく数人を残して、私の交友関係は悪化する。
もう、そんなのもどうでもいい。
生ぬるい空気に身体全体が覆われているような
足が地に着いていないような、そんな感覚。
あの時、17歳の私が何を思い、何を感じたか
今の私にはもう解らないけど。何か大きな穴が空いたような、身体が半分無くなったような、そんな感じだったと思う。
自分を責めた。当たり前だ。悪いのは全部自分だから。
ちゃんとあの日に彼の話を聞いてれば。
他の男の子と会う約束なんてしなければ。
ずっと彼と彼の家族に、心の中でごめんなさいを言い続けた。
生きてる時には、言ったことのない言葉。
私は彼の家族にも、彼にもきちんと「ごめんなさい」を言えないまま全てはなくなってしまった。
世界が終わったような気がして、歩く事さえしたくない。時間が勝手に私を運んで行ってくれれば、それでいい。
自分の意思で何かをするという気力が起きない。
何もかもどうしようもなくイヤになった。
実家に居る間、窓を叩かれる夢を何度も見た。
窓を開けると彼が立ってる、そんな夢。
目が覚めると絶望感に襲われて気が狂ったように泣いた。
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