第17話 抜け殻になる17歳

何故か私はその日から実家にいて何をしてたのか覚えていない。仕事に行ってたのか、どうしてたのか。


彼の事故は小さく新聞の記事になった。


『バイクの高校生 ダンプに衝突、死亡』


確か、こんな見出しだったと思う。



同級生の何人かから、電話が来た。

家に来てくれた子もいた。お葬式の連絡も来た。

どう過ごしていたのか、何一つ覚えていない。


そして、私はお葬式に行く。


「彼のお葬式」という実感は全然なかったと思う。

身支度は母親が整えてくれた。

先輩が迎えに来てくれて彼の家に着く。


大勢の人。たくさんの花。不思議な気持ちだった。

それでもそれが「彼のお葬式」だという現実がまだ

理解できてなかったと思う。私は遺影さえ覚えていない。


そこで私は、例の彼らがナンパしたというオンナ達と会った。


ご丁寧にも後輩がわざわざ連れてきたらしい。

自分達が原因で喧嘩別れしたまま、こんな事になって私に謝りたいと言ってるらしいと聞いたけど、

私にはそんな事はどうでもいいんだよ。それなのに。


あの青い爪のオンナが、汚く剥げかけた青いマニキュアのまま、私の側に来て言った。


「ごめんね?でも私、A君とはヤッてないからね?」



悲鳴をあげてオンナが倒れこんだ。スローモーションのようだった。皆が一斉にこっちを見る。


私はそのオンナの横っ面を思いっきり引っ叩いていた。自分の手だけがジンジン痺れて、私はその時初めて「彼がいない」現実を理解できた気がする。


この事を思い出すとき、私はその時のそのオンナの

剥げかけた青いマニキュアしか思い出せない。


どうゆうのか私はそれ以降、剥げかけたマニキュアが許せなくなった。

これは40年近く経った今も変わりません。

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