第8話 素直になれない17歳

そのまましばらく車の中で話をした。

BGMはCAROLからCOOLSへ。

COOLSは2人の合図だ。

私達の喧嘩は、いつも私だけがカッカしてて

彼は「あー、はいはい、で、明日は何時にどこどこね」って感じで、別れるって騒ぐにも関わらず、毎回この調子。

適当にあしらわれてる感が強かったけど、へそ曲がりの私には、彼のその性格だから続いてたんだと思う。


でも、今回はちょっと違ってた。


元々おちゃらけ言うばっかりで、肝心な事は言わず

すぐ話をはぐらかすヤツなのに、今日は至って真剣だ。

最初に、私を原宿に行かせたがった理由をまず聞いた。自分の中ではそれがずっと引っかかっていたから。

その答えに私はまた泣き出しそうになる。

私は家庭環境が相当に複雑で、彼のいる学校に転校したのは私の「素行不良」もあるんだけど、もう家族がそこに居られる状態じゃなくなったからでもある。そんな事情も抱えてた。

そして、うちの親がまたかなり変わった考えの人間で、今じゃとっても考えられないけど「子は親に絶対服従」コレを強いてたから、私は何一つ自由が利かなかった。

原宿に通うのも、親が出したいくつもの条件をクリアしてからやっと行けるようになった状態。


後は、親の目を盗んで遊ぶしかなかったから

家出をしては連れ戻されての繰り返し。

だから、転校当初から相当暗かったし、かなり荒れてた。

日曜日に原宿行くのだけが唯一の楽しみな中学生だった。

彼と付き合いだしてからも、たまに原宿には行ってたから帰ってくる時は、駅までバイクで迎えにきてもらってた。そうゆう時、私はとっても楽しそうに帰ってきたんだそうだ。

でも、家の事情が複雑に複雑を極めだして行動が荒れて、家出を繰り返す。親は余計にがんじがらめにしようとする。

原宿にも行かなくなって、暗い顔してる事が多かった。

それを見てて彼は、また原宿に行けば楽しいかもしれない、地元で荒れてるよりはいいだろう、と思ってくれてたらしい。

多分、これ以上荒んでいくのを見たくなかったんだと思う。

そうなんだ。そんなに荒れてたんだね、私。←他人事(汗)

そんな風に考えてくれてたなんて思ってもみなかった。自分一人カン違いして勝手に怒って、相手の話も聞かず誤解して髪まで切っちゃったじゃん。ホントはここで「あの時、あんなこといってごめんね」って言えたらよかったんだけど、そんなことは絶対言えないのがへそ曲りで天邪鬼の素直じゃない私。


ごめんねって、あの時言えてたらよかったな。

一回も私、ごめんねって言ったことなかったな。


ごめんねは素直に言えたほうがいいよね。

後で絶対後悔するからね。


私の原宿に対する思いも彼に話して、理解してもらった。でも、家庭の事情ばっかりはどうする事もできないよ。そしたら最後に彼は言った。


「家が複雑だろーがなんだろーが、お前は俺が学校卒業したら○○モータース(彼の実家)に来るんだからいーんだよっ!」


私は・・・ただ頷いた。


17歳の夏。



「その前に髪伸ばして、またポニーテイルしろや!」


「・・・カロヤン、買ってやろーか??」


・・・カロヤンかよ!?

カロヤンは発毛促進剤です(涙)



やはりコイツはこーゆーオトコだったのだ。

一瞬でもホロリとなった自分がアホだった。


でも、私は再びポニーテイルを目指すことになるのだった。

(・・・結局カロヤンは買ってもらってたりする。)


が、しかし。


彼は私のポニーテイルを、もう2度と見ることはなかった。


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