第6話 夏の夜空と17歳

肩より長かった髪をバッサリ切った。

でも、髪を切った事に不思議と後悔はなかった。

ポニーテイルができないのはちょっと残念だったけど、金色に近いくらいに染めてて相当痛んでたし

いい機会だと思って、かえってさっぱりした気分だった。


髪を切ってしばらくは彼に会わない日が続いてた。

噂には聞いてたらしく、電話がかかってきた。

当然その頃はケイタイなんてないから家の電話に。


居留守を使う卑怯な私。


ついでに夜の電話は「寝てます」の一言で切ってしまう無粋なとーちゃん・・・。


ちなみにこのとーちゃんのせいでいくつの恋が泡と消えたか・・・。


私は言い争いをしたくなかったし、自分の気持ちを

上手に説明できなかったから話したくなかった。

そこらへんですれ違っても、ろくに顔もみないで

声もかけなかったから周囲は変に思ってただろう。


本当の所、もう自分のオマケに「原宿」がくっついてくるのはちょっと勘弁してほしいというのもあった。

でも、やっぱり彼のことは好きだった。複雑なオトメ心。本当に天邪鬼だ。

ショートカットになった私はラバーソウル履いたりしてネオロカチックなスタイルをしてみたり、リーゼントしたり。

それまでの50’sスタイルも好きだったけど、これはこれで結構遊べて楽しめた。

ショートにしてからも何度か原宿には行ったけど

ポニーテイルじゃないとイマイチ気合が入んない。

だから、輪に入らずに踊らずに帰ってきてた。

ツイスト踊るなら、やっぱりポニーテイルにサーキュラーの50’Sスタイルがいい。 それは今でも変わらない。


原宿のあの流行は、ひとつの時代を創りあげた。


そしてそれは、今もなお原宿で続いているし

それはそれで素晴らしいことだと思ってる。

何より、私は今でも50’Sスタイルが大好き。

でも、私が私である以前に「原宿ローラー」

で括られるのはちょっと違ってた気がする。

たしかにメディアへの露出度も高かった。

でも、それはあくまで流行としての1部としてであって私の全てじゃない。

なにもかも原宿に括ってほしくなかった。

好きな男の子には特に。


今でも当時から付き合いの続いてる仲間がいるけどやっぱり原宿時代は「お祭り」だったかな、とよく話す。

もちろん、皆、ロックンロールは今でも大好きだ。


その頃、彼は彼で他の女の子バイクに乗っけて走ってるし私は私で、先輩の車で毎晩流し歩いてディスコ行って、すれ違っても知らん顔。本当は寂しかったけど絶対言えない。天邪鬼全開。

そして素直じゃないってとっても損をするんだって事を後で痛いほど知ることになります。


8月の、確か終わり頃だったかな。ちょうど今頃?


例の先輩に誘われて、海までドライブに行く事になった。いつものメンバー(先輩と彼女、同級生1ともう1台にカップル)

だと思ってたら後部座席に彼がいた。


なんか微妙な感じだけど、時刻はPM9:00

白いセリカLBとローレルSGXは阿字ヶ浦に向かって2時間超のドライブ。

(もちろん窓から脱出大作戦決行ですw)


とりあえず私は彼の乗っていないローレルに乗り込みソレまでのBGMのCAROLをむりやりCOOLSに替えて貰う。

するとなんと、セリカが大音量でCAROLを流しだす!!!

頭にきた私、テープを途中で「中森明菜」に変える。


当時のヤンキーお約束の明菜ちゃんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る