第5話

「邪魔すんじゃねぇ」

銀色の髪を靡かせた青年は到来した黒き獣の脚を思いっきり振り上げて顔面を切り抜いた。黒き獣は蹴りの衝撃に耐えきれず首を折り曲げ倒れ込み苦しく息を吐いてた。

「チッ、テメェのせいで同胞を殺しちまったじゃねぇーか。どうしてくれる」

私は風邪の噂で聞いた事がある。魔獣園の中でも生活できる種族な事を。本来なら瘴気に侵され気を狂わせてしまう。

「なんで、魔族がここに………」

私はその残虐性を聞かされていたので心が恐怖に包み込まれ、体が震え寒気を覚えた。

「うっせ、お前には関係ねぇだろ」

そして銀色の髪をした青年は手を差し出し、初めて会った時の言葉を繰り返した。

「ほら、20ベルで勘弁してやるから」

私は震える喉から声を搾り出して答えた。

「持っていません……」

銀色の髪をした青年は数秒固まったまま、砂が混じった風に吹かれ驚きの声を上げた。

「はあぁぁぁ、嘘つくんじゃねーぞ、たったの20ベルだぞ、それを持ち歩かないで逃げ出す馬鹿がどこにいる」

「必死だったので……」

銀色の髪をした青年は一度舌打ちし、背を向け付いて来いと言った。

私は恐怖で思考が回らず何も考えないでついて行ってしまった。

先程の逃げた壊れた民家を通り過ぎ結界の張られた王国の中まで入ろうとしていた。

私は一度立ち止まって、中に入ることを拒絶した。

銀色の髪を青年は面倒くさそうに私の首の襟持ち上げ、抵抗も許さぬまま引きずって無理矢理中に入れた。

もう私は自分の運命を受け入れようとしたが刹那の瞬間に友の光が見え、友の死の運命を変えるために力を振り絞り最後の抵抗として、自衛のために持っていた。存在を忘れていたナイフを手に取って目を瞑り自らの手で首を刈り切ろうとした。

そしたらいきなりは浮遊感に襲われ、銀色の髪をした青年の顔の前まで持ち上げられた。

恐怖で視界が歪みあまり見えなかったが彼は綺麗な顔立ちをしており、野生の雰囲気も相待って状況が状況なのに不覚にもカッコいいと思ってしまった。もし出会い方が違ったのなら私は彼の事を好み、多分お兄さんって言って甘えたんだろうなぁーと馬鹿な考えが浮かんでは消えた。もちろんそんな子供の愛には気づかず銀色の髪をした青年は私のナイフを見ては子供みたいに目に輝かせて「これでいい」と私のナイフを奪っていった。

私はそれでは死ぬ事が出来ず、運命を受け入れなくてはいけないためみっともない声で返してくださいとお願いした。

銀色の髪をした青年は私の対応にどうすれば良いのか分からずオタオタしてしまい。私を脇に掲げて走り去った。

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幼き聖女 アホ @lnceptor

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