##3 染み込む蝉の声、流れる夏雲、風を拾う

完璧な午後の過ごし方。

見誤る程の忙しない日常を抜けて。

僕は一人、森にいる。


耳にするのは夏の声。

目にするのは緑一条の匂い。

声にするは風の歌。

手にするは青の一線


胸中で謳歌する。


転がったリュックを横目に夏を知る。

開けた大地に、森の息吹が届く。

僕の足元にだって。


白も線を伸ばし、青一面のもと。

薄く伸びる白雲は国旗のようにするする上に上がる。

風は木々の間をすり抜け、通り過ぎていく。


岩に背を預け、一面を青にする。

隣には変わらない誰かの声も。

太陽は昼間を抜けようとしていた。

僕らを囲む緑がざわめき、準透明が走り去る。


僕はまたクジラを探すのだろうか。

僕にとってそれが結ぶべき未来なのか。

迷い衒い、傷つきながら答えを探すしかないのだ。

あたりには、夏の午後の香りが占めていた。

僕はまた目をつむり穏やかなクジラたちの夢を見ていた。



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