memory:『Ⅸ』- すれ違い -
それからというもの、スノウは帝国の情報部として活躍し、
単独での戦闘も中々のものだった。
しかし、相変わらずの引きこもりと興味のある事に帝国や部隊の情報収集をしてしまう癖があり、問題だった。
ただ、本人は本当に興味本位だけであり、悪用された歴も情報がどこかに漏れることもなかったため、
罰則はあったものの、目を瞑っている事もしばしばだった。
そんなある日の夕暮れ時。
上官に次の仕事内容について必要な情報を届けるために、
資料を運んでいる最中、うっかり段差でつまづき、数枚の資料を落としてしまう。
拾い上げていると、たまたまあの英雄と呼ばれたあの人物とすれ違った。
「・・・手伝おう。」
それを見かけた英雄は直ぐにしゃがみ、手伝い始める。
「す、すみません……」
急いでかき集める。
手伝いの相手に驚いたと言うよりは、手伝わせてしまったことに焦りを感じている様で、
かき集めたあとも、すいませんすいませんと謝罪の言葉が何度も出る。
「・・・どうかしたか?」
「………いえ、なんでもないです。
ちょっと、大尉の魔力の波長が、誰かと似ていた気がしたので。
随分前の資料出みたかなんかだと思われますので。
お気になさらず。」
さりげなく魔力を図ろうとするしりたがりの少女は、
多分、調べた大尉の家系の誰かの波長だろうと考えるのをやめた。
そして、資料をしっかりもって上官の所に急ぎ足で向かっていく。
「そうか、次は転ばないように気をつけることだ。」
そう淡々と答え、レイゴルトはその場から離れていった。
その翌年、レイゴルトは消息不明となり、
スノウはその時のことを忘れていた。
(この時まだ彼女は、あの時の違和感に気づくことはなかった。)
「上官、次の情報ですが…」
そして彼女はまた引きこもり続ける。
マナーやルールにウンザリしてきた彼女は自由に不規則に舞いたかった。
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