memory:『Ⅵ』-光にあたりたくない-

「では、よろしくお願いします。じゃあね、良い子にするのよ?」

「………。」

「お返事は?」

「…はい。」

「よろしいっ、ではさようなら。いってらっしゃい。」


翌日、少女スノウは、

先日に来た帝国の兵士に選ばれ、契約を淡々と済まされた後に引き取られることに決まった。


「じゃあ、行こうか。」

「………。」

手を引かれるがままについていく。


街を歩いていると、少女の髪が風に揺れる。

その少し水色かかった透き通る白い髪は、街の人々の目を引きやすいのか視線が少女に向く。


「………。」


あまり外に出ることも、多くの人とすれ違うことも少なかった。

というよりは、引きこもりばかりしていた少女にはその視線は少し刺さるような感覚が胸にチクチクと痛みを感じ、前髪で目が合わないように俯いて歩いていた。


「怖いかい?視線が。記録を見たけど、君はあまり表に出るタイプでは無いようだね。

怖がらなくていい、初めは皆緊張するものだ。

それに、昨日見ただけの人物に急に朝起きたら引き取られるだなんて、怖くないわけがないだろう。」

「…あの時の人だもんね、おにーさん。」

「あぁ、そうだよ。やはり目が合っていたね。

僕はね、平均的な子より少し変わった子を選びたくなる癖があってね。申し訳ないが、選ばせてもらったよ。」

「…わたし、へんなこだもん。そんなおにーさんも変な人だとおもう。」

「あっはっはっ!!まぁそうかもしれないね。

それとも、戻りたいのかい?」


少し止まり、来た道を振り返ってから前を向き、どこか遠くを見る。


「……今は、あんまり。友達も、みんな、だいすきなシスターも、いまのあそこには、いないから。」

「そうか。……君は、自分を必要だと思うかい?」

「……あそこでは、もうひつよーとは、されてないから、そう思わない。」


「……ちょっと失礼。」

兵士は1度止まり、しゃがんでからスノウの頭を撫でてから、少女が付けていたヘアピンを付け直す。


「なら、今から行くところは君が必要になるところになるだろうし、

君自身がそこを必要とするようになるだろう。」


また手を引き、スノウと兵士は歩き出した。








プロメティア帝国、本部。


「ただいま戻りました。今回はこの子を選ばせていただきましたよ。」

「あの資料の子か?またキミは……。」

「実はですね、もう1つ資料がありまして本日頂いたものです。

わたしも1度少し拝見させてもらいましたが…実際に見ると育てがいはあるかと。」


スノウは資料を渡す兵士とその上司であろう人物がそれを受け取る姿を見てから、辺りを見回す。


「……どうです?」

「…まぁ、いいだろう。軍部の養成所でまずはお試しというところだ。

ダメならば別の下の部署に送ろう。」

「ありがとうございます。

では、1度本人からご挨拶を…おっと、こらこら。」


スノウはずっと窓を見つめていたが、挨拶する前に手を離して窓の方に駆け寄り、城壁の方を見つめる。


「躾がなっていないな…」

「すみません…スノウ、戻ってこい。」

「……ねぇ、あれ。」


スノウはずっと見ていた城壁を指さし、


「あのかべ、少しずれてるよ。あと少しするとあっちの支えがたおれて、そのすきまからさらにヒビがはいって、大きな穴があくよ?

そしたら入り放題になっちゃう。

それに、あっちの兵士はみはりがいるから大丈夫にみえるけど、あそこからナナメにはいられたらみえなくて後ろからこうげきされちゃうけど。」


少女が放った言葉は的確な判断で、資料を受け取った上司は少し目を見開き、言われたところをみてまさかと思い確認するが、その通りだった。


「……君に興味が湧いたよ。採用だ。しっかりと学び、その力、是非とも使わせてもらいたい。」

「よかったね、ということで。

ようこそ、プロメティア帝国軍部へ。」

「…………?よろしくおねがい、しま、す。」


本人はなんか変なこと言っただろうか??という顔だったが、とりあえずお辞儀をすることにした。



「まずは、養成所生の制服から、だな。」


少女の服はあまりに簡易だった。

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