memory:『Ⅴ』-運命の歯車-
人間観察をして
夜な夜な屋根の上で噂のお化けになってやって
シスターに怒られて
部屋に戻っては窓を見て
朝になれば好きなものを読んで
誰にも見つからないようにして
シスターと仲良くお茶を飲んで
勉強をして
魔術をコントロールできるようになって
外ではいつの間にか白辰に拐わられてしまう事件が流行りだして
シスター達がもしものことを心配したことにより、
「少しでも身を守れるように」と。
戦術を元孤児院出身の魔術師と騎士に頼み込み、戦術を授業に追加した。
スノウにも個人練習にそれが追加された。
気づくと、4年の月日が経ち、
少女の持っていた手紙にあった誕生日を迎えた後に、少女を担当していたシスターは退職。
スノウは10歳になっていた。
他のシスターは入れ替わるうちにスノウとの関わりがあまりなくなり、
挙げ句の果てに、何処かに行ってくれないかと思う者も出始めた。
孤児院から出た子は多く、また新しく孤児を迎えていく中、
少女を受け取ろうとする里親が見つからない日々が続いていたことと、
引きこもり、人とあまり関わろうとしない様子があまり受けなかったことで選ばれにくかった。
そんな日々が続いたある日。
運命は唐突に回りだす。
プロメティア帝国のお偉い方からスカウトの兵士が、良さそうな人材を育て引き入れるために孤児院に引き抜きにきたのだ。
「皆、元気があってよろしいですなぁ。」
「ええ、皆元気がありすぎて困る事もありますけど。」
「はははっ、良いことではありませんか。」
兵士とシスターが院内を見回り、子供達を観察したり、近くにいた子を紹介してもらったりしていた。
「?…………あの子は??」
「はい?……あぁ、あの子ですか。」
中庭を見て回っている最中、ふと見上げた先に、窓から長い白い髪を垂らしながらこちらを見ている少女が目に入る。
「何故、あんなところに?」
「あの子はちょっと引きこもり癖がありまして…昔はひ弱だったみたいで魔力のコントロールが上手くいかなかったこともあったらしくて。」
「隔離されてるのかい?」
「いや、そう言うわけではないですわ。彼女もあまり関わろうとしてこなくて…何度か皆と一緒にいろいろ誘ったのですが…。
引き取り手も見つからなくて。」
「そうですか…」
また目を向けると、白髪のその少女は見られてることに気づき、数秒兵士を見てから窓から顔を引っ込めてしまった。
「それで、誰をお引き取りで?」
「そうですね_________じゃあ、」
次の言葉にシスターは目を丸くした。
「あの子の資料を、すこし見せてもらっても?」
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