一時の芸術家

クースケ

第1話 春の特等席

うとうとしていた顔を上げた。

16時

いつ頃からだろうか?

帰った時から1時間が経過し

肌寒さを感じた。


窓を覗くと雨が凄い勢いで止めどなく降り注いでいた。「やみそうもないなー、今日はサボるか!

いかんいかん、」誘惑に負けそうになったが

私は身支度を済ませ

扉を開けて外に出た。




私には唯一の習慣があった。

それは•••ダイエッ、ゴホン、

趣味でお散歩を少々


私にとっては地獄、いや、

唯一の羽を伸ばせる大切な時間なのだ。

この時が過ぎれば現実に一気に引き戻される。


バカにされる日々!!絶対に痩せてやる。


どこからか、やる気が満ち溢れた


私が外に出た時、そんなに降ってはいなかったが

激しさをましていく。


何かの突起物に引っかかり

私の体勢は前のめりになり

転びそうになった、

気になって振り返ると

力強く根を張る桜の根に耐えきれず、コンクリートが盛り上がり亀裂が出来ていた。


そこに目を向けると同時に


前を向いてると決して見ることが出来ない

光景が目に映り込んだ。


キレイ、、、、


雨水がたまってできた

天然の磨きぬかれた鏡にピンク色の木々が

映し出されていたのだ。


ザーと、

雨粒が落ち斑点が出来ても直ぐに元に戻り

決して消えることのない

このスクリーンはこの日しか見ることの

出来ない光景だ。

雨のせいで心なしか花びらが

ひらり ひらりと落ちていく。


散りゆく花びらは春の終わり

を告げているかのようで少し悲かった。


でも、この時 いや、この瞬間だけは

私の目は桜で溢れていた。

まるで特等席にでもいるかのように気持ちになった。これだから、散策は辞められない。

新しい発見があるから。









 

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一時の芸術家 クースケ @kusuk

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