第66話 vs太陽神マアトマ2世③ ~太陽争奪リレー~
「決めた」
その場の全員に伝わるよう、フェイは小さく頷いてみせた。
「まず全員の花を一度俺に渡してくれ」
十五本。
その花を
「全員、さっきと同じ要領で蕾を覗いてみてくれ。誰にも見られないように」
『――っ!』
『……これは……』
十四人通りの反応。
ごくりと息を呑むパールに、くすっと微笑むレーシェ。
無言で腕組みするダークスに、「そう来ましたか」と呟くケルリッチ。
チーム『
「太陽の花も、毒の花も、ありかを知ってるのは俺と当人だけに絞りたいんだ。言い換えれば、全員、自分が太陽の花を持ってるように振る舞ってほしい」
『作戦会議は終わりました?』
「ああバッチリだ」
『ではでは!』
『お待たせしました。我が主神マアトマ2世様のご登場です!』
砂を踏む音。
フェイたちが見上げる砂丘に、人型のシルエットが浮かび上がった。
猛禽類の仮面――
隼を思わせる鳥の面をかぶり、太陽を模したと思しき杖を携えている。
『ゲームはまだか?』
「わっ……な、何ですかこれ!? あたしの耳に……?」
パールが自分の耳を両手で塞いだ。
空気を介した声ではない。
フェイたちの脳に叩きこむがごとく、神の声が直接伝わってきた。
「念話か?」
神が、人間との意思疎通で用いる術だ。
多くの神は人語を解さず、あるいは積極的に使おうとはしない。その代理の伝達手段として知られている。
『マアトマ2世様、ただいまルール説明が終わったところです』
『ならば――』
「あ、あの!」
神の言葉に割って入ったのはパールだった。
砂丘に立つ神さまを見上げて。
「あたしどうしても聞きたいことが……神さまなのにマアトマ2世って、もしや1世の神さまもいるんですか?」
『いない』
「紛らわしいですねっ!?」
『この世すべては遊戯である。我が名も含めて』
神が、杖を振り上げた。
その先端についたガラス状の球体内に、フェイたちと同じ花の蕾が封入されている。
……あれが神さまの分の花か。
……十中八九、向こうチーム側の太陽の花で間違いないんだろうな。
太陽の花を奪われたら即座に敗北するこのルール下で、神が、わざわざ太陽の花以外のものを持っているわけがない。
誤魔化す気はない。
奪えるものなら奪ってみせよ。その圧倒的な自信が、花の封入された杖を振り上げる所作から溢れんばかりに滲み出ている。
――上等だ。
ならば。
その仕掛けに真っ向から対決するゲームにしてみせよう。
『遊戯を始める。ヒトよ、全知全能でもって勝負せ…………………?』
マアトマ2世の念話が止まった。
隼の仮面――あるいは仮面も含めて神の肉体の一部が、眼下を凝視した。
『何をしている。その所作は』
「見てのとおりさ」
「ゲームを始めるんでしょう? だから始めただけのことよ」
右手を挙げる。
フェイとレーシェ――
大砂漠に並び立つ二人の宣言が、神と、そしてこの戦いを見守っている何十万人という観客に衝撃を与えた。
「太陽の花を持っているのは、俺だ」
「太陽の花を持っているのは、わたしよ」
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