第54話 vs遊戯の貴公子ダークス⑦ ―Mind Arena―




 第2フェイズ終了時。


 フェイ――  ライフ13点、手札1枚、現在地12(ゴールまで32マス)。

 パール――  ライフ10点、手札1枚、現在地7


 ダークス―― ライフ6点、手札2枚、現在地12

 ケルリッチ――ライフ16点、手札4枚、現在地7



 

 生き延びた。

 わずかでもゴールに近づくこともできた。


 ……だけど俺らの状況は、第1フェイズ以上に悪化した。

 ……特に、何より手持ちのカード総数で逆転されたのが痛すぎる。


 一見すれば。

 ダークスの体力が底を突きかけているように見えるが、フェイたちの手札が2枚なのに比べて、相手は6枚と温存している。


 ……ダークスの体力が少ないのはブラフ。十中八九、回復魔法が手札にある。

 ……実質的な体力は残り10、いや13以上で想定しておかなきゃな。


 ゆえに水面下での差は相当だ。


 相手はまだ二枚、三枚と切り札を残しているだろう。一方こちらは次フェイズでパールの体力が削りきられる可能性がある。


「さすがだフェイ。よくぞ2フェイズ目を耐えきった」


 ダークスが満足げに腕組み。


「賞賛に値する。タネ明かしをすると、手札が配られた時点で俺はこの2フェイズキルをほぼ確信していた。結界魔法『熱情の律動』と『怨嗟の鎖』は、どちらも魔法使いとの相性が抜群だからな」


「それ本当に褒めてるか?」


熟練者エキスパート級のプレイングだ。特にフェイ、先ほどの『天軍の剣』の誘因トリガー発動に気づいたのは見事だ。本当にこのゲームは初めてか?」


「がむしゃらだよ。俺らは最初から一つの勝利ルートしか目指しちゃいない」


「……なるほど」


 ダークスがにやりと口の端を吊り上げた。


「その揺るぎない戦意は見事。だがゴールまで辿りつけると思うなよ。この第3フェイズが、俺たちの勝敗を分かつ分岐点だ!」



『第3フェイズへ移行。賽子ダイスカードを選択してください』



「パール!」


 隣の相方へと振り向き、フェイは叫んだ。


「俺たちは、俺たちの勝利ルートを目指す! 最初から最後までな!」

「もちろんです!」


 賽子ダイスカード、開示オープン


 四人が出した数字に、観客の視線が注がれる。



 ――フェイ「6」、パール「6」、ケルリッチ「5」。


 ――そしてダークス「4」。



 会場がどよめいた。

 ダークスが仕掛けたのは一目瞭然。


 ここで初めて6以外を出したから? もちろんそれもあるが……


「な、なんでっ!?」


 パールが、ダークスの賽子ダイスカードを何度も何度も見返す仕草。


 我が目を疑ったのだろう。それはフェイも同じだ。いや、この男ならあるいは仕掛けてくるかもという予兆はあった。


 ……ここで披露してくれるってわけか。

 ……本気でこのフェイズで決着させる気だな!


「どういうことです!」


 大粒の汗を頬に浮かべるパール。

 そのまなざしの先には、威風堂々と腕組みするダークスの姿が。




!……自分から罠を踏んでダメージを受ける気ですか!?」








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