2061 ~ハロー地球~@想い出のハロー

「ハロー、ハロー、こちら地球人」


「ハロー…ハロー…こちら…ハレー彗星人……」


 病院のベッドに横たわる衰弱した老夫と、その老夫によく似た表情を浮かべる老夫よりも少し

 二人はまるで子供が『ごっこ遊び』をしている様に互いに呼び掛け合っていた。

 はたから見れば共に『老人』と言って相違ない二人のそのやり取りは、滑稽こっけいながらもに満ちていた。


「ハロー、ハロー、僕はあなたに感謝しています」


「ハロー……ハロー……俺も……感謝……して……る……」


 途絶えがちになる老夫の声と呼吸、その老夫の手を握る若い老夫は最期の瞬間までその手を離さずに呼び掛け続けた。



 それは二人の想い出の言葉だった。


 一九八六年から七十五年後の二〇六一年…

 宇宙を旅したハレー彗星が再び地球に接近したその年、一人の老夫が星となった。

 に寄り添っていたのは若い老夫、七十五年前に養子となった一人息子だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る